【2026年最新】社員寮・社宅が30年ぶりに増加|人手不足時代の「人への投資」が変わっている

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はじめに

「社員寮」「社宅」と聞くと、少し古い人事制度をイメージする経営者も多いのではないでしょうか。

かつての日本企業では、社員寮や社宅は珍しいものではありませんでした。

しかし、バブル崩壊後、多くの企業が保有資産を圧縮し、社員寮や社宅を縮小・廃止してきました。

ところが今、その流れが変わり始めています。

総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、企業や官公庁が所有する寮・社宅などの「給与住宅」は、1993年の205万1千戸をピークに減少してきましたが、2023年には130万2千戸となり、2018年の110万0千戸から増加に転じました。

つまり、約30年ぶりに「給与住宅」が増加したことになります。

これは単なる「昔の福利厚生の復活」なのでしょうか。

実は、現在の社員寮・社宅には、かつてとは違う役割が期待されています。

そのキーワードが、

「人への投資」

です。


結論|社員寮・社宅は「福利厚生」から「人材戦略」へ

今回の動きを一言で表現するなら、

社員寮・社宅が「福利厚生」から「採用・定着・育成のための人的資本投資」へ変わっている

ということです。

背景には、大きく4つあります。

  1. 深刻な人手不足
  2. 若手社員の住宅費負担
  3. 新入社員の孤立・早期離職
  4. 給与だけでは差別化しにくい採用競争

特に重要なのは、単に「安い住宅を提供する」という発想ではありません。

現在の社員寮では、

  • ラウンジ
  • キッチン
  • 大浴場
  • ジム
  • ワークスペース
  • イベントスペース
  • 異業種交流

などを組み合わせ、「人がつながる場所」として設計する事例も登場しています。

つまり、

住まい+コミュニティ+成長機会

という新しい福利厚生になりつつあります。


30年ぶりに増加した「給与住宅」

総務省の住宅・土地統計調査を見ると、「給与住宅」は1993年に205万1千戸ありました。

その後、

  • 1998年:172万9千戸
  • 2003年:148万6千戸
  • 2008年:139万8千戸
  • 2013年:112万2千戸
  • 2018年:110万0千戸
  • 2023年:130万2千戸

と推移しています。

1993年と比べれば、まだ大幅に少ない水準です。

しかし、2018年から2023年にかけては増加しています。

この変化を生んだ背景の一つが、人材不足です。

かつては、

「人材を採用する」

ことが中心でした。

しかし現在は、

「採用した人に長く働いてもらう」

「働きながら成長してもらう」

「生活面まで含めて会社への安心感を高める」

ことまで考えなければなりません。


「昔の社員寮」と「今の社員寮」は何が違うのか

昔の社員寮は、どちらかというと、

会社が社員に住む場所を安く提供する

という役割が中心でした。

一方、現在の社員寮では、

「そこでどのような経験をしてもらうか」

まで考えられています。

例えば、読売新聞が紹介した住友電気工業の社員寮では、約2億円を投じて増設。

個室だけでなく、若手社員同士が自然に交流できるラウンジなどを整備しています。

会社側も寮を「社員の交流と成長を促す重要拠点」と位置づけています。

これは、従来型の「安い住まい」とは明らかに発想が違います。


「家賃補助」ではなく「生活そのもの」を支援する

社員の生活コストが上昇する中で、住宅支援の意味も大きくなっています。

総務省の調査では、2023年の給与住宅の平均月額家賃は37,993円で、2018年から11.6%上昇しています。

一方、会社が社員に社宅・寮を貸与する場合、一定の条件を満たしていれば、現金の住宅手当とは異なる税務上の取り扱いがあります。

国税庁によると、使用人から一定額の家賃を受け取っている場合、社宅・寮の貸与による経済的利益が給与として課税されない場合があります。

一方、現金で支給する住宅手当は原則として給与所得となります。

つまり、制度設計次第では、

「会社のコスト」だけではなく、社員の実質的な生活支援

として機能する可能性があります。

ただし、税務上の取り扱いには条件があります。

「社宅なら何でも非課税」と考えるのは危険です。


大企業だけではない。中小企業にも選択肢が広がっている

今回の動きで重要なのは、

「社員寮=大企業が自社で建設するもの」ではなくなっている

ことです。

人事院の2024年民間企業勤務条件制度等調査では、社宅がある企業は42.6%。

社宅がある企業のうち、借上げ社宅を利用している企業は79.7%でした。

つまり現在は、

  • 自社保有
  • 借上げ社宅
  • 民間の社員寮サービス
  • シェア型社員寮
  • 地域の住宅との連携

など、複数の方法があります。

中小企業にとって、ここは重要なポイントです。

「うちは社員寮を建てるほどの会社ではない」

と考える必要はありません。


外部サービスを利用する企業も増えている

例えば、共立メンテナンスは社員寮「ドーミー」を展開しています。

同社によると、2026年3月末時点で学生寮・社員寮を536棟展開し、社員寮「ドーミー」は企業が建物を所有せず、必要な場所・期間・居室数を利用できる仕組みを提供しています。

これは中小企業にとって非常に重要な発想です。

自社で、

「土地を買う」

「建物を建てる」

「管理する」

必要がなくても、

「社員の住まいを会社が用意する」

ことは可能だからです。


さらに面白いのが「シェア型社員寮」

今回の2本目の記事で紹介された「月島荘」は、その象徴的な事例です。

乾汽船が運営する月島荘は、東京都中央区月島にあるシェア型企業寮。

総戸数は644室です。

特徴は、単に企業が社員の住居を確保するだけではありません。

複数企業の社員が同じ場所で生活し、

  • 異業種交流
  • イベント
  • スポーツ活動
  • 企業紹介
  • 自主的なコミュニティ活動

などが行われています。

記事では、約40社が法人契約し、業種・職種・国籍・年代の異なるビジネスパーソンが暮らす「ビジネス界のトキワ荘」というコンセプトが紹介されています。

これは従来型の社員寮とは大きく異なります。

社員寮そのものが「人材育成環境」になっているのです。


なぜ今「つながり」が重要なのか

ここには、若手社員の働き方の変化があります。

マイナビが2026年卒の新入社員800人を対象に実施した調査では、約5人に1人が「職場で孤独を感じる」と回答しています。

また、孤独を感じている新入社員の4割超は、現在の職場での勤続意向が「3年以内」と回答しています。

もちろん、社員寮に住めば離職が防げるという単純な話ではありません。

しかし、

「会社に入った後、誰ともつながれない」

という問題に対して、

「自然に人と出会える場所」

を用意することには一定の意味があります。

ここが、現在の社員寮が注目されている理由の一つです。


人材不足対策として考えると「住宅」は強い

人材不足対策というと、多くの企業は、

  • 給与アップ
  • 採用広告
  • 福利厚生
  • 教育制度
  • キャリア制度

を考えます。

しかし、これらを単独で比較するだけではなく、

「社員が実際に毎月いくら使っているのか」

という視点も重要です。

例えば、給与を3万円増やすことと、会社が住宅費の負担を大きく軽減することでは、社員が感じる価値が違う場合があります。

特に、

  • 地方から都市部へ採用する
  • 新卒社員を採用する
  • 外国人材を採用する
  • 若手人材を採用する
  • 工場・店舗・介護施設など勤務地が限定される
  • 人口減少地域で採用する

といった企業では、住宅支援との相性が良い可能性があります。


自治体も「社宅」を地域政策として活用している

この動きは企業だけではありません。

例えば北九州市では、市外から転入する従業員のための社宅を新設する企業などを対象に、社宅建設を支援する制度があります。

2026年度の制度では、新築で1棟20戸以上の共同住宅等を対象に、1戸あたり50万円、単身向けは15万円、1企業あたり年100戸を上限としています。

これは、

企業の人材確保

と

地域への人口流入

を同時に狙う政策です。

つまり、社宅は企業の人事制度だけではなく、地域政策とも接続し始めています。


中小企業がそのまま真似する必要はない

ここは重要です。

社員寮が増えているからといって、

「自社も寮を建設しよう」

と短絡的に考える必要はありません。

むしろ重要なのは、

「自社の採用課題に対して、住宅支援が効くのか」

を考えることです。

例えば、

ケース1|若手採用に苦戦している

→ 借上げ社宅を用意する

ケース2|地方から採用したい

→ 入社時の住居探しを会社が支援する

ケース3|外国人材を採用している

→ 生活立ち上げ支援まで含めて住宅を提供する

ケース4|離職率が高い

→ 住宅だけではなく、同期・先輩との交流機会も設計する

ケース5|地方で採用競争が激しい

→ 自治体の社宅支援制度と組み合わせる

というように、目的から逆算する必要があります。


「寮を作る」より「人材戦略を設計する」

今回のニュースから経営者が学ぶべきなのは、

社員寮を作ることではありません。

本質は、

「人材を採用し、定着させ、育てるために、会社はどこまで生活環境へ投資するのか」

という問いです。

例えば、

採用
↓
住宅支援
↓
生活の安心
↓
同期・先輩とのつながり
↓
会社への適応
↓
育成
↓
定着

という一連の流れを設計できます。

社員寮を「福利厚生費」とだけ見ると、コストに見えます。

しかし、

採用コスト・離職コスト・育成コストまで含めて考えると、見え方が変わる可能性があります。


ただし「寮を作れば定着する」は危険

ここには注意点もあります。

社員寮を用意しただけで、

「社員が辞めなくなる」

「コミュニケーションが活発になる」

「採用が成功する」

とは限りません。

むしろ、今回の月島荘の記事が示している重要なポイントは、

交流を強制しないこと

です。

人によっては、一人の時間を大切にしたい人もいます。

そのため、

「全員参加の交流会」

「強制的な共同生活」

ではなく、

個室でプライバシーを確保しながら、希望すれば自然に人とつながれる

という設計が重要になります。


中小企業が検討すべき「新しい社員寮」の5つの形

最後に、中小企業が現実的に検討できる形を整理します。

1.借上げ社宅型

会社が民間賃貸住宅を借り上げ、社員に提供する方法。

最も導入しやすい選択肢の一つです。

2.社員寮サービス利用型

社員寮運営会社の施設を利用する方法。

自社で建物を持たずに住宅支援を始められます。

3.シェア型社員寮

他社社員とも交流できる住環境を利用する方法。

若手人材の交流や刺激という価値を付加できます。

4.地域連携型

自治体の社宅支援・移住支援制度などと組み合わせる方法。

採用だけでなく地域への定住にもつながる可能性があります。

5.「住む+育つ」型

住宅だけではなく、

  • メンター制度
  • 勉強会
  • キャリア面談
  • 社内交流
  • 異業種交流
  • 自主活動

などと組み合わせる方法です。

これはまさに、

「住居を人材育成インフラに変える」

という考え方です。


経営者が今確認したい5つの質問

社員寮を検討する前に、まず次の5つを確認してください。

① 採用できない理由は「給与」だけなのか?

住宅費や生活立ち上げの負担が障壁になっていないか。

② どの人材に住宅支援が効くのか?

新卒、若手、地方出身者、外国人材、転職者など、対象を明確にする。

③ 自社保有する必要があるのか?

借上げや外部サービスという選択肢も比較する。

④ 住宅を「採用」だけで終わらせないか?

定着・育成・コミュニケーションまで設計する。

⑤ 投資対効果をどう測るのか?

採用人数だけではなく、

  • 応募数
  • 内定承諾率
  • 採用単価
  • 入社後6か月定着率
  • 1年定着率
  • 若手社員の満足度
  • 管理職とのコミュニケーション

などを確認する。


まとめ|「昔の制度」が新しい人材戦略になる

社員寮・社宅は、一度は時代遅れの制度として縮小しました。

しかし今、人材不足というまったく違う環境の中で、再び注目されています。

ただし、昔と同じ形ではありません。

昔は、

「安く住める場所」

でした。

今は、

「安心して働き、つながり、成長するための場所」

へ変わりつつあります。

つまり、

昔の制度が、そのまま復活しているのではありません。

時代に合わせて意味を変え、

「人的資本投資」として再設計されている

のです。

人材不足が続く中で、給与を上げることだけが人材戦略ではありません。

社員の生活コストを下げる。

安心して働ける環境を作る。

人とのつながりを作る。

成長できる環境を作る。

こうした「生活まで含めた人材戦略」が、これからの中小企業にとって一つの選択肢になっていくかもしれません。

特に中小企業の場合、自社で寮を建設する必要はありません。

借上げ社宅、社員寮サービス、シェア型社員寮、自治体制度などを組み合わせる。

「社員寮」という古い言葉の中に、実は新しい人材戦略のヒントが隠れています。


出典

  • 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」
  • 人事院「令和6年民間企業の勤務条件制度等調査」
  • 国税庁「使用人に社宅や寮などを貸したとき」
  • 読売新聞オンライン「社員寮・社宅30年ぶり増、『社員の手取りアップも期待』」2026年9月23日
  • 日本の人事部「社員寮は福利厚生から『人的資本投資』の時代へ」2026年9月16日
  • 共立メンテナンス「寮事業」
  • 乾汽船「月島荘」
  • 北九州市「住むなら北九州」
  • マイナビ「新入社員の孤独感に関する実態調査」

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