物価高、人手不足、原材料高騰。
「どの業界も厳しい」
そんな声が多いなか、2026年6月、東京商工リサーチ(TSR)の調査では、逆風の中でも業績を回復・拡大している業界が明らかになった。
今回取り上げるのは、
- 時計修理業
- 宅配飲食サービス業
- ホテル業
- 花・植木小売業
である。
一見すると共通点のない4業界だが、そこには中小企業経営者が学ぶべき重要な共通項が存在していた。
Contents
① 時計修理業 ~「モノ」ではなく「価値の維持」を売る~
東京商工リサーチによると、主要26社の2025年業績は
- 売上高123億5,000万円(前年比7.7%増)
- 最終利益3億3,100万円(前年比18.2%増)
となり、コロナ禍から回復した。
高級時計の中古価格高騰やヴィンテージ需要を背景に、
「新しい時計を買う」
よりも
「大切な時計を長く使う」
というニーズが拡大している。
ロレックスなどの高級時計ではオーバーホール代が10万円を超えることも珍しくない。
それでも利用者は価格よりも、
- 思い入れ
- 資産価値維持
- 愛用品を次世代に残す
という価値にお金を払っている。
つまり時計修理業は、
「修理」を売っているのではなく、価値の維持を売っている。
(出典:東京商工リサーチ「時計修理業の業績復調、思い入れと二次流通」2026年6月21日)
② 宅配飲食サービス業 ~市場は伸びても利益は別問題~
主要127社の2025年業績は、
- 売上高1兆1,408億円(前年比3.9%増)
- 利益207億円(前年比23.0%減)
と、4期連続増収ながら大幅減益となった。
市場自体は拡大している。
しかし、
- 原材料費高騰
- 人件費増加
- 手数料負担
などによって利益が圧迫されている。
一方で、出前館は店舗価格と同額で提供する施策により、
対象店舗の注文数が平均2.9倍になった。
つまり、
「売上拡大」だけではなく、「利益構造」が重要な時代
になっている。
(出典:東京商工リサーチ「宅配飲食サービス業業績動向調査」2026年6月19日)
③ ホテル業 ~値上げしても売れる時代へ~
上場12社(13ブランド)の2025年度実績では、
平均客室単価は
17,818円(前年比8.6%増)
稼働率は
83.3%
と高水準を維持した。
コロナ禍の2021年と比較すると、
客室単価は2倍超になったブランドもある。
普通なら値上げすれば客数は減る。
しかし、
- インバウンド需要
- 国内旅行回復
- 日本の観光資源
という強い需要があるため、
「値上げ」と「稼働率向上」
が同時に実現している。
つまりホテル業界は、
安売りではなく、高付加価値化で成長している。
(出典:東京商工リサーチ「上場ビジネス・シティホテル客室単価・稼働率調査」2026年6月17日)
④ 花屋 ~成熟市場でも復活できる~
花・植木小売業384社の2025年実績は、
- 売上高1,016億円(前年比1.8%増)
- 利益16億円(前年比4.2%増)
となった。
一方で、
- 肥料価格高騰
- 電気代上昇
- フラワーロス
- 農家の高齢化
など厳しい課題も多い。
しかし、
大手の日比谷花壇では
- 花のサブスク
- 法人向けサービス
- ブライダル事業
など多角化を進めている。
また、2027年の国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)への期待も高まっている。
成熟市場であっても、
新しい提供方法を作る企業は成長できる
ことを示している。
(出典:東京商工リサーチ「花・植木小売業業績動向調査」2026年6月9日)
好調な4業種から見えた共通点
業界は違っても、成功企業の共通点は驚くほど似ている。
①「安さ」ではなく価値を売っている
時計修理業 → 思い出と資産価値
ホテル業 → 快適さと体験価値
花屋 → 癒しと感情価値
価格競争をしていない。
価値競争をしている。
② モノよりサービス化している
花屋はサブスク。
時計はメンテナンス。
ホテルは体験。
単発販売ではなく、
継続的な関係性を作っている。
③ 外部環境の変化を追い風に変えている
ホテル業はインバウンド。
時計修理業は中古市場拡大。
花屋は国際園芸博覧会。
変化を恐れるのではなく、
変化を利用している。
④ 「新規顧客獲得」より既存価値を深掘りしている
新しい市場を探すだけではない。
既存顧客が持つ価値を再定義し、
単価を上げ、
長期的な関係を作る。
ここに共通点がある。
中小企業が本当に学ぶべきこと
今回の4業種を見ると、
伸びている会社は「最新の業界」ではなかった。
AI企業でもなく、
半導体企業でもない。
むしろ、
- 時計修理
- 花屋
- ホテル
- 宅配サービス
という昔から存在する業種である。
しかし彼らは、
「何を売るか」よりも
「どんな価値を提供するか」を変えてきた。
不況だから厳しいのではない。
成熟市場だから難しいのでもない。
価値の再定義ができる企業だけが伸びる。
2026年の好調業種4選は、
そのことを私たちに教えてくれている。
出典
- 東京商工リサーチ「時計修理業の業績復調、思い入れと二次流通」(2026年6月21日)
- 東京商工リサーチ「2026年 宅配飲食サービス業業績動向調査」(2026年6月19日)
- 東京商工リサーチ「2025年度 上場ビジネス・シティホテル客室単価・稼働率調査」(2026年6月17日)
- 東京商工リサーチ「2025年 花・植木小売業業績動向調査」(2026年6月9日)