スタートアップ創業者は知っておきたい「J-KISS」とは?

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J-KISSとは、Coral Capital(旧 500 Startups Japan)が公開している、シード期のスタートアップが投資を受けるための新株予約権(J-KISS型新株予約権)のひな形です。社債ではないため返済義務や利息はなく、投資家は次回の資金調達のときに、割引率やバリュエーションキャップで計算した有利な価格で株式に転換します。企業価値の評価を次回の資金調達まで先送りでき、少ない手続きで早く資金を集められるのが特徴です。

はじめに

スタートアップ創業者にとって資金調達は重要なステップですが、その際に利用される金融商品やスキームには、さまざまな選択肢があります。その中で、注目されているのが「J-KISS」と呼ばれるスキームです。この記事では、スタートアップ創業者が知っておくべき「J-KISS」の仕組みや活用方法、メリットについて解説します。

この記事の要点

  • J-KISSは、Coral Capitalが無料で公開している、シード投資のための新株予約権のひな形です。
  • 社債(借入)ではないため、返済義務や利息はありません。
  • 投資家は、次回の資金調達(シリーズAなど)のときに、割引率とバリュエーションキャップで計算した低いほうの価格で株式に転換します。
  • 発行から18か月たっても次回の資金調達がない場合は、投資家の求めに応じて普通株式に転換されます。
  • 転換前に会社が買収された場合、投資家は出資額の2倍の償還か、キャップの条件で転換して売却するかを選べます。

1. J-KISSとは?

J-KISSとは、投資家が先に資金を出して新株予約権を受け取り、次回の資金調達のときに株式へ転換する、コンバーティブル・エクイティのひな形です。

J-KISSとは、「Japanese Keep It Simple Security」 の略で、スタートアップが資金調達の際に利用する新株予約権(正式名称は「J-KISS型新株予約権」)です。米国で公表された「KISS」をもとに、500 Startups Japan(現 Coral Capital)が日本向けに公開しました。これは、スタートアップが初期段階で柔軟に資金を調達するためのシンプルかつ効率的な手段として設計されています。

※補足:J-KISSは社債(借入)ではなく、出資を受けて将来株式に転換する「コンバーティブル・エクイティ」です。社債型のコンバーティブル・ノートと違い、返済義務や利息はありません。2022年4月には、バリュエーションキャップの基準をポストマネーに変えた「J-KISS 2.0」が公開されています(詳しくは「スタートアップ創業者は知っておきたい「J-KISS1.0とJ-KISS2.0の違い」とは?」)。


2. J-KISSの特徴

J-KISSの特徴は、ひな形が公開されていて手続きが少なく、次回の資金調達のときに有利な価格で株式に転換される点です。

J-KISSの特徴は、投資家が出資した資金を株式として転換することができる点です。具体的には、スタートアップが次回の資金調達を行う際に、その出資が株式に転換されます。以下がJ-KISSの主な特徴です:

  • シンプルさ: 従来の株式発行や社債発行に比べて、契約のシンプルさとスピード感が特徴です。資金調達のスピードが求められるスタートアップにとって適しています。
  • 転換条件: 投資家が出資した資金は、あらかじめ定められた条件(主に、次回の一定額以上の資金調達)で株式に転換されます。転換価額は、次回ラウンドの株価に割引率を適用した額と、バリュエーションキャップから計算した額のうち、低いほうが一般的です。
  • 議決権の扱い: J-KISSの発行時点では、投資家は株式を保有していないため、議決権は発生しません。これにより、創業者は資金調達後も経営権を保持しやすくなります。

※補足:発行から18か月たっても次回の資金調達が行われない場合は、投資家の求めに応じて、キャップの条件で普通株式に転換されます。


3. J-KISSのメリット

J-KISSのメリットは、早く資金を調達できること、企業価値の評価を先送りできること、転換までは投資家に議決権がないことです。

J-KISSはスタートアップと投資家の双方に多くのメリットを提供します。

  • 資金調達の迅速化: 株式発行に伴う企業価値の交渉や複雑な手続きを避け、迅速に資金調達を進めることができます。創業者にとっては、時間と労力を節約できる大きなメリットです。
  • 創業者の経営権を保護: 転換されるまでは株式を発行しないため、創業者は会社の経営権を守りやすくなります。転換前の投資家には議決権がないため、経営に対する干渉が少なくなります。ただし、転換後は投資家も株主になります。
  • 条件設定: 割引率やバリュエーションキャップなどの条件を、投資家との間で決めることができます。ひな形の空欄以外を変更する場合は、専門家への相談が推奨されています。

4. J-KISSのデメリット

J-KISSの注意点は、転換後の持株比率の希薄化と、転換前に会社が買収された場合の投資家への償還です。

もちろん、J-KISSにはデメリットも存在します。

  • 買収時の償還: J-KISSには、満期に出資金を返す仕組みはありません。ただし、株式に転換される前に会社が買収された場合は、投資家が「出資額の2倍の償還」と「キャップの条件で株式に転換して売却」のうち有利なほうを選べるため、買収の条件に影響することがあります。
  • 希薄化の可能性: J-KISSが株式に転換された場合、既存の株主の持分比率が希薄化する可能性があります。これが既存株主とのトラブルになることも考えられます。特にJ-KISS 2.0(ポストキャップ)を複数回発行すると、創業者側の持株比率が下がりやすくなります。

5. スタートアップにおけるJ-KISSの活用法

J-KISSは、企業価値をまだ決めにくいシード期に、次の大きな資金調達までのつなぎ資金を早く集める場面に向いています。

J-KISSは、日本のスタートアップ市場において、シード段階やアーリーステージでの資金調達に非常に適した手段です。例えば、創業直後に急成長を見込む企業や、次回の大規模な資金調達を見据えている企業にとって、迅速に資金を確保しつつ、経営権を守るための戦略的な選択肢となります。

※補足:J-KISSは新株予約権のため、発行には会社法上の手続き(株主総会の決議など)が必要です。税務の扱いについて、Coral Capitalは「有償時価発行新株予約権として取り扱われうる」との見解を示しつつ、顧問税理士などへの確認を求めています。


6. J-KISSと他のスキームとの違い

J-KISSは米国のSAFEに近い株式型の仕組みで、借入にあたるコンバーティブル・ノートとは、返済義務や利息がない点が違います。

J-KISSは、米国で普及しているSAFE(Simple Agreement for Future Equity)に類似していますが、より日本市場に適応した形で設計されています。また、社債(借入)ではないため返済義務や利息がない点が、転換社債型のコンバーティブル・ノートとの大きな違いです。株式を直接発行する場合と比べても、企業価値の交渉や手続きがシンプルで、スタートアップの迅速な資金調達に特化しています。

項目J-KISS(コンバーティブル・エクイティ)コンバーティブル・ノート(社債型)株式(普通株式・優先株式)での出資
法的な性質新株予約権社債(借入)株式
返済義務・利息なしあり(転換されない場合)なし
企業価値の決定次回の資金調達まで先送り次回の資金調達まで先送り出資時に決める
投資家の議決権転換するまでなし転換するまでなしあり(株式の種類による)
J-KISSと他の資金調達手段の比較

資金調達の仕組みについては、「キャピタルコール方式とは?中小企業が知っておくべき資金調達の新しい手法」もあわせてご覧ください。


7. まとめ

J-KISSは返済義務のない新株予約権のひな形で、シード期に早く資金を集められる一方、転換後の持株比率や買収時の扱いを理解して使うことが大切です。

スタートアップにとって、資金調達は企業成長の生命線です。J-KISSは、その成長を加速させるための有効な手段として注目されています。シンプルで柔軟なスキームでありながら、創業者にとっては転換までの経営権の保護が可能な点が大きなメリットです。スタートアップ創業者は、このスキームを理解し、資金調達戦略に組み込むことで、さらなる成長を目指すことができます。

※本記事は一般的な解説です。J-KISSの発行手続きや条件の設定、税務の扱いは、弁護士・税理士などの専門家にご確認ください。


よくある質問(FAQ)

J-KISSについて、よく寄せられる質問に結論から回答します。

Q. J-KISSとは何ですか?

Coral Capital(旧 500 Startups Japan)が公開している、シード期の投資のための新株予約権のひな形です。正式名称は「J-KISS型新株予約権」です。

Q. J-KISSは社債ですか?

いいえ。J-KISSは新株予約権で、社債(借入)ではありません。そのため、返済義務や利息はありません。

Q. J-KISSはいつ株式に転換されますか?

原則として、次回の一定額以上の資金調達のときに転換されます。発行から18か月たっても資金調達がない場合は、投資家の求めに応じて普通株式に転換されます。

Q. 転換前に会社が買収されたらどうなりますか?

投資家は、出資額の2倍の償還を受けるか、バリュエーションキャップの条件で株式に転換して売却するかの、有利なほうを選べます。

Q. J-KISSとSAFEの違いは何ですか?

どちらも将来株式に転換するコンバーティブル・エクイティです。J-KISSは日本の会社法に合わせて新株予約権の形をとっている点が特徴です。

出典・参考

本記事の主な出典と、2026年11月1日の更新時に確認した資料は次のとおりです。

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