2025年、日本の中小企業はこれまでにない深刻な課題に直面しています。
そのキーワードは、次の3つです。
・人手不足
・人手不足倒産の急増
・後継者不在(承継できない企業の増加)
特にここ1〜2年で状況は一気に悪化しました。
少子高齢化・賃上げ圧力・採用競争の激化・事業承継の遅れなど複数の要因が重なり、
「採用できない」「辞める」「継がせられない」会社が急増しています。
この記事では、帝国データバンクと東京商工リサーチの最新データをもとに、
中小企業として何に備え、何を変えるべきか?
実践的な視点で整理していきます。
Contents
① 中小企業の正社員不足率は51.6% ―「採用できない」はもはや通常状態
2025年10月の調査によると、中小企業の正社員の人手不足割合は51.6%。
4年連続で半数を超えており、採用できないことを前提に経営を考える必要があります。
さらに業種別では、状況はもっと深刻です。
| 業種 | 正社員不足率 |
|---|---|
| 建設業 | 70.2% |
| 情報サービス | 67.7% |
| 運輸・倉庫 | 67.1% |
| メンテナンス・警備 | 63.6% |
| 製造業 | 62.1% |
特に建設、IT、物流など社会インフラ産業を中心に、人材不足が事業の継続性を脅かす水準に達しています。
② 人手不足倒産は史上最多に ―中小企業の約6割が資本金1,000万円未満
人手不足がもたらす最大のリスクは「倒産」です。
2025年1〜10月の人手不足倒産は323件(前年比+30.7%)。
すでに過去最多記録を更新し、その62.5%が資本金1,000万円未満の小規模企業です。
特に多い倒産原因は次の3つ:
| 倒産要因 | 件数 | 前年比 |
|---|---|---|
| 従業員退職 | 95件 | +53.2% |
| 人件費高騰 | 114件 | +37.3% |
| 採用できず事業継続不可 | 114件 | 大幅増 |
特に特徴的なのは、「採用できない」よりも「辞める」ことで倒産している点です。
③ 後継者不在率は62.60% ―全国の中小企業の6割が承継不能
人材に関する最大の経営課題は事業承継の停滞です。
2025年の後継者不在率は「62.60%」で、過去最高を記録。
特に50代・60代経営者で承継未定の企業が圧倒的です。
| 社長の年齢 | 後継者不在率 |
|---|---|
| 40代 | 87.08% |
| 50代 | 72.77% |
| 60代 | 49.10% |
| 70代 | 32.01% |
| 80代 | 24.97% |
特に危機的なのは、60代で約半数が後継者不在という点です。
これは「すぐ承継支援をしなければ、市場退出が増える」ことを意味します。
④ 中小企業の共通課題は「採用できない」ではなく「戦略がない」
データを整理すると、中小企業の課題は次の3つに集約できます。
①採用できない
②採用しても辞める(定着しない)
③事業を継がせられない(承継できない)
ポイントは、これらは別々の課題ではなく1本の線でつながっているということです。
⑤ 中小企業が今すぐ取り組むべき5つの行動
① 採用より前に「仕事の設計」を変える
-
属人的業務の排除
-
標準化マニュアル化(動画含む)
-
正社員がやるべき業務の明確化
② 採用戦略の再設計
-
大手企業と同じ戦い方をしない
-
副業・フリーランス・兼業人材の活用
-
合わない人材を採らない戦略型採用へ
③ 離職を防ぐ「定着型」人事戦略
-
評価基準の見える化
-
行動評価・改善評価も取り入れる
-
報酬設計は役割・責任ベースで見直す
④ DX・外部リソースの積極活用
-
スポットワーカー・ITアウトソーシング
-
AIによる事務・資料自動化
-
インターン・海外リモート人材の活用
⑤ 承継戦略は“採用戦略の延長”
-
社内の次世代リーダー候補の投資育成
-
事業譲渡・M&Aは早期検討すべき選択肢
-
60代で「承継準備の最盛期」と認識する
⑥ まとめ:人が増える時代は終わった。
➝ “人がいなくても強い会社” になる戦略へ
深刻なのは「人が来ないこと」ではありません。
その会社が“人にとって魅力的でない”ことが露呈していることです。
では、何をすればいいのか?
・人を採る前に、仕事の仕組みを作る
・採用するより、辞めない組織を作る
・承継問題は採用戦略とリンクしている
・中小企業の競争力は“採用力”ではなく、“設計力”で決まる
中小企業が今とるべき第一歩(実行項目チェックリスト)
| 実行項目 | 対応状況 |
|---|---|
| 業務の標準化・属人化排除 | ☐ |
| 採用より定着重視の人事設計 | ☐ |
| DX・外部リソース活用状況 | ☐ |
| 幹部候補・承継候補の育成開始 | ☐ |
| 5年後の事業戦略と人材戦略の連携 | ☐ |
まとめ
中小企業の経営課題は、「採用できない」が入口ですが、
その本質は、組織・業務・人材・承継すべてを含んだ構造の問題です。
採用ができなくても生き残る会社。
人が少なくても利益を出せる会社。
承継できる会社。
これらに共通するのは……
“人を前提としない経営設計” に変えていること
この視点を持った会社から、
2025年以降、確実に強くなっていくでしょう。