~「上げたくても上げられない」から脱却する実践策~
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はじめに
「人手が足りない。でも給料を上げる余裕がない…」
「優秀な人材を採用したいが、大手並みの賃金は出せない…」
このような悩みを抱える中小企業の経営者は非常に多いのではないでしょうか。
国や自治体も賃上げ支援を強化していますが、現実には「そもそも原資がない」「人件費が利益を圧迫する」といった声も根強くあります。
しかし、賃金を上げることは“コスト”ではなく“投資”です。
長期的に見れば、社員の定着率や生産性の向上、採用力の強化につながり、企業全体の体力を上げる鍵にもなります。
本記事では、「給料を上げたいけれど難しい」と感じている中小企業の経営者に向けて、“できることから始める賃上げ戦略”を5つの観点で解説します。
1. 「総額」ではなく「構造」で考える
まず最初に確認したいのは、「賃上げ=全体の人件費が膨らむ」と思い込んでいないかということです。
必ずしも全体を一律に上げる必要はありません。賃金構造の見直しによって、限られた原資の中でも効果的な賃上げは可能です。
▷ 成果や貢献度に応じて分配する
・基本給の一部を評価連動型に切り替える
・賞与に“貢献度ポイント”を導入する
・若手や子育て世代など生活負担の高い層に重点配分
「頑張れば報われる」という構造ができると、社員のモチベーションも上がりやすくなります。
2. 「付加価値の向上」が原資を生む
給与を上げるには、当然ながら会社の収益力を高める必要があります。そのためには、売上ではなく1人あたりの“付加価値”をどう上げるかに着目しましょう。
▷ 売上を増やさずとも利益を出す仕組みを
・業務の見える化と無駄の削減(=コストダウン)
・高単価・高利益の商品やサービスへの転換
・業務自動化やITツール導入による省力化
例えば、「1日8時間働いていた作業を6時間で終わらせ、空いた2時間で別の利益創出活動に回す」ことで、実質的な付加価値は上がります。
3. 補助金・助成金を“人件費投資”に活用する
多くの中小企業が見落としがちなのが、「補助金・助成金で浮いたお金を人件費に回す」という視点です。
▷ 賃上げに活用できる公的支援策
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業務改善助成金(生産性向上+賃金引き上げで最大600万円)
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キャリアアップ助成金(非正規→正社員化+賃上げ)
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持続化補助金やものづくり補助金(設備導入で人件費圧迫を緩和)
これらを上手く活用すれば、「人件費に手をつけなくても利益を確保できる=賃上げに踏み出せる」状態をつくることが可能です。
4. “見せ方”を変えるだけでも社員満足度は上がる
賃金の額だけでなく、見せ方・伝え方を変えるだけで「評価されている」と感じる社員は多いです。
▷ 非金銭的報酬(トータルリワード)の発想を
・給与明細に福利厚生の金額換算(例:交通費、研修、弁当補助)
・「昇給ストーリー」を上司が伝える面談機会の設定
・表彰制度・ピアボーナスなど評価の多様化
また、時短勤務やリモートワークといった時間的・精神的なゆとりの提供も、実質的な“賃上げ”と捉える社員もいます。
5. 「この会社で働き続けたい」と思われる経営を
結局のところ、金額以上に社員が感じているのは、「自分を大事にしてくれているか?」です。
それが伝わる会社では、多少の賃金差があっても人は辞めません。
▷ 感謝と対話が最大の報酬になる
・社長からの感謝メッセージを手紙や動画で伝える
・定期的な1on1面談で「未来のキャリア」も話す
・職場環境改善への取り組みを社員と一緒に進める
働きがいとつながりがある職場は、賃金以外の面でも人材が定着しやすく、結果的に生産性が上がる好循環が生まれます。
まとめ:「賃金を上げる=経営力を上げる」
賃金は、単なる「コスト」ではなく、会社の価値を映す鏡です。
そして、賃上げは、経営者にとって「社員に対する意思表示」でもあります。
もちろん、いきなりすべてを実現するのは難しいかもしれません。
しかし、できることから一歩ずつ始めることが、結果として“強い組織”につながります。
実践ポイントまとめ
施策カテゴリ | 実践内容 |
---|---|
賃金構造の見直し | 一律ではなく貢献・役割で差別化する |
付加価値向上 | 単価アップ、省力化、業務改善 |
補助金・助成金活用 | 賃上げ原資を間接的に確保 |
非金銭的報酬の工夫 | 評価の見せ方、福利厚生の可視化 |
組織文化の醸成 | 感謝・対話・働きがいを届ける |
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