中小企業オーナーなら知っておきたい「自社株式の譲渡所得税とは?

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自社株式の譲渡所得税は、自社の株式を売却した際に発生する所得に対して課せられる税金です。譲渡所得税は、売却した株式の譲渡価額と取得価額の差額、つまり利益に対して課税されます。ここでは、自社株式譲渡に関する基本事項、課税方法、注意点について解説します。

1. 自社株式とは?

自社株式とは、その企業が発行した株式を指します。中小企業のオーナーや創業者が保有していることが多く、事業承継やM&A(企業の合併や買収)の場面で譲渡されるケースが増えています。

2. 譲渡所得税の基本構造

譲渡所得税は、株式や不動産などの資産を売却した際の利益に対して課される税金です。株式の場合、**譲渡益(売却益)**は以下の式で計算されます:

譲渡益 = 売却価格 - 取得価格 - 譲渡にかかる費用

この譲渡益に対して課税されるのが、譲渡所得税です。具体的な税率は以下の通りです:

  • 上場株式の譲渡所得税:20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)
  • 非上場株式の譲渡所得税:同じく20.315%

上場株式の売却に関する税制と、非上場株式の譲渡に関する税制は基本的に同じですが、非上場株式は流動性が低く、市場価値の決定が難しいため、売却時には異なるルールや注意点が出てくることがあります。

3. 株式の取得価額と譲渡価格の重要性

株式の取得価額は、譲渡益の計算で非常に重要です。例えば、事業承継や相続で株式を取得した場合、相続時の評価額が取得価額となります。この取得価額が譲渡価格よりも低ければ、譲渡益が大きくなり、それに応じて課税額も増えることになります。

逆に、取得価額が高ければ譲渡益が少なくなり、課税額も減ります。このため、事業承継や相続の際に、株式の評価額をどのように設定するかが重要なポイントとなります。

4. 株式譲渡の場面での税務リスク

自社株式を譲渡する際には、事前に税務リスクを把握しておくことが必要です。特に、中小企業のオーナーや後継者にとって、株式譲渡に伴う譲渡所得税は大きな負担となることがあるため、適切な税務計画を立てることが重要です。

例えば、株式譲渡の際に、株価を市場価格や類似業種の株価と比較して低く設定すると、税務当局からの指摘を受ける可能性があります。また、株式譲渡にかかる費用を適切に計上することも税負担を軽減するために必要です。

5. 特定のケース:事業承継時の株式譲渡

事業承継の一環として、株式を後継者に譲渡するケースも多くあります。この場合、相続税や贈与税の猶予・免除制度を利用することも可能です。これにより、後継者が株式を取得しても、すぐに税金を支払わずに済む制度があるため、事業を円滑に引き継ぐことができます。

ただし、この制度を利用するには、後継者が事業を一定期間(通常は5年間)継続しなければならないなどの条件があります。また、猶予された税金が免除されるためには、さらに長期間の事業継続が必要です。

6. 自社株式の譲渡とM&A

M&Aの際にも、株式の譲渡が行われることがあります。この場合、譲渡益が発生し、譲渡所得税が課されますが、M&Aのスキームによっては税務対策が可能なケースもあります。例えば、合併や株式交換を利用した場合、一定の条件を満たすことで税制優遇を受けられる「適格合併」「適格株式交換」などの制度を活用することができます。

まとめ

自社株式の譲渡所得税は、中小企業のオーナーや経営者にとって重要な課題です。特に、事業承継やM&Aの際には、適切な税務対策を講じることで、税負担を軽減し、事業の継続性を確保することが可能です。譲渡所得税の計算や納税に関しては、専門家と相談しながら計画を立てることが重要です。

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