「除外合意」と「固定合意」の違いを徹底解説!事業承継と資産管理に役立つ基礎知識

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事業承継やM&Aの計画を進める際、後継者や関係者との間で資産や財産の取り扱いについて事前に合意を形成しておくことが重要です。特に「除外合意」と「固定合意」という2つの概念は、財産の分配や相続の場面で役立つもので、リスク管理やトラブル回避のために知っておくと便利です。本記事では、除外合意と固定合意の違い、それぞれの特徴、そして実際にどのように活用できるかを詳しく解説します。


除外合意と固定合意の基本的な違いとは?

まず、除外合意と固定合意はどちらも相続時の財産や資産の取り扱いに関する取り決めです。以下に、各合意の特徴を解説します。


1. 除外合意とは?

除外合意は、特定の財産や資産を相続財産の対象から外す取り決めのことを指します。これは相続時に特定の資産が分配対象から除外されるため、他の相続人と共有する必要がなくなり、その資産を自由に利用できます。

除外合意のメリット

  • 財産の個別管理がしやすい
    事業承継を予定している資産や企業の株式などを除外しておくことで、経営のコントロールがしやすくなり、経営の安定化につながります。

  • 相続時のトラブルを回避できる
    特定の相続人がその資産を使用することを前提に除外合意を結んでおけば、他の相続人との争いを防ぎ、スムーズな財産分配が実現します。

除外合意のデメリット

  • 適用範囲が限定的
    除外合意を結ぶには、相続人全員の合意が必要であり、全員が同意しない場合には成立しません。

  • 財産分配に不平等が生じる可能性
    除外合意が成立すると、他の相続人にとって不利益と感じる可能性もあるため、慎重な調整が必要です。


2. 固定合意とは?

固定合意は、特定の財産の価値を一定の金額に固定することを意味します。これは、例えば事業用資産や不動産のように価値が変動しやすい資産に対して、特定の評価時点の価値を基準として設定し、相続時にその評価額で承継することを決定するものです。

固定合意のメリット

  • 相続財産の価値変動による影響を抑制
    将来の不動産や株式の価値変動にかかわらず、相続時には予め固定した金額を基準とするため、財産評価に関するリスクを抑えることができます。

  • 相続人間の公平感が保たれる
    特定の相続人が事業を継承する場合、固定合意を行うことで、事業の資産評価を安定させて他の相続人への分配額を確定させやすくなり、合意形成がしやすくなります。

固定合意のデメリット

  • 設定時の評価に依存する
    評価時点で資産の価値を固定するため、その後の資産価値が増減しても影響を受けないことになり、相続人にとって不公平に感じる可能性があります。

  • 適用範囲に制限がある
    固定合意も除外合意と同様に、相続人全員の同意が必要であり、全員が納得しなければ成立しません。


除外合意と固定合意の選択基準

1. 事業承継の有無

事業承継が必要な場合、会社株式など特定の資産を除外合意により相続財産から外しておくことで、経営の一貫性を保てます。一方で、不動産や大きな資産価値を持つものは固定合意を検討することで、相続税対策や後の資産分配がスムーズになります。

2. 資産の評価変動リスク

株式や不動産の価値変動リスクが高い場合、固定合意を活用することで、相続時の財産評価における不確実性を減らすことができます。特に、不動産や株式の相続では、将来の評価リスクが資産分配に大きな影響を及ぼすためです。

3. 相続人間の公平性

除外合意により特定の資産を相続財産から外す場合、相続人間で不公平感が生まれる可能性があるため、慎重な調整が求められます。事前に全員の合意を取り付け、納得のいく形での資産分配が必要です。


除外合意と固定合意の活用場面

  1. 事業用資産の承継における除外合意
    事業用資産、特に企業の株式については、他の相続人との共有を避け、経営者となる人物が完全にコントロールできるようにするために除外合意が使われることがあります。

  2. 不動産の相続時における固定合意
    家族が経営する土地付きの店舗や事務所などについては、固定合意を行うことで、将来の資産評価額が変動するリスクを回避し、他の相続人との分配を公平に保つことが可能です。

  3. 株式の相続時の評価における固定合意
    株式の評価が変動しやすい場合、予め固定合意を行い、相続時には一定の価格での承継を行うことで、後々のトラブルを回避しやすくなります。


注意点:除外合意や固定合意を行う際の手続き

  1. 全員の合意が必要
    除外合意や固定合意のいずれの場合も、相続人全員の合意が必須です。合意を得るためには、相続人全員の同意が不可欠であり、同意を得られない場合は成立しません。

  2. 法的な文書化と専門家の協力
    除外合意や固定合意は、後のトラブルを避けるために法的な文書として明文化することが重要です。特に財産分配に関する合意書として公証役場での手続きも有効であり、弁護士や税理士に依頼することで、正確かつスムーズな手続きを行えます。

  3. 相続税や贈与税の負担に注意
    除外合意や固定合意を行う際には、相続税や贈与税がかかる可能性があるため、税務の確認が必要です。税負担についても専門家のアドバイスを受け、十分に理解してから進めましょう。


まとめ:除外合意と固定合意を活用して相続トラブルを防ごう

除外合意と固定合意の使い分けは、円滑な事業承継や相続を実現するために重要な方法です。特に中小企業においては、相続に伴う資産管理や負債リスクの調整が求められます。相続人間での公平性を保ちつつ、事業を円滑に承継するための仕組みを取り入れることで、相続におけるトラブルを最小限に抑えることが可能です。正確な手続きを行うためにも、弁護士や税理士などの専門家の協力を仰ぎましょう。

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