類似業種比準価額とは、非上場株式を、事業内容が似た上場企業の株価をもとに、配当・利益・簿価純資産の3つを比べて評価する方法で、主に相続税・贈与税の計算で使われます(財産評価基本通達180)。計算式は「類似業種の株価 ×(3つの比率の合計)÷3 × 斟酌率」で、斟酌率は大会社0.7、中会社0.6、小会社0.5です。類似業種は、取引金額の50%を超える業種で判定します。
類似業種比準価額は、非上場株式を評価する際の基本的な方法で、配当、利益、純資産などの要素を基に算出されます。企業の株価評価を精度高く行うため、業種別の比較対象を活用し、適切な株価を算出することが求められています。本記事では、計算方法や注意点を解説します。
類似業種比準価額とは
類似業種比準価額は、非上場株式の評価に使用される基本的な方法の一つです。この評価方法を使うことで、未上場企業でも、適切かつ公正な基準に基づいた株式評価が可能となります。具体的には、配当、利益、簿価純資産の三つの要素を基にして計算され、同業種の上場企業と比較することで、評価対象会社の株価が求められます。本記事では、類似業種比準価額の概要や計算方法、その活用ポイントについて詳しく解説していきます。
この記事の要点
- 類似業種比準価額は、主に相続税・贈与税の計算で、非上場株式を評価するときに使う方法です。
- 計算式は「類似業種の株価×{(配当の比率)+(利益の比率)+(簿価純資産の比率)}÷3×斟酌率×(1株当たり資本金等の額÷50円)」です。
- 3つの要素の比重は1:1:1で、利益の比重が3倍だったのは2016年までの計算方法です。
- 斟酌率は大会社0.7、中会社0.6、小会社0.5で、会社の規模によっては純資産価額方式と組み合わせて評価します。
- 類似業種は取引金額の50%を超える業種で判定し、類似業種の株価は5つの候補のうち最も低いものを選べます。
1. 類似業種比準価額の概要と目的
類似業種比準価額は、市場価格のない非上場株式を、上場している同業種の会社と比べて評価するための国税庁の基準です。
類似業種比準価額は、未上場企業の株式を評価する際に、上場企業と比較して価額を推定するための基準です。この方法は、特に相続税・贈与税の計算や事業承継など、税務上の非上場株式評価で広く活用されています。未上場企業は、市場価格が存在しないため、その評価が難しいですが、類似業種比準価額を用いることで、同じ業種の上場企業との比較を通じ、評価に客観性を持たせることができます。これにより、過大評価や過小評価のリスクを抑えた、公正な評価が可能となります。
※補足:類似業種比準価額は、国税庁の財産評価基本通達(180など)に定められた、相続税・贈与税のための評価方法です。法人税で非上場株式を評価する場合は、一定の条件をつけてこの方法を準用します(法人税基本通達9-1-14)。
2. 評価の基準要素
評価の基準となるのは、評価会社の1株当たりの配当金額・利益金額・簿価純資産価額の3つで、それぞれ類似業種の数値と比べます。
株価の評価に使用される基準要素は、「配当金額」「利益金額」「簿価純資産価額」の三つです。これらは、対象会社の株主が享受する経済的な価値の源泉であるため、株式評価において重要な役割を果たします。それぞれの要素について見ていきましょう。
- 配当金額:対象会社が株主に対して支払う利益の一部を指し、企業の収益力や株主に還元する姿勢を反映します。評価会社の配当金額が類似業種より大きいほど、評価額は高くなります。
- 利益金額:会社の利益額を指し、経営の効率や収益性を示す指標です。評価会社の利益金額が類似業種より大きいほど、評価額は高くなります。
- 簿価純資産価額:会社が保有する資産から負債を差し引いた帳簿上の価額で、企業の財務的な健全性を示します。これもまた、株式の価値に直接影響を及ぼす要因です。
※補足:ここでの純資産は「帳簿価額」です。資産を相続税評価額(時価)で計算し直す「純資産価額方式」とは別のものです。
また、評価対象会社の規模に応じて、斟酌率という係数が存在します。大会社は0.7、中会社は0.6、小会社は0.5を掛けることで、上場企業との違いを反映した評価が可能となります。
類似業種比準価額の計算式についてもお伝えします。この計算方法は「配当」「利益」「簿価純資産」の3つの要素を基にして行われ、企業の規模に応じて斟酌率が調整されます。
類似業種比準価額の基本計算式
類似業種比準価額の計算は、次の式で算出されます(財産評価基本通達180):
類似業種の株価 ×{(ⓑ÷B)+(ⓒ÷C)+(ⓓ÷D)}÷3 × 斟酌率 ×(1株当たり資本金等の額÷50円)
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| 類似業種の株価(A) | 類似業種の上場企業の株価(5つの候補のうち最も低いもの) |
| ⓑ・B | 評価会社・類似業種の1株当たり配当金額 |
| ⓒ・C | 評価会社・類似業種の1株当たり利益金額 |
| ⓓ・D | 評価会社・類似業種の1株当たり簿価純資産価額 |
| 斟酌率 | 大会社0.7、中会社0.6、小会社0.5 |
- 配当金額の比率(ⓑ÷B)
評価会社の配当金額を、類似業種の配当金額で割ったものです。評価会社の配当が多いほど、この比率は高くなります。 - 利益金額の比率(ⓒ÷C)
評価会社の利益金額を、類似業種の利益金額で割ったものです。評価会社の利益が多いほど、この比率は高くなります。 - 簿価純資産価額の比率(ⓓ÷D)
評価会社の簿価純資産価額を、類似業種の簿価純資産価額で割ったもので、会社の財務健全性を反映します。
これら3つの比率の平均値(1:1:1の単純平均)を類似業種の株価に掛け、企業の実態に即した株式の評価額が求められます。
※補足:利益の比重を3倍にする計算(配当:利益:簿価純資産=1:3:1)は、平成29年(2017年)の改正前の方法です。2017年1月1日以後の相続・遺贈・贈与で取得した株式は、1:1:1で計算します(PwC)。
| 項目 | 改正前(2016年まで) | 改正後(2017年1月1日以後) |
|---|---|---|
| 比重(配当:利益:簿価純資産) | 1:3:1(÷5) | 1:1:1(÷3) |
| 類似業種の株価の候補 | 課税時期の月・前月・前々月・前年平均の4つ | 左の4つに、課税時期の月以前2年間の平均を加えた5つ |
| 項目 | 数値(例) |
|---|---|
| 類似業種の株価 | 300円 |
| 配当の比率(評価会社4.0円÷類似業種5.0円) | 0.8 |
| 利益の比率(評価会社45円÷類似業種30円) | 1.5 |
| 簿価純資産の比率(評価会社450円÷類似業種300円) | 1.5 |
| 比率の平均(3.8÷3) | 約1.27 |
| 大会社の場合(300円×約1.27×0.7) | 約266円(1株当たり資本金等50円換算) |
| 1株当たり資本金等の額が500円の場合(×10) | 約2,660円 |
斟酌率の適用
企業の規模に応じて、次の斟酌率を適用することで、上場企業との違いが反映されます。
- 大会社:0.7
- 中会社:0.6
- 小会社:0.5
したがって、計算結果にこれらの斟酌率を掛け合わせて、類似業種比準価額を求めます。
※補足:会社の規模によって、最終的な評価方法も異なります。大会社は原則として類似業種比準方式、中会社は類似業種比準価額と純資産価額を組み合わせる方式、小会社は原則として純資産価額方式(類似業種比準価額と50%ずつ組み合わせる方式も選択可)です。
| 会社規模 | 斟酌率 | 原則的な評価方法 |
|---|---|---|
| 大会社 | 0.7 | 類似業種比準方式(純資産価額のほうが低ければ純資産価額) |
| 中会社 | 0.6 | 類似業種比準価額と純資産価額の併用方式 |
| 小会社 | 0.5 | 純資産価額方式(類似業種比準価額×0.5+純資産価額×0.5も選択可) |
3. 業種別の分類と選択基準
類似業種は、評価会社の取引金額のうち50%を超える業種目で判定し、小分類から中分類、中分類から大分類への変更を選ぶこともできます。
評価対象の会社を評価する際、類似する業種の上場企業との比較が求められます。対象会社がどの業種に属するかは、国税庁が定める業種目(大分類・中分類・小分類)に従って判定します。取引金額のうち、いずれか1つの業種目の割合が50%を超える場合は、その業種目が類似業種になります。
また、50%を超える業種目がない場合は、通達で定められた順序に従って、同じ中分類や大分類の「その他の○○業」などで判定します(財産評価基本通達181-2)。小分類で判定した場合は中分類を、中分類で判定した場合は大分類を、納税義務者の選択により類似業種とすることもできます(181)。これは、特に複合企業などの事業多角化を行っている企業にとって、確認しておきたい重要なポイントです。
※補足:類似業種の株価は、①課税時期の属する月、②その前月、③前々月の各月の平均株価、④前年の平均株価、⑤課税時期の属する月以前2年間の平均株価のうち、最も低いものを選べます。
4. 株価修正のケース
直前期末から課税時期までに配当金の効力が生じたり株式の割当てがあったりした場合は、評価額を修正します。
評価日までに対象会社が配当金を支払ったり、株式割当を行ったりした場合、株価に対して一定の修正が必要です。こうした修正は、評価時点の株主の利益を正確に反映するために行われます。
具体的には、直前期末から評価日までに行われた資本構成の変動を調整し、最も実態に近い株価を算出します。評価基準を満たすためには、これらの配当や割当の詳細を精査し、必要に応じて算出基準に反映することが求められます。こうした修正株価の算出は、特に株主間での利益分配において、公正性を確保する重要なプロセスです。
5. 特別配当や非経常利益の扱い
配当金額からは特別配当・記念配当を、利益金額からは固定資産売却益など臨時的な利益を除いて計算します。
株価評価の正確性を保つため、評価基準に含める利益についても、配慮が必要です。特に、継続的な利益ではなく、特別配当や記念配当は配当金額から、固定資産の売却益など臨時的な利益(例:不動産売却益など)は利益金額から除いて計算します。これにより、実際の経営成績や資産内容に応じた正確な株価評価が実現されます。
また、これらの特別利益を評価基準に含めないことで、会社の通常の収益力を反映した実態評価が可能になります。この方法は、非上場企業の株式評価において特に有効であり、株主間の公平性を維持しつつ、資産評価を正確に行うための基本的な手法です。
6. 類似業種比準方式を使えない会社
土地や株式を多く持つ会社や、配当・利益・簿価純資産の比準要素が少ない会社は、原則として類似業種比準方式で評価できません。
次のような「特定の評価会社」は、原則として純資産価額方式などで評価し、類似業種比準方式は使えない(または使い方が限られる)ため注意が必要です。
- 株式等保有特定会社(総資産に占める株式等の割合が一定以上の会社)
- 土地保有特定会社(総資産に占める土地等の割合が一定以上の会社)
- 比準要素数1の会社・比準要素数0の会社(配当・利益・簿価純資産のうち、0のものが多い会社)
- 開業後3年未満の会社、休業中・清算中の会社など
7. 経営者の活用ポイント
自社株の評価額は配当・利益・簿価純資産で変わるため、事業承継の前に株価を試算し、承継の時期や方法を検討することが大切です。
- 事業承継の前に株価を試算する
自社株を後継者に贈与・相続する前に、類似業種比準価額を試算しておくと、税負担の見通しを立てられます。 - 利益や配当の水準が株価に影響する
役員退職金の支給などで利益が一時的に下がる年は、類似業種比準価額が下がることがあります。承継の時期を検討する材料になります。 - 議決権・相続人の数も合わせて考える
株式の分け方は「議決権割合とは?中小企業における意思決定と株主の影響力を徹底解説」、相続人の数の影響は「【2026年最新版】普通養子縁組を完全解説」も参考にしてください。
類似業種比準価額は、非上場株式評価の重要な手法であり、特に事業承継や税務上の評価基準として利用されています。この評価方法を理解し活用することで、企業の資産評価が公平に行われ、株主や投資家に対して適切な価値を示すことが可能です。
※本記事は一般的な解説です。会社規模の判定や特定の評価会社の判定、実際の株価の計算は、税理士などの専門家にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
類似業種比準価額について、よく寄せられる質問に結論から回答します。
Q. 類似業種比準価額とは何ですか?
非上場株式を、事業内容が似た上場企業の株価と、配当・利益・簿価純資産の3つを比べて評価する方法です。主に相続税・贈与税の計算で使われます(財産評価基本通達180)。
Q. 類似業種比準価額の計算式は?
類似業種の株価×{(配当の比率)+(利益の比率)+(簿価純資産の比率)}÷3×斟酌率×(1株当たり資本金等の額÷50円)です。
Q. 斟酌率はいくつですか?
大会社0.7、中会社0.6、小会社0.5です。
Q. 類似業種はどうやって決めますか?
評価会社の取引金額のうち50%を超える業種目で判定します。50%を超える業種目がない場合は、通達の順序に従って中分類や大分類などで判定します。
Q. 利益の比重が3倍というのは正しいですか?
2016年までの計算方法です。2017年1月1日以後の相続・遺贈・贈与で取得した株式は、配当・利益・簿価純資産を1:1:1で計算します。
出典・参考
本記事の主な出典と、2026年11月1日の更新時に確認した資料は次のとおりです。
- 国税庁「財産評価基本通達 第8章第3節 取引相場のない株式の評価(180〜181-2)」
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/08/03.htm - PwC税理士法人「取引相場のない株式の評価の見直し(平成29年)」
https://www.pwc.com/jp/ja/taxnews-estate-taxation/assets/eth-20170630-jp.pdf
