【2025年上半期】中小企業倒産が12年ぶり5000件超!“人手不足・物価高・後継者難”の三重苦にどう立ち向かうか?

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1. はじめに:景気好調の裏で“静かに消える”中小企業

2025年の日本経済は一見すると明るいニュースが多い。
日経平均株価は史上最高値を更新し、インバウンド需要も前年比15%増。
大阪・関西万博を控え、観光業や建設業界が活況を呈している。

しかし、その裏で中小企業の倒産は8四半期連続で増加
2025年度上半期(4〜9月)の倒産件数は 5,172件(前年比+1.5%) に達し、
年度上半期としては 12年ぶりに5000件を超える水準 となった。

つまり、「景気が良くても倒産が増えている」という、
構造的な異常事態が今起きているのです。


2. 倒産の特徴:小型化・多発化・中小企業化

今回の倒産統計で最も特徴的なのは、倒産の「質」が変化している点です。

指標 結果 備考
倒産件数 5,172件(+1.5%) 4年連続増加
負債総額 6,927億円(▲49.6%) 小規模倒産中心
負債1億円未満の構成比 76.4%(過去30年で最高) 零細企業が主役
破産の構成比 90.1% 実質的な廃業型倒産

倒産はもはや「経営破綻」ではなく、
日常的に起こる“経営リタイア”に変わりつつあります。

事業の継続に疲弊し、
「黒字でも、もう続けられない」
という“あきらめ倒産”が急増しています。


3. 主な倒産要因:“人手不足・物価高・後継者難”の三重苦

(1) 人手不足倒産が過去最多

2025年9月の「人手不足」関連倒産は月間46件と過去最多を更新。
前年同月比で倍増しています。

  • 従業員退職:19件(3.8倍増)

  • 求人難・採用困難:13件

  • 人件費高騰:14件

特に 従業員10人未満の企業が全体の9割近く を占め、
“1人辞めたら回らない”という構造的リスクが浮き彫りになっています。

(2) 物価高倒産:コスト高に耐え切れず

物価上昇・光熱費高騰・物流費上昇が止まらず、
「価格転嫁が追いつかない企業」が増加。

9月単月の物価高倒産は76件(前年同月+73%)。
製造・小売・建設など、原価上昇の影響を受けやすい業種に集中しています。

(3) 後継者難・経営者高齢化

さらに深刻なのが、経営者の「高齢化倒産」です。
2025年1〜9月で 経営者の病気・死亡による倒産は249件
これは前年を上回るペースで、全体の3.3%を占めています。

つまり、「経営体力」よりも「経営者の寿命」が
倒産のトリガーとなっているケースが急増しているのです。


4. 休廃業・解散は倒産の“7倍ペース”

倒産よりも深刻なのが、休廃業・解散件数の急増です。

  • 2025年1〜9月:約5.2万件(+5.4%)

  • このままのペースなら、年間7万件超で過去最多更新

  • 倒産(7,619件)の約7倍にのぼる勢い

特に地方では「事業承継を諦める」ケースが目立ち、
“静かな廃業”が地域経済の根を蝕んでいます。


5. 業種別倒産動向:サービス・建設・小売で急増

業種 件数(前年同期比) 背景
サービス業 1,762件(+4.0%) 労働集約型・人件費上昇
建設業 1,036件(+7.4%) 資材高・人手不足
小売業 594件(+7.6%) 消費鈍化・価格転嫁難
不動産業 169件(+18.1%) 金利上昇の影響
農林漁業 64件(+10.3%) 燃料高・天候リスク

特徴:

  • “人の手が要る業界”ほど倒産率が高い

  • 一方、製造・運輸・ITなどは微減に留まるが、人件費圧迫は共通課題


6. 地域別分析:地方ほど厳しい

地区 倒産件数増減 特徴
北陸 +49.3% 資材高直撃・中小建設業に打撃
近畿 +3.6% 物価高・小売倒産が増加
中部 +3.9% 自動車部品関連が打撃
九州 +1.7% 観光回復も人手不足続く
関東・中国 減少 大企業の受注支えで持ち直し

地方の中小企業は“仕事はあるが人がいない”という二律背反に苦しみ、
体力勝負から脱却できずに撤退を余儀なくされています。


7. 特徴的な事例:「粉飾倒産」と“見せかけの成長”

2025年上半期に話題を呼んだのが、
上場AI企業「オルツ」の粉飾倒産事件です。

  • 売上の9割が“循環取引”による架空計上

  • 民事再生法申請(負債24億円)

  • AI・DXといった“新時代産業”でも不正は起こる

ある金融関係者はこう語ります。

「コロナ期に“安定していた会社”こそ危険だった。」

つまり、数字の裏にある“違和感”を感じ取る感性が、
今の経営者にはより重要になっています。


8. 自動車・建設業界が今後の焦点

🚗 自動車業界

  • 対米輸出の関税が15%に上昇。

  • 大手メーカーが価格引き下げや輸出縮小へ。

  • 中小部品メーカーに受注減・単価下落の波が及ぶ。

🏗 建設業界

  • 公共工事の減少・資材高騰・職人不足。

  • 受注があっても人が集まらない。

  • 賃上げ圧力で利益を圧迫。

今後最も倒産増が予想される2大業界です。


9. 中小企業が今学ぶべき5つの教訓

① 数字より“現場感覚”を磨く

粉飾や見せかけの成長に騙されず、現場の手触り感を重視。
「数字が良くても人が疲弊していないか」を確認すること。

② 人手不足を「採用」でなく「仕組み」で解決

  • 業務の標準化・マニュアル化

  • DX導入(勤怠・請求・顧客管理)

  • 外注・副業人材・クラウドワーカーの活用

③ 承継・引退を“経営計画”に組み込む

後継者問題は「誰に任せるか」よりも「いつ引き継ぐか」。
M&A・事業譲渡も早期に検討を。

④ 資金繰りは“毎月見える化”

銀行任せではなく、キャッシュフロー表を自社で管理。
金利上昇下では“資金繰り力”が生死を分ける。

⑤ 外部の知恵を活用する

経営コンサル、社労士、会計士などを「守り」ではなく「攻め」の参謀に。
特に補助金・助成金を戦略的に使う企業は生存率が高い。


10. 成功している中小企業の共通点(実例)

事例① 建設業A社(大阪)

  • DX導入で現場管理システムを活用。

  • 書類作業時間を60%削減。

  • 人手不足の影響を最小化。

事例② 小売業B社(福岡)

  • 高齢経営者がM&Aで後継者を確保。

  • 廃業ではなく「譲渡による再生」を選択。

事例③ 飲食業C社(東京)

  • アルバイト中心から正社員化+教育制度構築。

  • 離職率を30%→8%に改善。

✅ 共通点は「人に頼らず、仕組みで回す」こと。
組織設計・評価制度・デジタル化を並行して進めている。


11. 今後の見通し:通年1万件超えも現実味

帝国データバンクの分析では、
2025年度下半期も5000件超の倒産が濃厚

  • 通年では 1万件超え の可能性が高い。

  • 「ゼロゼロ融資返済」「人手不足」「賃上げ」「金利上昇」の四重苦。

これらに対し、経営者ができる唯一の防御策は、
「設計された経営」への転換です。


12. まとめ:倒産は“他人事”ではなく“明日の教科書”

中小企業の倒産増加は単なる経済ニュースではありません。
それは「明日は我が身」への警鐘です。

事業を続けるだけで価値がある時代は終わり、
“どう設計して生き残るか”が問われる時代へ。

中小企業が取るべきは、

  • 現場のDX化

  • 人材の複線化

  • 承継と出口戦略の早期設計

  • 補助金・助成金を活用したリスク緩和

これらを同時に進める「戦略経営」です。


✅ この記事の結論

観点 現状 今後の対策
倒産件数 12年ぶり5000件超 通年1万件超の恐れ
主因 人手不足・物価高・後継者難 構造的課題への対応
特徴 零細・高齢経営者・あきらめ型 早期撤退・M&A・承継
対策 DX・仕組み化・外部連携 “人に頼らない経営”へ転換

💬 結論:

倒産の波は「経済の悪化」ではなく「構造の変化」から起きている。
この変化に適応した企業だけが、次の時代の“残る企業”となる。

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