キャピタルコール方式とは?中小企業が知っておくべき資金調達の新しい手法

更新日:

キャピタルコール方式とは、ファンドが投資家から出資の約束(出資約束金額)を受けておき、投資案件や費用が発生したときに、その範囲内で出資を請求して払い込んでもらう仕組みです。ファンドの仕組みであり、株式会社が株式を発行する場合は払込期日までに全額の払込みが必要なため(会社法208条)、中小企業がそのまま導入することはできません。中小企業にとっては、ファンドから出資を受ける側として理解しておくことが大切です。

はじめに

キャピタルコール方式は、主にベンチャーキャピタル(VC)やプライベートエクイティ(PE)ファンドで使用される資金調達手法です。中小企業にとっては、VCやPEファンドから出資を受ける側として、この仕組みを理解しておくことが重要です。また、ファンドの考え方に近い「段階的出資(マイルストーン型の出資)」を受けることで、事業の進捗に合わせて資金を確保できる場合もあります。この記事では、キャピタルコール方式の概要とそのメリット、注意点、中小企業が知っておくべきポイントを詳しく解説します。

この記事の要点

  • キャピタルコールとは、ファンドが出資約束金額の範囲内で、必要なときに投資家へ出資を請求する仕組みです。
  • 請求は契約で定めた事前の書面通知で行われ、投資家は通知を受けたら期限までに払い込む義務があります。
  • 払込みを怠ると、遅延利息、議決権の停止、分配の没収・減額などの措置を受けることがあります(経済産業省のLPSモデル契約13条)。
  • 株式会社が株式を発行する場合は払込期日までに全額の払込みが必要なため、中小企業がキャピタルコールをそのまま導入することはできません。
  • 中小企業は、ファンドの投資決定から着金までの期間や、段階的出資の条件を理解して資金計画を立てることが大切です。

キャピタルコール方式とは?

キャピタルコール方式とは、投資家が最初に出資の上限額を約束し、ファンドが投資や費用の必要に応じて、その範囲内で実際の払込みを請求する仕組みです。

キャピタルコール方式(Capital Call)は、ファンドが投資家から必要なタイミングで資金を呼び出す方法です。投資家は最初にファンドへの全体的なコミットメント(約束金額)を設定しますが、実際に資金が必要になるまで、その全額を一度にファンドに提供する必要はありません。ファンドマネージャーは投資機会が発生した際、または必要な運用資金が確保される時点で、コミットされた資金の一部をキャピタルコールとして呼び出します。

※補足:日本のVC・PEファンドの多くは、投資事業有限責任組合契約に関する法律(LPS法)にもとづく投資事業有限責任組合の形をとっています。経済産業省のモデル契約では、ポートフォリオ投資、組合の費用、管理報酬などのために、事前の書面通知で出資を請求する仕組みが示されています。

用語意味
出資約束金額(コミットメント)投資家がファンドに出資することを約束した上限額
コミットメント期間(投資期間)ファンドが新しい投資のために出資を請求できる期間
未払込出資約束金額出資約束金額のうち、まだ請求・払込みがされていない額
キャピタルコール通知ファンドの運営者(無限責任組合員)が投資家に払込みを求める書面の通知
デフォルト投資家が請求に応じて期限までに払い込まないこと
キャピタルコールに関する主な用語

キャピタルコール方式のメリット

キャピタルコール方式の主なメリットは、投資家が資金を使うときまで手元に置いておけることと、ファンドが投資のタイミングに合わせて資金を集められることです。

キャピタルコール方式には、ファンドや投資家にとっていくつかのメリットがあります。

1. 資金効率の向上

投資家は資金を一度に提供する必要がなく、必要なタイミングでのみ資金を拠出します。これにより、資金の無駄な拘束を避けることができ、運転資金を他の投資機会や事業運営に活用できます。

2. 投資家の資金効率(運用利回り)の維持

ファンドマネージャーは、投資機会が確実になった段階で資金を呼び出すため、投資家は使われない資金をファンドに預けておく期間が短くなります。その結果、ファンドの運用利回り(IRR)が、未投資の待機資金によって下がりにくくなります。

3. 柔軟な資金調達

キャピタルコール方式では、ファンドは必要に応じて資金を段階的に調達できるため、投資案件の決定に合わせて資金を確保できます。ただし、請求は契約で定めた期間前までの書面通知で行うため、即日に資金化できるわけではありません。

4. 投資家の資金流動性を確保

投資家は全額を先に預けるのではなく、資金の一部だけをコールされるため、他の投資機会にも資金を流動的に運用できます。

※注意:投資家は、請求があればいつでも払い込めるよう、未払込出資約束金額に見合う資金を準備しておく必要があります。払込みを怠った場合、経済産業省のモデル契約では、遅延利息、損害賠償、議決権の停止、以後の投資への参加の制限、分配の没収・減額などの措置が定められています(13条)。


キャピタルコール方式の導入に向けたポイント

ファンドがキャピタルコールを運用するには、請求の条件を契約で明確にし、資金計画を立て、投資家へ使途を説明することが欠かせません。

キャピタルコール方式を導入する際には、いくつかの重要なポイントがあります。

1. 適切な契約の設計

キャピタルコールを行うためには、投資家との間で明確な契約を結ぶ必要があります。この契約には、キャピタルコールのタイミング、金額、使途などの詳細が明記される必要があります。

2. 透明性の確保

ファンドマネージャーは、キャピタルコールの理由やその後の資金の使途について、投資家に対して透明性を持って説明する責任があります。これは、投資家の信頼を確保し、長期的な関係を築くために不可欠です。

3. 事前の資金計画の策定

キャピタルコール方式を効果的に運用するためには、事前に詳細な資金計画を策定し、どのタイミングでどの程度の資金が必要になるかを予測しておくことが重要です。

4. 投資家コミュニケーションの強化

キャピタルコールを成功させるためには、投資家との密なコミュニケーションが不可欠です。定期的な報告や説明会を通じて、投資家の理解と協力を得ることが重要です。


中小企業が出資を受ける側として知っておくこと

中小企業がファンドから出資を受ける場合は、投資決定から着金までの期間と、段階的出資の条件を資金計画に織り込むことが大切です。

株式会社が株式を発行する場合、引受人は払込期日または払込期間内に払込金額の全額を払い込む必要があり、払い込まなければ株主となる権利を失います(会社法208条)。そのため、ファンドのように出資を約束させておき、後から少しずつ請求する仕組みを、事業会社がそのまま使うことはできません。

  • 着金までの期間を見込む
    ファンドは投資を決めた後、投資家へキャピタルコールを行い、払込みを受けてから出資を実行します。投資決定から着金まで一定の期間がかかることを資金繰りに織り込みます。
  • 段階的出資の条件を確認する
    投資契約で「売上や開発の目標を達成したら次の出資を行う」と定める場合は、目標の定義と、未達のときの扱い(出資の取りやめ、条件の見直しなど)を確認します。
  • ファンドの残り期間と未払込額を確認する
    投資期間が終わりに近いファンドや、未払込出資約束金額が少ないファンドは、追加出資(フォローオン投資)に応じにくい場合があります。
  • 融資の選択肢と比較する
    必要なときに引き出せる資金枠が目的なら、銀行のコミットメントライン(融資枠契約)も選択肢になります。
仕組み使う主体資金の受け方主な注意点
キャピタルコールファンド(投資事業有限責任組合など)出資約束金額の範囲で、必要時に投資家へ請求投資家の払込み不履行への備え
段階的出資(マイルストーン型)事業会社(出資を受ける側)目標を達成するごとに新たに株式を発行して出資を受ける目標の定義、未達時の扱い、株式の希薄化
コミットメントライン事業会社(借り手)銀行と契約した融資枠の範囲で、必要時に借り入れる手数料、財務制限条項(コベナンツ)
キャピタルコールと事業会社の資金調達手段の比較

キャピタルコール方式の具体的な事例

以下は、キャピタルコールと段階的出資の流れを理解するための説明用の例です。

キャピタルコール方式を活用する具体的な事例として、以下のようなケースが挙げられます。

※以下の事例は、仕組みを説明するための架空の例です。

1. ベンチャーキャピタル(VC)の運用例

とあるVCファンドは、複数の投資家から総額100億円のコミットメントを受けました。しかし、実際に資金を呼び出すのは、有望なスタートアップへの投資案件が決定したタイミングです。このため、ファンドの運用コストを抑えつつ、投資機会が現れた際には迅速に対応できる体制を整えています。

2. プライベートエクイティ(PE)ファンドの運用例

とあるPEファンドは、投資対象企業の買収が決まった段階で投資家からキャピタルコールを行い、必要な資金を調達しています。これにより、資金調達にかかる時間を最小限に抑え、迅速なM&Aを実現しています。

3. 中小企業が段階的に出資を受ける例

とある中小企業は、新規事業の立ち上げに向けて、ファンドと段階的出資の投資契約を結びました。最初の出資で試作品を開発し、契約で定めた販売目標を達成した段階で、新たに株式を発行して次の出資を受ける流れです。事業の進捗に合わせて資金を受け入れるため、ファンドにとってはリスクを抑えやすく、企業にとっては目標達成後に有利な条件で出資を受けられる可能性があります。


まとめ

キャピタルコールはファンドの出資の仕組みであり、中小企業は出資を受ける側として、投資実行のタイミングや段階的出資の条件を理解しておくことが大切です。

キャピタルコール方式は、ファンドが投資のタイミングに合わせて投資家から資金を集めるための仕組みです。中小企業がそのまま導入できる手法ではありませんが、ファンドから出資を受ける場合には、投資決定から着金までの流れや、段階的出資の条件を理解しておくことで、資金計画を立てやすくなります。企業経営者としては、この仕組みを理解し、融資などほかの資金調達手段と比較しながら、自社の状況に応じて適切に活用することが求められます。

※本記事は一般的な解説です。投資契約の内容や資金調達の方法は、弁護士・税理士などの専門家にご確認ください。


よくある質問(FAQ)

キャピタルコール方式について、よく寄せられる質問に結論から回答します。

Q. キャピタルコール方式とは何ですか?

ファンドが投資家から出資の約束(出資約束金額)を受けておき、投資案件や費用が発生したときに、その範囲内で出資を請求して払い込んでもらう仕組みです。

Q. 中小企業がキャピタルコール方式で資金調達できますか?

そのままの形ではできません。株式会社が株式を発行する場合、引受人は払込期日までに全額を払い込む必要があるためです(会社法208条)。近い方法として、目標達成ごとに新たに株式を発行する段階的出資があります。

Q. キャピタルコールの請求はいつ届きますか?

ファンドの契約で定めた期間前までに、書面で通知されるのが一般的です。日数はファンドの契約によって異なります。

Q. 投資家がキャピタルコールに応じないとどうなりますか?

デフォルトとして扱われます。経済産業省のモデル契約では、遅延利息、損害賠償、議決権の停止、分配の没収・減額などの措置が定められています。

Q. ファンドから出資を受ける企業は何に注意すべきですか?

投資決定から着金までの期間を資金繰りに織り込むこと、段階的出資の場合は目標の定義と未達時の扱いを確認すること、ファンドの残りの投資期間を確認することが大切です。

出典・参考

本記事の主な出典と、2026年10月30日の更新時に確認した資料は次のとおりです。

経営の悩み、30分で整理しませんか? 30分無料相談 ― 組織づくり・人材育成・経営改善・新規事業のご相談を受け付けています

「自社の場合はどうすればいい?」と感じた経営者の方へ

記事の内容を貴社の状況に当てはめると、何から手をつけるべきか。初回面談(無料)で一緒に整理します。経営顧問・人事評価制度・研修・補助金/資金調達まで、まとめてご相談いただけます。

お電話でも受け付けています:06-6105-5870(平日10:00〜18:00)

Copyright© 株式会社RAD , 2026 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.