【2025年最新版】定年退職後の失業給付(基本手当)を徹底解説

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──定年後も働く時代。経営者・役員・従業員が知るべき“雇用保険の出口戦略”

定年退職後に再就職・再雇用・アルバイト・独立など、
働き方が多様化しています。

その中で「失業給付(雇用保険の基本手当)」は、
定年を迎えた人でも受給できる制度 であり、
老後資金・キャリア再構築に大きく貢献する重要な仕組みです。

しかし、

  • 「定年退職でも失業扱いになるの?」

  • 「基本手当はいくらもらえる?」

  • 「役員でももらえるの?」

  • 「再就職手当も対象?」

  • 「受給期間の延長はできる?」

など、誤解されている点が非常に多い制度でもあります。

本記事では、2025年現在のルールを前提に、


✔ 定年退職者でも失業給付を受けられる理由

✔ 基本手当の受給額・日数

✔ 受給条件

✔ 65歳未満・65歳以上でどう変わる?

✔ 経営者・役員は受給できるのか

✔ 再雇用した場合の扱い

✔ 受給手続きの流れ

✔ 実務での注意点


を分かりやすく解説します。


■ 1. 定年退職後でも「失業給付の対象」となる理由

失業給付(基本手当)は、
“働く意思と能力があるのに働いていない状態”
に支給される給付です。

つまり、定年で退職した場合でも、


✔ 本人が再就職を希望し、働く意思がある

✔ 現実に雇用されていない

✔ ハローワークで求職の申込みをする


これらを満たせば「失業の状態」とみなされるため、
定年退職でも支給の対象になります。


■ 2. 基本手当(失業給付)が受けられる条件

◆(1)雇用保険に加入していた期間

退職前の 2年間に12カ月以上(一般被保険者の場合)
雇用保険に加入していたことが必要です。

※倒産・解雇など特定受給資格者は1年間に6カ月以上。

定年退職は「自己都合」と同じ扱いですが、
受給に必要な期間は通常と同じ 12カ月以上 です。


◆(2)再就職する意思と能力がある

  • 働きたくない

  • 完全リタイア希望

であれば受給できません。


◆(3)ハローワークで求職申し込みが必要

申し込みをしてはじめて、
受給資格の確認 → 7日間の待期 → 給付
という流れがスタートします。


■ 3. 65歳未満と65歳以上で制度が大きく変わる

失業給付の制度は、
65歳を境に内容が大きく変わります。


◆ 65歳未満:

→「基本手当(いわゆる失業手当)」を受給
→ 給付日数も最大330日


◆ 65歳以上:

→「高年齢求職者給付金(1回の一時金)」を受給
→ 支給額は基本手当日額 × 30日 or 50日


つまり:65歳以降は“日数制”ではなく“一時金”に変わる

多くの経営者がこの制度変更を誤解しており、
「65歳過ぎても失業手当が長期間出る」と思っている人が少なくありません。


■ 4. 基本手当の支給額の計算方法(65歳未満)

基本手当は、退職前の給与をもとに計算されます。


◆ 基本手当日額の計算式

過去6カ月の給与(賞与除く)を平均した 賃金日額
45%〜80%。

賃金が低い人ほど給付割合が高くなります。


◆ 2025年時点の支給上限

厚生労働省の告示により毎年変動しますが、
2025年度の目安としては次のとおり:

  • 60〜64歳:おおむね 6,800円〜8,400円程度が上限
    (※毎年改定。正確な上限は厚労省公表値が必要)


◆ 受給総額のイメージ

たとえば賃金日額1万円の場合:

  • 基本手当日額:4,500〜8,000円程度

  • 90日受給なら支給総額:約40〜70万円

  • 150日受給なら支給総額:約70〜120万円

給与水準によって変動します。


■ 5. 基本手当の所定給付日数(定年退職の場合)

定年退職は「自己都合扱い」となり、
次の表が適用されます。

雇用保険加入年数 給付日数
1年以上〜10年未満 90日
10年以上〜20年未満 120日
20年以上 150日

◆ 例:勤続30年の会社員が60歳で定年退職した場合

→ 150日分の基本手当を受給可能
(最大5カ月分)


■ 6. 65歳以上の「高年齢求職者給付金」

65歳以降に離職した場合、
基本手当ではなく“高年齢求職者給付金”が支給されます。


◆ 支給額

基本手当日額 × 支給日数(30日 or 50日)


◆ 支給日数の決まり方(65歳以上)

雇用保険加入期間 支給日数
1年以上〜20年未満 30日分
20年以上 50日分

◆ 実際の支給額の例

賃金日額1万円、基本手当日額7,000円の場合:

  • 30日分 → 21万円

  • 50日分 → 35万円

65歳以上でも意外に受給額は大きく、
老後生活の立ち上がりを支えてくれる制度です。


■ 7. 会社役員・経営者は失業給付を受けられる?

結論:


✔ 受けられるケースもある

✔ 受けられないケースもある


◆ 経営者でも受給できる条件

  • 雇用保険に「労働者として」加入していた

  • 実態として労働者であり、指揮命令下で働いていた

  • 役員報酬とは別に給与があり、労働時間が管理されていた

特に「名ばかり役員」ケースは争点になりやすいですが、
実態として労働者であれば原則受給できます。


◆ 受給できないケース

  • 会社の経営を実質的に支配している(代表)

  • 出資比率が大きく経営判断権がある

  • 労働者性が認められない

中小企業の社長は多くが該当するため、
基本的には 受給が難しい場合が多い というのが実務的な判断です。


■ 8. 再雇用(継続雇用)された場合はどうなる?

定年後に同じ会社に再雇用される人が増えています。

再雇用された場合は、


✔ 退職していないため失業ではない → 給付なし

✔ 退職してから再雇用された場合 → 給付の可能性あり


ここが大きな誤解ポイントです。

◆ ケース別に整理

ケース 給付
定年後そのまま再雇用契約(空白なし) ✕ 失業扱いにならない
一度退職し、空白期間あり → 再雇用 ○ 給付対象
再雇用されるが、ハローワークで求職 → 再就職手当の対象 ○ 条件次第

再雇用と失業給付の関係は複雑なため、
タイミングの判断が重要です。


■ 9. 再就職手当(早期再就職のボーナス)も対象になる

基本手当の受給資格を持つ人が
早く再就職すると 再就職手当 が支給されます。


◆ 支給条件の一部

  • 7日待期後に就職

  • 1年以上雇用される見込み

  • 基本手当の残日数が3分の1以上

  • 過去3年以内に同手当をもらっていない


◆ 支給額

基本手当の残日数 × 基本手当日額 × 支給率(60~70%)

定年退職者でも、
65歳未満であれば通常通り対象となります。


■ 10. 基本手当を受けるための手続きの流れ


STEP1:離職票を受け取る

会社から「離職票1・2」が届く。


STEP2:ハローワークで求職申込

ここで初めて“失業の状態”と認定される。


STEP3:受給資格の決定

雇用保険加入期間・退職理由などを確認。


STEP4:7日間の待期期間

一切の給付は発生しない。


STEP5:自己都合退職は2カ月間は給付制限

(定年退職は「自己都合扱い」だが、高齢者は制限緩和される場合あり)


STEP6:最初の認定日から受給開始


STEP7:4週間ごとの失業認定を受ける

引き続き「仕事を探している状態」であることを示す必要がある。


■ 11. 定年退職者が失業給付で失敗しやすいポイント

①「再雇用=失業給付なし」を理解していない

再雇用のタイミングは非常に重要。


② 65歳以降は基本手当ではなく“一時金”になる

老後資金計画を誤りやすい。


③ 経営者は受給できると思い込んでいる

労働者性が無い場合は受給不可。


④ 離職票の受け取り遅れ

退職から数カ月遅れると、受給期間が短くなる。


⑤ 就職活動実績が不足して受給停止

「働く意思」が行動で示されている必要がある。


■ 12. まとめ:定年後の失業給付は“第二のキャリア設計”に重要

定年退職は終わりではなく、
第二のキャリアの始まりです。


✔ 定年退職でも失業給付は受けられる

✔ 65歳未満 → 基本手当

✔ 65歳以上 → 高年齢求職者給付金(一時金)

✔ 給付額は賃金日額で計算

✔ 再雇用のタイミングに注意

✔ 経営者・役員の受給はケースにより異なる

✔ 再就職手当も活用可能


定年後の収入の空白期間を埋め、
再就職の不安を和らげる重要な制度でもあります。

経営者としては、自社の従業員だけでなく、
自身の定年後の働き方を考える上でも理解しておくべき制度です。

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