事業承継・M&Aにおける『時価純資産額』の算定方法とその重要性

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はじめに
事業承継やM&Aにおいて、企業の価値を正確に評価するためには、さまざまな方法が用いられます。その中でも、時価純資産額は、企業の資産価値を把握するための重要な基準の一つです。時価純資産額とは、企業が保有する資産から負債を差し引いた金額であり、企業の財務状況を正確に反映します。本記事では、時価純資産額の算定方法について解説し、その重要性と活用方法について詳しく説明します。

時価純資産額とは?

時価純資産額とは、企業が保有するすべての資産を「時価」で評価し、それに対応する負債を差し引いた純粋な資産価値のことです。具体的には、土地や建物、設備などの資産を時価で評価し、それに企業が抱える借入金や未払金などの負債を差し引いて算定されます。この算定は、企業が持つ資産が実際にどれだけの価値を持っているかを示すため、事業承継やM&Aの場面で特に重視されます。

時価純資産額の算定方法

時価純資産額の算定方法は、企業が保有する各資産の時価を正確に把握し、それに対応する負債を差し引くというプロセスです。ここでは、代表的な資産評価の方法と、その計算における注意点を説明します。

1. 不動産の評価

企業が保有する土地や建物などの不動産は、事業承継やM&Aにおいて重要な資産です。不動産の時価は、固定資産税評価額や路線価、あるいは時価に基づいて評価されます。不動産市場の状況に応じて、その価値は変動しますが、適切な不動産評価が時価純資産額の算定に大きく影響します。

2. 機械設備の評価

企業が使用している機械設備や工場設備も、時価で評価されます。これらの資産は通常、減価償却によって帳簿価額が下がりますが、現時点での市場価値やリプレースメントコスト(同等の設備を新たに取得する際の費用)を考慮して時価を算出します。

3. 運転資本(現金・売掛金・在庫など)の評価

企業の運転資本も時価純資産額に影響を与えます。現金はそのまま時価として計上されますが、売掛金や在庫はその回収可能性や市場価値に基づいて評価されます。たとえば、売掛金においては、回収リスクを考慮し、全額が回収できない可能性がある場合は減額されます。

4. 負債の評価

負債は企業の借入金や未払金、その他の支払義務を指します。負債の評価は、これらの金額を帳簿からそのまま差し引く形で行われます。負債が多ければ、その分、時価純資産額は減少します。

時価純資産額の重要性

時価純資産額の算定は、事業承継やM&Aにおける企業価値の評価に直結します。特に、企業の財務状況を透明化するためには、この数値が重要な役割を果たします。買収側の企業や投資家にとっては、企業の資産が実際にどれだけの価値を持っているかを知ることが投資判断の一つの基準となります。また、売却側にとっては、正確な資産評価が公正な取引価格の設定につながるため、時価純資産額の算定は欠かせません。

時価純資産額の算定におけるリスク

時価純資産額の算定には、いくつかのリスクも伴います。特に、不動産や設備の評価が市場の変動に影響されやすく、その結果、時価が想定よりも低く評価される場合があります。また、負債が予想以上に膨らんでいる場合、時価純資産額が大幅に減少するリスクも考慮しなければなりません。そのため、専門的なアドバイスを受けながら慎重に評価を行うことが重要です。

まとめ

事業承継やM&Aにおける企業価値の評価において、時価純資産額は非常に重要な指標となります。企業が保有する資産を時価で評価し、それに対応する負債を差し引いた額を算定することで、企業の純粋な資産価値を把握することができます。この評価は、企業の売却価格や投資判断に直結するため、正確かつ透明な算定が求められます。専門家の支援を受けつつ、時価純資産額の評価をしっかりと行い、事業承継やM&Aの成功に向けた準備を整えることが重要です。

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