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円安倒産が過去10年で2番目の水準に
帝国データバンクの調査によると、2025年度の「円安倒産」は69件となり、過去10年で2番目の水準となりました。
また東京商工リサーチの調査でも、円安関連倒産は2022年7月以降、44カ月連続で発生しています。
つまり、円安による企業倒産は一時的な現象ではなく、すでに日本の企業経営にとって「構造的なリスク」になっていると言えるでしょう。
さらに2026年3月には、米国とイスラエルによるイラン攻撃を受け、為替市場では「有事のドル買い」が進み、円相場は一時1ドル=157円台まで下落しました。
原油価格も上昇しており、日本の中小企業を取り巻く経営環境はさらに厳しさを増す可能性があります。
本記事では、円安倒産の実態と今後のリスク、そして中小企業が取るべき具体的な対策について解説します。
円安倒産の実態:卸売・小売が7割
2025年度の円安倒産を業種別に見ると、以下のような特徴があります。
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卸売業:38件
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小売業:13件
この2業種だけで、全体の約7割を占めています。
つまり、円安による倒産は「輸入依存型ビジネス」に集中しているのです。
特に目立つのが繊維・アパレル関連です。
衣料品や繊維原料は海外からの輸入に依存しているケースが多く、円安による仕入価格の上昇が直撃します。
実際、繊維関連の倒産は25件確認されています。
さらに飲食関連(8件)や家具・建具関連(6件)なども影響を受けています。
これらの業界に共通するのは
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原材料を輸入に依存
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利益率が低い
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価格転嫁が難しい
という構造です。
円安が進むと、利益が一気に圧迫されるのです。
円安倒産の典型例
実際の倒産事例を見ると、共通するパターンが見えてきます。
レディースアパレル企業の倒産
兵庫県のアパレル企業は、コロナ禍で売上が落ち込んだ状態で円安が進行しました。
仕入れ価格が高騰した結果、利益が急速に悪化。
さらにコロナ融資の返済が始まり、資金繰りが限界に達し破産しました。
靴下メーカーの倒産
奈良県の靴下メーカーは、過去の設備投資により多額の有利子負債を抱えていました。
そこへ円安による原材料価格の上昇が重なり、採算が悪化。
資金繰りが悪化し、事業継続が困難となりました。
これらの事例から見えるのは、
「円安だけで倒産するわけではない」
という点です。
倒産の本質は、
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借入負担
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利益率の低さ
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価格転嫁できない構造
などが重なった結果なのです。
イラン攻撃が円安を加速させる可能性
今回の円安には、地政学的リスクも影響しています。
2026年2月、米国とイスラエルがイランを攻撃しました。
これを受け、為替市場では「有事のドル買い」が進み、円安が加速しました。
さらに重要なのは原油価格です。
イランは世界有数の産油国であり、世界の原油輸送の約2割が通過するホルムズ海峡を抱えています。
もし中東情勢が緊迫化し、原油価格が長期的に上昇すれば、
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日本の貿易収支悪化
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エネルギー輸入増加
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円安圧力
が続く可能性があります。
野村證券の試算によると、原油価格が10%上昇した場合、日本では年間で2兆円以上のドル買い需要が発生するとされています。
つまり原油高は、円安をさらに押し進める可能性があるのです。
円安で苦しくなる中小企業の特徴
これまでの倒産事例を見ると、円安で危険になる企業には共通点があります。
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利益率が低い
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輸入依存が高い
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借入が多い
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価格転嫁ができない
特に薄利多売型ビジネスは危険です。
仕入価格が10%上がっただけで、利益が消えてしまうケースもあります。
中小企業が今すぐ取るべき5つの対策
では、経営者は何をすればよいのでしょうか。
重要なのは「円安が続く前提」で経営を見直すことです。
①商品別採算の再計算
まず行うべきは、商品別の粗利を見直すことです。
為替変動を前提に、仕入価格が上がった場合の利益を再計算しましょう。
赤字商品は早めに見直す必要があります。
②為替シミュレーション
次に、為替のシナリオを作ります。
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150円
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160円
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170円
それぞれで利益がどう変わるかを試算します。
経営は「想定外」を減らすことが重要です。
③価格転嫁の戦略
値上げは避けて通れません。
ただし、単純な値上げでは顧客が離れます。
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付加価値をつける
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商品構成を変える
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小ロット化する
などの戦略が必要です。
④借入の見直し
借入依存が高い企業は注意が必要です。
円安と原材料高で利益が減ると、返済が重くなります。
早めに金融機関と相談し、
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返済条件変更
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借換え
などの対策を検討することも重要です。
⑤生産性の改善
コスト上昇に対抗するには、生産性向上も不可欠です。
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省力化投資
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DX導入
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業務効率化
などを進めることで、利益率を改善できます。
円安は危機でもありチャンスでもある
円安は輸入企業には厳しい環境ですが、輸出企業には追い風になります。
またインバウンド需要の拡大も期待できます。
重要なのは、
円安の影響を受ける側なのか、活かす側なのか
を見極めることです。
まとめ:円安は「経営力」を問う時代
円安倒産はすでに45カ月連続で発生しています。
これは一時的な現象ではなく、日本経済の構造変化です。
さらにイラン情勢や原油価格の動向によっては、円安が長期化する可能性もあります。
この環境で生き残る企業は、
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財務を見直し
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利益構造を改善し
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変化に対応する企業
です。
円安は事故ではありません。
経営力が問われている時代なのです。