「会社更生法・民事再生法・私的整理」の概要・違いまとめ

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事業再生のプロセスには、法的手続きと私的整理の2つの主要な方法があります。以下では、会社更生法、民事再生法、私的整理について、法的知識や事業再生の専門知識がない方にもわかりやすく説明します。

清算型・再建型?

大きく分けて、破産や倒産の種類が、清算型か、再建型かに分かれますが、会社更生法・民事再生法については、裁判所が関与する、再建型の手続きとなります。では詳しく見ていきましょう。

1. 会社更生法

会社更生法は、主に大企業が適用対象となる再建手続きです。この手続きの目的は、企業が直面している債務を整理し、事業を継続しながら再建することです。

メリット

  • 意思決定がスムーズになる。
  • 担保権付きの債権を整理できる。
  • 返済の猶予期間が長い(最大15年)。

デメリット

  • 大企業しか実施できない。
  • 手続きが複雑。
  • 現経営陣の退陣が必要。

2. 民事再生法

民事再生法は、中小企業でも実施できる再建手続きで、企業が現体制のまま事業を継続しながら債務を整理し、再建を図ります。

メリット

  • 中小企業でも実施できる。
  • 手間やコストを抑えやすい。
  • 現体制のままで実施できる。
  • 返済の猶予期間が比較的短い(最大10年)。

デメリット

  • 担保権付きの債権を整理できない。
  • 意思決定に時間がかかる。
  • 返済の猶予期間が短い。

3. 私的整理

私的整理は、裁判所を介さずに債権者との合意に基づいて債務を整理する方法です。これは法的手続きに比べて柔軟で迅速に対応できる点が特徴です。

メリット

  • 費用がかからない。
  • 対象の債権者を金融債権者に限定するなど、柔軟に進めることができる。
  • 企業価値の毀損が少ない。

デメリット

  • 反対する債権者がいる場合、実現することが困難になる。
  • 担保権が実行される可能性がある。

手続きの流れと比較

法的整理

法的整理には、会社更生法や民事再生法が含まれます。これらの手続きは、裁判所の監督の下で行われ、全ての債権者を対象に債務を整理します。

メリット

  • 裁判所の手続きにより、反対の債権者に対しても再生計画に基づく拘束力が生じる(強制的に債権がカット)。
  • 担保権の実行を止めることができる場合がある。

デメリット

  • 全ての債権者が対象となるため、事業の継続が困難になる可能性がある(信用リスク)。
  • 多額の予納金が必要になる。

私的整理

私的整理は、裁判所を介さず、企業と債権者が直接交渉して合意に基づき債務を整理します。

メリット

  • 費用がかからない。
  • 対象の債権者を金融債権者に限定するなど、柔軟に進めることができる。
  • 企業価値の毀損が少ない。

デメリット

  • 反対する債権者がいる場合、実現することが困難になる。
  • 担保権が実行される可能性がある。

選択のポイント

企業がどの手続きを選択するかは、以下のポイントに基づきます。

  • 企業の規模: 大企業は会社更生法、中小企業は民事再生法が適していることが多い。
  • コスト: 法的整理には多額の費用がかかるが、私的整理は費用がかからない。
  • 債権者との関係: 反対する債権者が多い場合は法的整理、合意が得られる場合は私的整理が効果的。
  • 企業価値の維持: 企業価値を損なわずに再建したい場合は私的整理が有効。

まとめ

会社更生法、民事再生法、私的整理のそれぞれの手続きには、企業の状況や再建の目的に応じた適切な選択が求められます。法的手続きは全ての債権者を対象に強制力を持つ一方で、高い費用と複雑な手続きを伴います。私的整理は柔軟かつ迅速に進められる利点がある反面、全ての債権者の合意を得る必要があります。事業再生の成功には、専門家の助言を得て最適な手続きを選択し、実行することが重要です。

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