企業倒産は年間1万件ペースへ|2026年度上半期の倒産5,373件から読み解く中小企業経営の危険信号

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導入|倒産は増えている。経営者が見るべきなのは、その中身だ

中小企業の経営環境が厳しさを増しています。

東京商工リサーチが2026年10月8日に公表した「2026年度上半期(4〜9月)の全国企業倒産状況」によると、上半期の倒産件数は5,373件でした。前年同期の5,172件から3.88%増加し、年度上半期として5年連続の増加となっています。

このペースを単純に年間換算すると、約1万746件です。年間8,000件程度のペースと比べても、倒産の発生水準が高まっていることが分かります。

さらに注目したいのは、倒産件数だけではありません。

負債総額は前年同期比23.58%増と、件数の増加率を大幅に上回りました。人手不足や物価高に関連する倒産も過去最多を更新しています。

これは、中小企業経営者にとって何を意味するのでしょうか。

重要なのは、倒産件数の増加を景気の悪化という一言で片付けないことです。原価、人件費、販売価格、借入返済、資金繰りなど、自社の経営構造を点検する必要があります。

本記事では、東京商工リサーチの最新データをもとに、倒産動向の重要な変化と、中小企業経営者が今から取り組むべき対策を解説します。

結論|今、経営者が確認すべきことは3つ

今回の倒産データから、特に重要なポイントは次の3つです。

1. 売上高だけでなく、粗利益と営業利益を確認する

原材料費や人件費が上昇しても、販売価格を十分に引き上げられなければ、売上が維持できていても利益は減少します。

2. 資金繰りを先回りして管理する

黒字であっても、借入返済、税金、社会保険料、仕入代金などの支払いが重なると、資金不足に陥る可能性があります。

3. 借入条件の変更だけに頼らず、事業の収益力を改善する

返済条件の変更は資金繰りを支える手段ですが、それだけで利益が増えるわけではありません。価格設定、原価、人員配置、顧客構成など、事業そのものを見直す必要があります。

1. 2026年度上半期の倒産件数は5,373件

東京商工リサーチの調査対象は、負債額1,000万円以上の全国企業倒産です。

2026年度上半期の主な数字を整理します。

項目2026年度上半期前年同期比
倒産件数5,373件+3.88%
負債総額8,561億6,900万円+23.58%
負債10億円以上の倒産118件+14.5%
人手不足関連倒産240件過去最多
物価高関連倒産436件過去最多を更新
ゼロゼロ融資利用後の倒産149件前年同期比30.6%減

出典:東京商工リサーチ「2026年度上半期(4-9月)の全国企業倒産5,373件」(2026年10月8日公表)

倒産件数は、年度上半期として2013年の5,505件に次ぐ高水準です。また、2022年度上半期から9期連続で前年同期を上回っています。

単に一時的な増加として捉えるのではなく、倒産が増加する傾向が続いていることを認識する必要があります。

なお、2026年9月単月の倒産件数は831件で、前年同月比4.8%減でした。月ごとの増減はあるため、年間1万件超という数字はあくまで上半期の単純換算です。年間実績を確定的に予測するものではありません。

2. 倒産件数よりも負債総額の増加率が大きい

今回、もう一つ重要なのが負債総額の増加です。

倒産件数は前年同期比3.88%増だったのに対し、負債総額は23.58%増となりました。

背景には、大型倒産の発生や、負債10億円以上の倒産が118件と前年同期比14.5%増加したことがあります。

負債額上位の企業には、クレジットカード決済代行の全東信、トーシンホールディングス、ゴルフ場運営の東京グリーン、VRコンテンツ開発のパルスなどが含まれています。

ただし、負債総額の増加をすべての企業で経営危機が深刻化している証拠と解釈することはできません。大型倒産が総額を押し上げる影響もあるためです。

一方で、中小企業にとって無視できないのは、取引先の倒産による連鎖的な影響です。

例えば、主要取引先が倒産した場合、売掛金の回収が困難になったり、予定していた受注が消失したりする可能性があります。自社の業績が安定していても、取引先の経営悪化が資金繰りを直撃することがあります。

経営者が確認したいのは、自社の売上だけではなく、売上を支えている取引先の健全性です。

特定の取引先への売上依存度、売掛金残高、入金遅延の有無などを定期的に確認しておきましょう。

3. 倒産企業の中心は小規模企業

今回のデータで特に注目したいのが、倒産企業の規模です。

東京商工リサーチによると、負債1億円未満の倒産は全体の77.0%を占め、年度上半期では過去30年間で最高の構成比となりました。

また、従業員10人未満の企業が全体の90.6%を占めています。

中小企業基本法に基づく中小企業の倒産構成比は3年連続で100.0%でした。

この数字から考えられるのは、小規模企業では経営環境の変化を吸収する余力が限られやすいということです。

例えば、仕入価格が上昇しても、交渉力が弱く価格転嫁ができない。従業員が退職しても、すぐに代わりの人材を確保できない。金融機関への返済が続くなかで、設備の修繕や採用に必要な資金を確保できない。

こうした問題が重なると、経営改善に取り組む時間や資金まで失われてしまいます。

ただし、小規模企業であること自体が倒産の原因ではありません。重要なのは、環境変化に対応できる利益構造と資金余力を持っているかどうかです。

4. 人手不足関連倒産は過去最多の240件

人手不足関連倒産は240件となり、前年同期の205件から増加しました。

内訳では、次の2項目がともに過去最多を更新しています。

  • 人件費高騰:130件(前年同期74件)
  • 従業員退職:67件(前年同期65件)

ここで考えたいのは、人手不足が単なる採用活動の問題ではないということです。

人材を確保するために賃金を引き上げれば、人件費が増加します。一方、販売価格を引き上げられなければ、利益率は低下します。

さらに、採用できないことで既存従業員の負担が増え、退職が発生すれば、残った従業員の負担が一段と重くなる可能性があります。

つまり、人手不足は「採用できない」「人件費が増える」「生産性が下がる」「利益が減る」という複数の問題につながります。

経営者が考えるべきなのは、人件費を削減することだけではありません。

人件費の上昇を吸収できるだけの付加価値を生み出せているかを確認することです。

具体的には、次の対策が考えられます。

  • 採算の悪い商品・サービスを特定する
  • 顧客別・案件別の粗利益を確認する
  • 値上げや料金体系の見直しを進める
  • 業務の標準化やデジタル化で生産性を高める
  • 管理職への権限移譲を進め、経営者や一部社員への業務集中を減らす
  • 採用だけでなく、定着率や教育体制を改善する

人手不足の時代には、人数を増やすことだけでなく、限られた人数でどれだけ利益を生み出せるかが重要になります。

5. 物価高倒産は436件。価格転嫁できない企業が苦しくなる

物価高関連倒産は436件で、前年同期の370件から増加しました。2022年度からの円安局面では最多を更新しています。

東京商工リサーチは、仕入コストや資源・原材料の上昇、価格上昇分を十分に転嫁できなかったことなどを、物価高関連倒産の集計対象としています。

企業にとって重要なのは、仕入価格の上昇そのものだけではありません。上昇したコストを販売価格に反映できるかどうかです。

例えば、売上高1,000万円、粗利益率30%の企業では、粗利益は300万円です。

ここで、売上が変わらないまま原価が50万円増加し、その分を価格転嫁できなければ、粗利益は250万円に減少します。粗利益は約16.7%減少する計算です。

これは説明のための単純な例ですが、売上高が変わらなくても利益が大きく減ることを示しています。

しかも、ここから人件費や家賃、借入返済などへの対応が必要になります。

経営者は売上高の推移だけで安心せず、粗利益率、営業利益、固定費、運転資金の必要額を合わせて確認する必要があります。

値上げを検討する場合も、一律に価格を引き上げるだけではなく、顧客別の採算や提供価値を確認しながら進めることが重要です。

6. 金利のある世界では、借入返済と事業収益をセットで考える

東京商工リサーチは、過剰債務の解消を先送りしている企業について、金融機関の姿勢変化によって選別対象となる可能性を指摘しています。

金融機関は採算性を重視した貸出姿勢を示しており、返済条件の変更を繰り返している企業については、将来性や事業性を見極めた対応が想定されています。

この点で注意したいのは、返済条件の変更そのものが悪いわけではないことです。

一時的な業績悪化に対して返済負担を調整し、その間に事業を立て直すことができれば、有効な再建手段となります。

問題は、返済条件を変更しても、利益を生み出す構造が改善していない場合です。

返済額を減らしても、赤字が続けば資金は減り続けます。追加融資を受けられたとしても、根本的な収益力が改善しなければ、将来の返済負担が重くなる可能性があります。

経営者が今から取り組みたいのは、次の3点です。

  1. 返済予定を含む資金繰り表を作成し、将来の資金不足を予測する。
  2. 金融機関に対して、業績改善策と数値計画を説明できるようにする。
  3. 返済負担を考慮したうえで、採算改善と資金確保の優先順位を明確にする。

資金繰りが厳しくなってから相談するのではなく、資金に余裕がある段階で金融機関と対話することが重要です。

7. ゼロゼロ融資後の倒産は減少。ただし安心材料とは限らない

一方で、ゼロゼロ融資利用後の倒産は149件となり、前年同期の215件から減少しました。

年度上半期では3年連続の減少です。

この数字だけを見ると、コロナ禍に実施された資金繰り支援の影響が落ち着いてきたようにも見えます。

しかし、これを中小企業全体の資金繰りが改善した証拠と捉えるのは適切ではありません。

人手不足関連倒産や物価高関連倒産は増加しており、倒産全体も前年同期を上回っています。

つまり、倒産の背景は一つではありません。過去の借入負担だけでなく、現在の原価上昇、人件費、販売価格、事業の採算性などを総合的に見る必要があります。

過去の融資制度の動向だけで判断するのではなく、自社が現在どのような経営課題を抱えているのかを把握しましょう。

8. 業種別ではサービス業、小売業、卸売業、情報通信業などに注意

2026年度上半期は、10産業のうち6産業で倒産件数が前年同期を上回りました。

主な業種別の状況は次のとおりです。

業種倒産件数前年同期比
サービス業他1,828件+3.7%
小売業636件+7.0%
卸売業607件+7.6%
情報通信業266件+33.0%
農・林・漁・鉱業73件+14.0%
建設業1,035件▲0.09%
製造業547件▲3.1%
不動産業161件▲4.7%
運輸業209件前年同期と同数

出典:東京商工リサーチ「2026年度上半期(4-9月)の全国企業倒産5,373件」

サービス業他は年度上半期として1997年度以降の30年間で最多となり、小売業は4年連続で前年同期を上回りました。情報通信業も2年ぶりに増加しています。

一方、建設業、製造業、不動産業では前年同期を下回りました。

ここで注意したいのは、倒産件数の増減だけで、その業種の将来性を判断しないことです。

同じ業種でも、価格転嫁が進んでいる企業とそうでない企業、固定客を確保している企業と受注に依存している企業では、収益構造が異なります。

重要なのは、業界全体の動向を参考にしながら、自社の顧客構成、価格決定力、原価構造、固定費を確認することです。

9. 経営者が今すぐ確認したい7つのチェックポイント

今回の倒産データを踏まえ、経営者は次の7項目を確認してみてください。

① 粗利益率は維持できているか

前年と比べて粗利益率が低下していないか。売上高が増えていても、利益率が下がっていれば注意が必要です。

② 値上げや価格転嫁ができているか

原材料費や人件費の上昇を、販売価格に反映できているかを確認します。価格交渉の進捗や、値上げ後の顧客動向も把握しましょう。

③ 顧客別・商品別の採算が分かっているか

売上高の大きい顧客や人気商品が、必ずしも利益に貢献しているとは限りません。取引先や商品ごとの採算を確認します。

④ 3〜6か月先の資金繰りを把握しているか

入金と支払い、借入返済、納税、賞与などを含めて、将来の現預金残高を予測します。必要に応じて、より長い期間の資金計画も作成しましょう。

⑤ 借入返済後にも資金が残るか

会計上の利益だけではなく、借入返済や設備投資などを考慮した現金の動きを確認します。

⑥ 取引先への依存度が高すぎないか

主要顧客への売上集中度、売掛金残高、入金遅延などを確認し、取引先の経営悪化による影響を把握します。

⑦ 人手不足を生産性改善で補えているか

採用人数だけでなく、一人当たりの付加価値、業務の標準化、管理職への権限移譲、従業員の定着状況などを確認します。

これらの項目を月次で確認することで、問題が大きくなる前に対策を検討しやすくなります。

10. 今後の見通し|年末に向けて資金繰りの点検を

東京商工リサーチは、年末に向けて資金需要が活発になる時期を迎えるなか、業績回復が進まず、返済条件の変更で資金繰りを維持している小・零細企業を中心に、年度下半期の倒産が増える可能性を指摘しています。

ただし、年間の倒産件数は今後の経済環境、金融機関の対応、企業の業績改善などによって変動します。上半期の実績だけで年間の倒産件数を断定することはできません。

経営者にとって重要なのは、倒産件数の予測を待つことではなく、自社の資金繰りを先回りして点検することです。

特に、年末にかけて仕入れや賞与、納税、借入返済などの支出が重なる企業は、資金繰り表を更新し、必要に応じて金融機関や専門家に早めに相談することをお勧めします。

まとめ|倒産件数よりも、自社の経営構造を点検する

2026年度上半期の企業倒産は5,373件となり、前年同期を上回りました。負債総額、人手不足関連倒産、物価高関連倒産にも重要な変化が表れています。

今回のデータから、経営者が押さえておきたいポイントは次のとおりです。

  • 倒産件数は5年連続で増加し、上半期の単純換算では年間約1万746件となる。
  • 負債総額は前年同期比23.58%増で、大型倒産の動向にも注意が必要。
  • 人件費高騰、従業員退職、物価高による倒産が過去最多を更新している。
  • 倒産企業の中心は小規模企業であり、利益構造と資金余力の点検が重要。
  • 金融機関への相談だけでなく、価格設定、原価管理、生産性改善など、事業そのものの収益力を高める必要がある。

倒産データは、倒産した企業だけの話ではありません。これからの経営環境を読み、自社の課題を早期に発見するための重要な情報です。

売上を追うだけでなく、利益を確保し、現金を残し、環境変化に対応できる経営へ。

まずは直近の試算表と資金繰り表を確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。

出典

東京商工リサーチ「2026年度上半期(4-9月)の全国企業倒産5,373件」(2026年10月8日公表)

https://www.tsr-net.co.jp/news/status/detail/1203308_1610.html

※本記事の統計数値は上記公表資料に基づきます。年間約1万746件は上半期の倒産件数を単純に2倍した参考値です。各項目の集計対象・定義が異なる場合があるため、数値を比較する際は原資料をご確認ください。

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