倒産ゼロ・過去最少へ──書店とスキー場が見せた「復活のストーリー」

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2025年、意外な2つの業界が“復活の兆し”を見せています。
その業界とは、「書店」と「スキー場」。一時は衰退業種の代表格とも言われたこの2業種が、今、倒産件数の劇的な減少という形で注目を集めています。


書店業界:倒産最少ペースで推移

2025年1~5月の書店倒産件数は、わずか1件。前年同期(11件)と比べて大幅減となり、このまま行けば年間倒産件数が過去最少となる見込みです。

一時は「活字離れ」「電子書籍の台頭」「Amazonショック」の三重苦で、業界全体が風前の灯とも言われていました。実際、2024年度には書店の34.4%が赤字。減益も含めた「業績悪化」率は58.3%に上っていました。

それでもなぜ今、持ち直しの兆しが見え始めたのでしょうか。


書店の復活戦略:「脱・書籍」への業態転換

鍵を握ったのは、“書店は本を売るだけの場所ではない”という発想の転換です。
今、書店では以下のような戦略が注目されています。

  • 文具・雑貨・知育玩具など非書籍商品の拡充

  • カフェやソファスペースを設けた「滞在型」店舗

  • 雑貨店とのコラボ、併設による複合型出店

来店者は書籍だけでなく、心地よい時間や空間を求めて足を運ぶようになりました。

さらに、書店が持つ専門的な知識と在庫管理のノウハウを活かし、学習塾や学校との連携、専門書サービスの提供にも乗り出しています。こうした“知的コンシェルジュ”としての価値提案が、既存の枠を超えた収益源となっています。

2024年度には、「増益」となった書店の割合が39.9%を記録し、過去10年で2番目の高さとなりました。


政府の支援も後押しに

こうした民間の努力を受けて、2024年には経産省が「書店振興プロジェクトチーム」を発足。さらに政府の骨太方針にも、出版業・書籍小売業への支援が明記されるなど、書店存続への社会的評価が高まりを見せています。


スキー場業界:2024年度、倒産ゼロへ

一方、もう一つのサプライズが「スキー場業界」です。2023年度に多数の倒産が発生したこの業界ですが、2024年度はなんと7年ぶりに倒産ゼロを記録。

倒産ゼロを実現した背景には、次の3つの要因があります。

  1. 好天と降雪に恵まれた

    • 今シーズンの平均オープン期間は101.5日(前年比+0.7日)と延び、営業機会が増加。

  2. インバウンド需要の回復

    • 特に香港・台湾・東南アジアからの訪日スキー客が急増し、集客を後押し。

  3. 地域連携による集客施策

    • 共通シーズン券やファミリー向けキャンペーンで、若年層の取り込みに成功。

コロナ明けで初の“フル営業”を可能にした好条件が重なったことで、まさに「奇跡の復調」を遂げました。


スキー場の課題と次なる挑戦

ただし、スキー場業界の構造課題は未解決です。

  • 若者のスキー離れ

  • 設備の老朽化と更新費用

  • 人手不足・後継者不在

とりわけ地方の中小スキー場では、依然として閉鎖リスクがくすぶっています。

そこで注目されているのが、通年型リゾートへの転換です。
人工雪マットによる“夏スキー”や、MTB・キャンプ・ドローン体験などと組み合わせた複合リゾート化が進められており、「冬だけの施設」から「四季型観光施設」への変革が始まっています。


まとめ:この2業界が示す“生き残りのヒント”

✅ 「書店」も「スキー場」も、本業依存のビジネスモデルからの脱却に動いた
✅ 顧客の体験志向・多目的ニーズを捉えたことが勝因
✅ 政策支援が加わったとはいえ、現場の創意工夫が決定打だった

この2業界の事例は、どんな業種であっても「再定義の余地」があることを教えてくれます。


中小企業経営者へのメッセージ

時代が変わっても、人は「心地よさ」や「居場所」「体験価値」を求めます。
業種や規模にかかわらず、“何を売るか”ではなく“どう使われるか”という視点を持つことで、新たなチャンスが生まれます。

ピンチの中にこそ、再構築のヒントは眠っています。
今こそ、自社の「存在意義」を見つめ直すタイミングなのかもしれません。

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