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はじめに
令和6年度補正予算で新設された「小規模事業者持続化補助金<創業型>」。創業後3年以内の小規模事業者にとって、販路開拓や設備投資の大きな追い風となる制度です。
しかし、補助金は「採択された=すぐ入金される」というものではありません。採択後には、交付決定 → 補助事業の実施 → 実績報告 → 補助金の入金 → 事業化状況報告 という一連の流れを正しく進める必要があります。
本記事では、創業型に特有の注意点も踏まえつつ、採択後の具体的な手続きや必要書類を網羅的に解説します。
1. 採択から交付決定までの流れ
1-1. 採択通知を受け取る
審査に通過すると「採択通知書」が届きます。しかしこれはあくまで「補助金の交付候補者」として選ばれた段階。実際に補助金を受け取るには、交付決定の手続きを経る必要があります。
1-2. 見積書等の提出
交付決定前には、必ず 経費の妥当性を証明する見積書 を提出します。
ルールは以下の通り:
- 100万円(税込)を超える発注 → 2者以上の相見積が必須
- 中古品の購入 → 金額にかかわらず2者以上の見積必須
- 店頭購入やネット購入も証明資料(価格が分かる写真やスクリーンショット等)が必要
- 提出する見積金額は申請時の経費明細(様式3)と一致している必要あり。異なる場合は修正提出。
1-3. 交付決定通知の受領
見積書が確認され、申請内容が適正と判断されると「交付決定通知書」が届きます。この通知に記載された 交付決定日以降の支出のみが補助対象 です。交付決定前の支出は一切認められないため注意が必要です。
2. 補助事業の実施と経費支出のルール
交付決定を受けてから、補助事業を開始します。ここでの支出管理が補助金獲得の成否を分けます。
2-1. 経費支出の基本ルール
- 支払いは 銀行振込が原則(10万円超は現金不可)
- クレジットカード払いの場合、口座引落日が補助事業期間内であること
- 領収書・請求書・振込明細の3点セットで証憑を残す
- 自社や親族企業との取引は原則不可
- オークションや個人間取引は対象外
2-2. 補助対象経費の範囲
創業型の補助対象経費は以下:
- 機械装置等費
- 広報費
- ウェブサイト関連費
- 展示会等出展費
- 旅費
- 新商品開発費
- 借料
- 委託・外注費
3. 実績報告書の作成と提出
3-1. 実績報告とは?
補助事業終了後、実際に行った内容と支出の証拠をまとめるのが「実績報告書」です。これが認められなければ補助金は支払われません。
3-2. 実績報告に必要な書類
- 実績報告書(様式第8)
- 経費明細表(様式3修正版)
- 領収書・請求書・振込明細の写し
- 納品書や仕様書(設備導入の場合)
- 施工写真や看板写真など、成果を示す証拠写真
3-3. よくある不備
- 支払日が補助事業期間外
- 請求書と領収書の金額不一致
- 見積時と異なる内容での発注
- 成果を示す写真の不足
4. 補助金の請求と入金
4-1. 確定検査
実績報告が受理されると、補助金事務局が経費の適正性をチェックします。必要に応じて修正指示が入ることもあります。
4-2. 補助金請求
確定検査後、補助額が確定すると「補助金交付請求書」を提出します。その後、指定口座に補助金が入金されます。
※ここまでで初めて補助金を受け取れるため、実際のキャッシュフローは 立替払い → 後払い である点に注意が必要です。
5. 事業化状況報告(フォローアップ)
5-1. 提出義務
補助事業終了から1年後に「事業化状況報告書(様式第14)」を提出する義務があります。ここでは、補助事業の成果や売上増加の状況を報告します。
5-2. 報告内容の例
- 補助事業の効果(売上増、顧客増など)
- 導入設備や広告の効果測定
- 賃金引上げ状況(特例活用の場合)
5-3. 未提出のリスク
この報告を怠ると、次回以降の補助金申請ができなくなるだけでなく、最悪の場合は返還命令を受けるリスクがあります。
6. 創業型ならではの注意点
- 対象者要件:創業後3年以内であることが必須
- 特定創業支援等事業の証明書:一部特例加点のため必要
- マル経融資との連携:補助金だけでなく、無担保・無保証の資金調達が可能
創業間もない事業者にとっては資金繰りが厳しいため、補助金の「後払い方式」を前提に資金計画を立てることが重要です。
まとめ
持続化補助金<創業型>は、採択後の流れを理解していないと「補助金がもらえない」という事態になりかねません。
- 採択後は見積書を揃え、交付決定通知を受けてから事業開始
- 経費は証憑を残し、実績報告で適正性を証明
- 補助金は後払い方式で入金
- 1年後の事業化状況報告も忘れずに
これらをしっかり押さえておけば、創業間もない事業者でも安心して補助金を活用できます。