事業承継・M&Aで使える『超過収益力』の算定方法と実践的な活用

更新日:

事業承継やM&Aの現場で、企業価値を適正に評価する際に「超過収益力」の算定は重要な役割を果たします。特に、企業の収益性が競合と比べて優位である場合、その差を「超過収益」として評価し、事業価値に反映させることができます。本記事では、超過収益力の具体的な算定方法やその活用法について詳しく解説します。

1. 超過収益力とは?

超過収益力とは、企業が通常の市場条件や競合他社と比べて、どれだけ多くの利益を生み出す能力があるかを示す指標です。この収益力を評価することによって、企業が持つ特有の強みやブランド価値などの無形資産を具体的に算定することができます。

2. 超過収益力の算定式

超過収益力を算定するための基本的な式は次の通りです:

超過収益力 = 実際の利益 - 基本的な期待収益

ここで「基本的な期待収益」とは、企業の純資産に対する通常の市場リターンを指します。具体的には以下のような形で算定されます。

基本的な期待収益 = 純資産 × 業界標準の収益率

この「業界標準の収益率」は、業界内の平均的な投資利益率(ROI)や、一定のリスクプレミアムを含む期待リターンを用いるのが一般的です。

3. 超過収益力の活用場面

超過収益力は、主に以下の場面で活用されます。

  • 事業承継:後継者に事業を引き継ぐ際、企業の収益性を適切に評価し、後継者の経営戦略に役立てるために超過収益力を把握します。
  • M&A:企業買収や統合の場面では、買収対象企業の利益が業界平均を上回っているかを判断する重要な指標となります。
  • 事業再生:業績不振企業の再生を目指す場合、再生後に見込まれる収益力を評価し、企業価値を算出します。

4. 超過収益力算定の具体例

具体的な例として、A社の純資産が10億円で、業界の平均収益率が5%である場合、基本的な期待収益は次のように算定されます:

基本的な期待収益 = 10億円 × 5% = 5000万円

もしA社が年間で7000万円の実際利益を上げている場合、超過収益力は次のように計算されます:

超過収益力 = 7000万円 - 5000万円 = 2000万円

この2000万円が、A社の他社に対する収益上の強みとなり、M&Aや事業承継の際に重要な役割を果たします。

5. 超過収益力を最大化するための施策

最後に、企業が超過収益力を最大化するための具体的な施策についても考察します。例えば、以下のような取り組みが効果的です。

  • コスト管理の最適化:無駄なコストを削減し、利益率を向上させる。
  • ブランド価値の向上:独自のブランド力を強化し、価格競争に巻き込まれない経営を実現する。
  • 人材育成:優れた人材を育成し、企業の成長を支える。

超過収益力を適切に把握し、それを最大限に活用することは、企業の長期的な成長に不可欠です。M&Aや事業承継を考えている経営者にとって、この指標を用いた価値評価は極めて重要なものとなります。

Copyright© 株式会社RAD , 2025 All Rights Reserved.