Contents
- 1 ✔ 定年退職者でも失業給付を受けられる理由
- 2 ✔ 基本手当の受給額・日数
- 3 ✔ 受給条件
- 4 ✔ 65歳未満・65歳以上でどう変わる?
- 5 ✔ 経営者・役員は受給できるのか
- 6 ✔ 再雇用した場合の扱い
- 7 ✔ 受給手続きの流れ
- 8 ✔ 実務での注意点
- 9 ■ 1. 定年退職後でも「失業給付の対象」となる理由
- 10 ✔ 本人が再就職を希望し、働く意思がある
- 11 ✔ 現実に雇用されていない
- 12 ✔ ハローワークで求職の申込みをする
- 13 ■ 2. 基本手当(失業給付)が受けられる条件
- 14 ■ 3. 65歳未満と65歳以上で制度が大きく変わる
- 15 ◆ 65歳未満:
- 16 ◆ 65歳以上:
- 17 ■ 4. 基本手当の支給額の計算方法(65歳未満)
- 18 ■ 5. 基本手当の所定給付日数(定年退職の場合)
- 19 ■ 6. 65歳以上の「高年齢求職者給付金」
- 20 ■ 7. 会社役員・経営者は失業給付を受けられる?
- 21 ✔ 受けられるケースもある
- 22 ✔ 受けられないケースもある
- 23 ■ 8. 再雇用(継続雇用)された場合はどうなる?
- 24 ✔ 退職していないため失業ではない → 給付なし
- 25 ✔ 退職してから再雇用された場合 → 給付の可能性あり
- 26 ■ 9. 再就職手当(早期再就職のボーナス)も対象になる
- 27 ■ 10. 基本手当を受けるための手続きの流れ
- 28 ■ 11. 定年退職者が失業給付で失敗しやすいポイント
- 29 ■ 12. まとめ:定年後の失業給付は“第二のキャリア設計”に重要
- 30 ✔ 定年退職でも失業給付は受けられる
- 31 ✔ 65歳未満 → 基本手当
- 32 ✔ 65歳以上 → 高年齢求職者給付金(一時金)
- 33 ✔ 給付額は賃金日額で計算
- 34 ✔ 再雇用のタイミングに注意
- 35 ✔ 経営者・役員の受給はケースにより異なる
- 36 ✔ 再就職手当も活用可能
──定年後も働く時代。経営者・役員・従業員が知るべき“雇用保険の出口戦略”
定年退職後に再就職・再雇用・アルバイト・独立など、
働き方が多様化しています。
その中で「失業給付(雇用保険の基本手当)」は、
定年を迎えた人でも受給できる制度 であり、
老後資金・キャリア再構築に大きく貢献する重要な仕組みです。
しかし、
-
「定年退職でも失業扱いになるの?」
-
「基本手当はいくらもらえる?」
-
「役員でももらえるの?」
-
「再就職手当も対象?」
-
「受給期間の延長はできる?」
など、誤解されている点が非常に多い制度でもあります。
本記事では、2025年現在のルールを前提に、
✔ 定年退職者でも失業給付を受けられる理由
✔ 基本手当の受給額・日数
✔ 受給条件
✔ 65歳未満・65歳以上でどう変わる?
✔ 経営者・役員は受給できるのか
✔ 再雇用した場合の扱い
✔ 受給手続きの流れ
✔ 実務での注意点
を分かりやすく解説します。
■ 1. 定年退職後でも「失業給付の対象」となる理由
失業給付(基本手当)は、
“働く意思と能力があるのに働いていない状態”
に支給される給付です。
つまり、定年で退職した場合でも、
✔ 本人が再就職を希望し、働く意思がある
✔ 現実に雇用されていない
✔ ハローワークで求職の申込みをする
これらを満たせば「失業の状態」とみなされるため、
定年退職でも支給の対象になります。
■ 2. 基本手当(失業給付)が受けられる条件
◆(1)雇用保険に加入していた期間
退職前の 2年間に12カ月以上(一般被保険者の場合)
雇用保険に加入していたことが必要です。
※倒産・解雇など特定受給資格者は1年間に6カ月以上。
定年退職は「自己都合」と同じ扱いですが、
受給に必要な期間は通常と同じ 12カ月以上 です。
◆(2)再就職する意思と能力がある
-
働きたくない
-
完全リタイア希望
であれば受給できません。
◆(3)ハローワークで求職申し込みが必要
申し込みをしてはじめて、
受給資格の確認 → 7日間の待期 → 給付
という流れがスタートします。
■ 3. 65歳未満と65歳以上で制度が大きく変わる
失業給付の制度は、
65歳を境に内容が大きく変わります。
◆ 65歳未満:
→「基本手当(いわゆる失業手当)」を受給
→ 給付日数も最大330日
◆ 65歳以上:
→「高年齢求職者給付金(1回の一時金)」を受給
→ 支給額は基本手当日額 × 30日 or 50日
つまり:65歳以降は“日数制”ではなく“一時金”に変わる
多くの経営者がこの制度変更を誤解しており、
「65歳過ぎても失業手当が長期間出る」と思っている人が少なくありません。
■ 4. 基本手当の支給額の計算方法(65歳未満)
基本手当は、退職前の給与をもとに計算されます。
◆ 基本手当日額の計算式
過去6カ月の給与(賞与除く)を平均した 賃金日額 の
45%〜80%。
賃金が低い人ほど給付割合が高くなります。
◆ 2025年時点の支給上限
厚生労働省の告示により毎年変動しますが、
2025年度の目安としては次のとおり:
-
60〜64歳:おおむね 6,800円〜8,400円程度が上限
(※毎年改定。正確な上限は厚労省公表値が必要)
◆ 受給総額のイメージ
たとえば賃金日額1万円の場合:
-
基本手当日額:4,500〜8,000円程度
-
90日受給なら支給総額:約40〜70万円
-
150日受給なら支給総額:約70〜120万円
給与水準によって変動します。
■ 5. 基本手当の所定給付日数(定年退職の場合)
定年退職は「自己都合扱い」となり、
次の表が適用されます。
| 雇用保険加入年数 | 給付日数 |
|---|---|
| 1年以上〜10年未満 | 90日 |
| 10年以上〜20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
◆ 例:勤続30年の会社員が60歳で定年退職した場合
→ 150日分の基本手当を受給可能
(最大5カ月分)
■ 6. 65歳以上の「高年齢求職者給付金」
65歳以降に離職した場合、
基本手当ではなく“高年齢求職者給付金”が支給されます。
◆ 支給額
基本手当日額 × 支給日数(30日 or 50日)
◆ 支給日数の決まり方(65歳以上)
| 雇用保険加入期間 | 支給日数 |
|---|---|
| 1年以上〜20年未満 | 30日分 |
| 20年以上 | 50日分 |
◆ 実際の支給額の例
賃金日額1万円、基本手当日額7,000円の場合:
-
30日分 → 21万円
-
50日分 → 35万円
65歳以上でも意外に受給額は大きく、
老後生活の立ち上がりを支えてくれる制度です。
■ 7. 会社役員・経営者は失業給付を受けられる?
結論:
✔ 受けられるケースもある
✔ 受けられないケースもある
◆ 経営者でも受給できる条件
-
雇用保険に「労働者として」加入していた
-
実態として労働者であり、指揮命令下で働いていた
-
役員報酬とは別に給与があり、労働時間が管理されていた
特に「名ばかり役員」ケースは争点になりやすいですが、
実態として労働者であれば原則受給できます。
◆ 受給できないケース
-
会社の経営を実質的に支配している(代表)
-
出資比率が大きく経営判断権がある
-
労働者性が認められない
中小企業の社長は多くが該当するため、
基本的には 受給が難しい場合が多い というのが実務的な判断です。
■ 8. 再雇用(継続雇用)された場合はどうなる?
定年後に同じ会社に再雇用される人が増えています。
再雇用された場合は、
✔ 退職していないため失業ではない → 給付なし
✔ 退職してから再雇用された場合 → 給付の可能性あり
ここが大きな誤解ポイントです。
◆ ケース別に整理
| ケース | 給付 |
|---|---|
| 定年後そのまま再雇用契約(空白なし) | ✕ 失業扱いにならない |
| 一度退職し、空白期間あり → 再雇用 | ○ 給付対象 |
| 再雇用されるが、ハローワークで求職 → 再就職手当の対象 | ○ 条件次第 |
再雇用と失業給付の関係は複雑なため、
タイミングの判断が重要です。
■ 9. 再就職手当(早期再就職のボーナス)も対象になる
基本手当の受給資格を持つ人が
早く再就職すると 再就職手当 が支給されます。
◆ 支給条件の一部
-
7日待期後に就職
-
1年以上雇用される見込み
-
基本手当の残日数が3分の1以上
-
過去3年以内に同手当をもらっていない
◆ 支給額
基本手当の残日数 × 基本手当日額 × 支給率(60~70%)
定年退職者でも、
65歳未満であれば通常通り対象となります。
■ 10. 基本手当を受けるための手続きの流れ
STEP1:離職票を受け取る
会社から「離職票1・2」が届く。
STEP2:ハローワークで求職申込
ここで初めて“失業の状態”と認定される。
STEP3:受給資格の決定
雇用保険加入期間・退職理由などを確認。
STEP4:7日間の待期期間
一切の給付は発生しない。
STEP5:自己都合退職は2カ月間は給付制限
(定年退職は「自己都合扱い」だが、高齢者は制限緩和される場合あり)
STEP6:最初の認定日から受給開始
STEP7:4週間ごとの失業認定を受ける
引き続き「仕事を探している状態」であることを示す必要がある。
■ 11. 定年退職者が失業給付で失敗しやすいポイント
①「再雇用=失業給付なし」を理解していない
再雇用のタイミングは非常に重要。
② 65歳以降は基本手当ではなく“一時金”になる
老後資金計画を誤りやすい。
③ 経営者は受給できると思い込んでいる
労働者性が無い場合は受給不可。
④ 離職票の受け取り遅れ
退職から数カ月遅れると、受給期間が短くなる。
⑤ 就職活動実績が不足して受給停止
「働く意思」が行動で示されている必要がある。
■ 12. まとめ:定年後の失業給付は“第二のキャリア設計”に重要
定年退職は終わりではなく、
第二のキャリアの始まりです。
✔ 定年退職でも失業給付は受けられる
✔ 65歳未満 → 基本手当
✔ 65歳以上 → 高年齢求職者給付金(一時金)
✔ 給付額は賃金日額で計算
✔ 再雇用のタイミングに注意
✔ 経営者・役員の受給はケースにより異なる
✔ 再就職手当も活用可能
定年後の収入の空白期間を埋め、
再就職の不安を和らげる重要な制度でもあります。
経営者としては、自社の従業員だけでなく、
自身の定年後の働き方を考える上でも理解しておくべき制度です。