株式評価における「純資産価額方式」とは?

更新日:

概要

「純資産価額方式」は、企業の株式評価の一つの方法であり、企業の純資産(総資産から総負債を引いた額)を基にして評価を行います。特に、中小企業や非上場企業での株式評価でよく使われる方法です。この方式は、企業の保有する資産価値そのものを基にして、株式の評価を行うため、企業の財務状況が明確に反映されます。

純資産価額方式の基本

純資産価額方式は、対象企業が持つ資産と負債を整理し、その差額である「純資産」に基づいて評価が行われます。この評価方法は、次のプロセスで進められます。

  1. 資産の評価
    企業が所有するすべての資産、例えば、土地や建物、設備、流動資産(現金や売掛金など)を評価します。この際、時価や評価損益も反映させることが求められます。

  2. 負債の評価
    企業が抱えるすべての負債(借入金や未払金など)を整理し、これを資産から差し引きます。

  3. 純資産の算出
    資産から負債を差し引いた額が「純資産」となり、この金額を基に株式の評価が行われます。

評価の具体的なステップ

純資産価額方式では、企業の財務諸表に基づいて次のようなステップで評価が進められます。

  1. 総資産の算出
    企業が所有するすべての資産の時価ベースでの評価額を合計します。これには、現金や売掛金などの流動資産、不動産や設備などの固定資産が含まれます。

  2. 総負債の算出
    企業が抱える負債を全て合計します。これには、短期および長期の借入金、未払金や支払手形などが含まれます。

  3. 純資産価額の算出
    総資産から総負債を引いた金額が純資産価額となります。この金額を発行済み株式数で割ることで、一株あたりの評価額を算出します。

純資産価額方式の特徴

この方式は、企業の資産や負債を正確に反映するため、特に企業が保有する資産の価値が大きい場合に有効です。しかし、成長性や収益性といった要素を評価に反映しづらいため、将来の成長が見込まれる企業の評価には適さない場合があります。

メリット

  1. 客観的な評価が可能
    資産と負債を基にした評価であるため、比較的客観的で透明性のある評価が行えます。

  2. 資産価値が大きい企業に適している
    企業が不動産や設備などの有形資産を多く保有している場合、この方式での評価が有効です。

デメリット

  1. 企業の将来性を反映しづらい
    純資産価額方式は、企業の現在の資産価値に基づいているため、成長性や将来の利益を反映することが難しいという点があります。そのため、将来的な収益を重視する評価には向いていません。

  2. 無形資産の評価が難しい
    企業が持つブランド力や知的財産といった無形資産を評価に反映させるのが困難です。

適用シーン

  • 事業承継の場面
    事業承継の際、親族や従業員への株式譲渡を行う場合に、純資産価額方式はよく使われます。特に、資産が豊富な企業に適しています。

  • M&A(合併・買収)の場面
    企業のM&Aにおいても、保有資産が大きな企業の場合、この方式が用いられます。資産の価値が企業の評価に大きく関わる場合には有効です。

他の株式評価方式との比較

  • 類似業種比準方式
    類似業種比準方式は、類似業種の上場企業のデータを基に評価を行う方式です。成長性や利益を重視する場面では、純資産価額方式よりも類似業種比準方式の方が適しています。

  • 配当還元方式
    配当還元方式は、企業が配当を出している場合、その配当金に基づいて株式の評価を行います。純資産価額方式と異なり、利益分配に焦点を当てた評価方法です。

結論

純資産価額方式は、企業が保有する資産や負債を基にして株式を評価するため、特に資産価値が高い企業に適した評価方法です。事業承継やM&Aの場面で利用されることが多く、客観性が高い評価ができる点が特徴です。一方で、企業の将来の成長性や無形資産を評価に反映しづらいため、他の評価方法と併用することが推奨されます。

Copyright© 株式会社RAD , 2024 All Rights Reserved.