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経営事項審査とは?
経営事項審査(けいえいじこうしんさ、略して「経審」)は、建設業法に基づき公共工事の受注を希望する建設業者に課される審査制度です。正式には「建設業者の経営に関する事項の審査」と呼ばれ、国や地方自治体が発注する公共工事を受注するためには、この審査を受けることが必須となります。
経営事項審査は、業者の財務的な健全性、技術力、経営状況を数値化するもので、一定の基準を満たす業者のみが公共工事の競争入札に参加する資格を得る仕組みです。
経営事項審査の目的
経営事項審査の主な目的は以下のとおりです:
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公共工事の信頼性確保
経審を通じて信頼できる建設業者を選定し、公共工事の品質を担保します。 -
透明性の向上
客観的な基準に基づき業者を評価することで、入札の透明性を確保します。 -
健全な競争促進
経営状況が明確化されることで、建設業界全体の健全な競争を促進します。
審査対象とその流れ
審査対象者
経営事項審査は、建設業許可を受けた業者のうち、公共工事を希望する業者が対象となります。以下の業種が代表的な審査対象です:
- 土木工事業
- 建築工事業
- 電気工事業
- 管工事業 など
審査の流れ
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申請書類の準備
必要な書類を用意し、管轄の都道府県または地方整備局に申請します。 -
経営状況分析の実施
国土交通大臣が登録した経営状況分析機関によって、財務データを基に審査を受けます。 -
経営事項審査の実施
技術力や経営状況に基づき評価を受け、点数が付与されます。 -
審査結果の通知
審査結果は業者に通知され、公共工事の入札資格が付与されます。
評価項目
経営事項審査は、以下の項目で評価されます:
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経営規模等評価点(X1, X2)
- 経営規模(売上高、自己資本額など)
- 技術職員数
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経営状況評価点(Y)
- 財務状況を基に計算され、企業の安定性や収益性を評価します。
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技術力評価点(Z)
- 技術者の保有資格や実績に基づき算出されます。
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その他の加点要素(W)
- ISO認証の取得や建設業の継続年数などが対象。
総合評点(P)
各評価項目を基に、以下の式で総合評点が算出されます: P = X1 + X2 + Y + Z + W
この総合評点が高いほど、公共工事の受注可能性が高まります。
経営事項審査のメリット
1. 公共工事の受注資格取得
経審をクリアすることで、公共工事の入札に参加できる資格を得られます。
2. 企業の信頼性向上
第三者機関による審査を受けることで、経営の透明性と信頼性が高まります。
3. 経営課題の把握
経審を通じて自社の強みや弱みが明確になり、経営改善の指針を得られます。
4. 競争力の向上
総合評点を高めることで、他社との差別化が図れます。
経営事項審査のデメリット
1. 手続きの煩雑さ
申請に必要な書類が多く、準備に時間がかかる場合があります。
2. 審査費用の負担
審査には一定の費用がかかり、中小企業にとっては負担となる場合があります。
3. 評価基準の固定化
評価基準が一律であるため、実態に即した評価が得られない場合があります。
審査結果の活用法
1. 入札活動
審査結果を基に、公共工事の入札に積極的に参加します。
2. 経営戦略の策定
審査結果を分析し、弱点を改善する経営戦略を立てることが可能です。
3. 取引先への信頼性向上
取引先に対して審査結果を提示することで、企業の信頼性をアピールできます。
経営事項審査の改善ポイント
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資格取得の促進
技術力評価点を上げるために、社員の資格取得を積極的に支援します。 -
財務健全化の取り組み
経営状況評価点を向上させるために、財務体質の改善を図ります。 -
実績の積み重ね
過去の施工実績を積み重ね、総合評点を高めます。 -
書類準備の効率化
申請書類の整備を日頃から行い、手続きの負担を軽減します。
まとめ
経営事項審査は、公共工事を受注するために欠かせないプロセスであり、企業の信頼性を高める重要な指標でもあります。審査を通じて自社の強みを伸ばし、弱点を改善することで、競争力を向上させることが可能です。
中小企業にとっては、手続きの煩雑さや費用負担が課題となる場合もありますが、適切な準備と戦略的な取り組みを行うことで、十分に成果を得られるでしょう。