借地権、貸宅地、貸家、貸家建付地の計算方法と事業承継における重要ポイント

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不動産の評価額は、事業承継やM&Aにおいて財産の引き継ぎ、資産価値の適正評価、税負担の予測などで重要な役割を果たします。不動産評価額の算出方法は複数ありますが、中でも「借地権」「貸宅地」「貸家」「貸家建付地」の4つは、実際の活用方法や用途、権利関係によって評価が異なるため、特に理解が必要です。本記事では、それぞれの評価額の計算方法と、それがどのように事業承継やM&Aにおける意思決定に影響を与えるかを詳しく解説します。


借地権とは何か?

借地権とは、他者が所有する土地を借りて使用する権利のことで、地代を支払うことにより土地の利用が認められるものです。建物の所有を目的として借りる場合が多く、借地権者が所有する建物の固定資産税の評価に影響します。借地権を有することで土地に対して持つ権利価値が生じ、不動産評価額の中でも重要な要素となります。

借地権の評価方法

借地権の評価額は以下の計算式で算出されます:

借地権評価額 = 自用地評価額 × 借地権割合
  • 自用地評価額:土地を他者の制約なく使用した場合の評価額
  • 借地権割合:地域ごとに設定された割合で、評価基準に基づき決定される

借地権割合は国税庁が定める路線価によって地域ごとに異なるため、場所によって評価額も大きく変わります。


貸宅地の評価とは?

貸宅地とは、借地人に土地を貸し出している場合の所有者の土地です。借地権が存在するため、通常の「自用地評価額」よりも評価が低くなります。

貸宅地の評価方法

貸宅地の評価額は次の式で計算されます:

貸宅地評価額 = 自用地評価額 × (1 - 借地権割合)

この計算式により、貸宅地の評価額は借地権割合によって減額され、土地所有者の評価額が決定されます。


貸家の評価方法

貸家は所有者が他者に賃貸している建物を指し、家賃収入が発生するため、その収益性が評価に影響します。所有者が直接使用する建物ではないため、自用地と比較して評価が下がります。

貸家の評価方法

貸家の評価額は次の計算式を用いて求められます:

貸家評価額 = 固定資産税評価額 × (1 - 借家権割合 × 賃貸割合)
  • 固定資産税評価額:市区町村が固定資産税のために算定する評価額
  • 借家権割合:通常30%とされる割合で、借家人の占有権を評価に反映
  • 賃貸割合:実際に賃貸されている割合

借家権割合は貸家評価額に一定の減額をもたらし、借家権者の居住が確保される形で所有者の評価が減少します。


貸家建付地の評価方法

貸家建付地は、借地権者が建物を所有しており、さらに建物が他者に貸し出されている土地を指します。したがって、借地権割合と借家権割合の双方が評価額に影響します。

貸家建付地の評価方法

貸家建付地の評価額は以下の計算式を使用します:

貸家建付地評価額 = 自用地評価額 × (1 - 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)

この計算式により、貸家建付地の評価は通常の自用地よりも低くなります。借家権と借地権が複合的に作用するため、評価がさらに減少します。たとえば、借地権割合が60%、借家権割合が30%、賃貸割合が100%の場合、貸家建付地評価額は大きく下がり、所有者が負担する相続税額も変わってきます。


事業承継やM&Aにおける不動産評価の意義

不動産の評価額は、事業承継やM&Aの際に、会社の純資産価値や譲渡価格の決定に重要な影響を与えます。正確な評価を行うことで、後継者や買収先に対して適切な価値提示が可能となり、相続税や譲渡税の最適化も図れます。

  • 相続税の節税:適切な不動産評価により、相続税の軽減が可能です。特に、貸家建付地や貸宅地は評価額が低くなるため、相続時に課税評価額が低減します。
  • 経営の安定化:事業承継時に資産の評価が不確かであると、後継者や会社全体の負担が増加します。評価額を明確にしておくことで、事業を安定的に承継できます。
  • M&Aの効率化:M&Aを行う際、不動産の評価額が事業価値全体に反映されます。正確な評価が買収価格の交渉材料となり、取引の透明性が高まります。

まとめ

「借地権」「貸宅地」「貸家」「貸家建付地」の評価方法は、それぞれ異なりますが、どれも不動産の持つ経済的価値を評価するための重要な指標です。事業承継やM&Aにおいては、これらの評価方法を活用し、不動産の正確な価値を把握することが、相続税や譲渡税の最適化、資産管理の合理化、経営の安定化に貢献します。中小企業の経営者や事業承継を検討している方は、専門のコンサルタントと連携し、適切な不動産評価を行うことで、将来の経営に安心をもたらすことができます。

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