【自販機ビジネス崩壊?】ダイドー2万台撤去・コカコーラ減損…日本の自動販売機ビジネスに何が起きているのか

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この記事の要点

  • ダイドーグループホールディングスは2026年1月期に303億円の最終赤字(過去最大)となり、自販機事業で298億円の減損損失を計上して、不採算の自販機約2万台の撤去を決めました。
  • コカ・コーラ ボトラーズジャパン(BJH)は自販機事業で約881億円の減損損失を計上して2025年12月期に507億円の最終赤字となり、伊藤園も自販機事業で減損損失を計上しました。
  • 背景には、コンビニやスーパーへの購買の移行、価格面の不利、補充や売上金の回収など人手に頼る運営コストの上昇があります。
  • 各社は不採算機の撤去、データを使った効率化、商品構成の見直しを進めており、自販機は台数を増やす「量」から、収益性の高い場所に絞る「質」のビジネスへ変わりつつあります。
  • 公開後、ダイドーとコカ・コーラBJHは2026年の中間決算で黒字に戻りました。中小企業も、これまで儲かってきたモデルを前提にせず、拠点や取引ごとの採算を見直すことが重要です。

【追記】公開後の主な動き(2026年10月29日時点)

記事公開(2026年3月8日)後、ダイドーは不採算の自販機の引き上げを進め、2026年8月の中間決算で黒字に戻りました。コカ・コーラBJHも中間期は黒字で、伊藤園は自販機事業をグループ会社に移しています。

時期出来事
2026年1月27日伊藤園が自販機事業に関わる固定資産の減損損失(135億9,400万円)を計上し、2026年4月期の純利益予想を160億円から10億円に引き下げ(coki)
2026年3月4日ダイドーGHDが2026年1月期の最終損益303億円の赤字を発表。今期中に不採算の自販機約2万台を引き上げる方針(日本食糧新聞、日本食糧新聞)
2026年3月伊藤園が自販機事業をグループ会社(伊藤園ネオス)に承継(Forbes JAPAN、伊藤園)
2026年6月伊藤園の2026年4月期決算は連結純利益34億円(前期比75.5%減)。自販機事業は2029年4月期の黒字化を目指す(伊藤園 決算説明会資料)
2026年7月30日コカ・コーラBJHの2026年12月期中間決算は、中間利益48億円(前年同期は658億円の赤字)(決算短信)
2026年8月27日ダイドーGHDの2027年1月期中間決算は、中間純利益28億円(前年同期は13億円の赤字)。国内飲料事業は自販機の引き上げなどで減収、販売手数料の適正化などで増益(決算短信、日本食糧新聞)
自販機ビジネスをめぐる公開後の主な動き(各社の開示・報道をもとに作成)

日本の象徴「自動販売機ビジネス」に起きている異変

日本の自販機ビジネスは、大手飲料メーカーが相次いで巨額の減損損失や大規模な撤去に踏み切る、大きな転換点を迎えています。

日本といえば「自動販売機大国」と言われるほど、自販機が街の至るところに設置されています。
実際、日本の自販機の設置台数は約388万台(2025年12月末)にのぼり、人口当たりの設置数は世界でもトップクラスと言われています。

※日本自動販売システム機械工業会の統計では、2025年12月末の設置台数のうち飲料自販機は約218万台で、全体ではピークだった2013年(約509万台)から減っています(現代ビジネス)。

しかし今、この自販機ビジネスが大きな転換点を迎えています。

飲料業界では最近、次のようなニュースが相次ぎました。

  • ダイドーグループHD:自販機不振で過去最大赤字
  • コカ・コーラボトラーズジャパン:自販機事業で巨額減損
  • 伊藤園:自販機事業で減損損失計上

そして最も象徴的なのが、ダイドーによる約2万台の自販機撤去という決断です。

ダイドーによる自販機の撤去は、単なるコスト削減ではありません。
業界関係者の間では、「自販機ビジネスの構造転換の象徴的な出来事」とも言われています。

では、なぜ今、自販機ビジネスはこれほど厳しい状況にあるのでしょうか。


ダイドーが過去最大の赤字、2万台撤去へ

ダイドーグループHDは2026年1月期に303億円の最終赤字となりました。自販機事業の収益性低下による298億円の減損損失が主な原因で、不採算の自販機の撤去に踏み切りました。

まず、ダイドーグループホールディングスの状況を見てみましょう。

2026年1月期の決算では、最終損益が303億円の赤字となりました。
303億円の赤字は、同社にとって過去最大の赤字です。

303億円の赤字の主な原因は、自販機事業の不振でした。

自販機事業の収益性低下により、同社は298億円の減損損失を計上しています。
その結果、国内飲料事業の営業損益も赤字に転落しました。

自販機事業の不振を受けて同社は、

約2万台の自販機を撤去する

という大規模なリストラを決断しました。

※補足:ダイドーの自販機は約27万台で、撤去対象の約2万台は全体の1割弱にあたります。国内飲料事業の損益は22億円の赤字でした(ビジネス+IT、日本食糧新聞)。

自販機は設置すれば収益が上がるビジネスというイメージがありましたが、今は設置しているだけで赤字になる場所も増えているのです。

※追記:2026年8月の中間決算では、不採算先の自販機の引き上げで国内飲料事業は減収となった一方、販売手数料の適正化や人件費の抑制で増益になりました(日本食糧新聞)。


コカコーラや伊藤園も減損損失

自販機事業の不振はダイドーだけではありません。コカ・コーラBJHは約881億円、伊藤園も自販機事業で多額の減損損失を計上しており、業界全体の構造問題になっています。

自販機事業の不振は、ダイドーだけの問題ではありません。

コカ・コーラボトラーズジャパンも、自販機事業で約881億円の減損損失を計上しました。
その結果、最終損益は507億円の赤字となっています。

※追記:コカ・コーラBJHの減損損失は2025年上半期に計上され、507億円の赤字は2025年12月期の通期の数字です(Forbes JAPAN)。2026年12月期の中間決算では、中間利益48億円と黒字に戻りました(決算短信)。

また伊藤園も、自販機事業で約136億円の減損損失を計上しています。

※補足:伊藤園の減損損失は135億9,400万円で、2026年1月27日に発表されました(coki)。伊藤園の2026年4月期の連結純利益は34億円(前期比75.5%減)でした(伊藤園)。

つまり、自販機ビジネスの苦境は

業界全体の構造問題

と言える状況になっているのです。

会社決算期自販機関連の減損損失最終損益
ダイドーグループHD2026年1月期298億円303億円の赤字
コカ・コーラBJH2025年12月期約881億円(上半期に計上)507億円の赤字
伊藤園2026年4月期約136億円(第3四半期に計上)34億円の黒字(前期比75.5%減)
大手飲料3社の自販機関連の減損損失と最終損益(各社の開示・報道をもとに作成)

減損損失は、資産が将来生み出すお金が帳簿上の価値を下回ったときに、その差額を損失として計上するものです。巨額の減損が経営に与える影響は「ニデックが5,646億円の最終赤字|巨額減損で何が変わったのか、経営者が見るべき「次の争点」」でも解説しています。


自販機ビジネスが苦しくなった3つの理由

自販機ビジネスが苦しくなった主な理由は、購買行動の変化、価格競争の激化、人手に頼る運営コストの上昇の3つです。

では、なぜ自販機ビジネスはここまで厳しくなったのでしょうか。

主な理由は大きく3つあります。

理由内容自販機への影響
①購買行動の変化コンビニで買う行動が定着し、コンビニコーヒーが缶コーヒーの需要を奪った主力商品の販売が減少
②価格競争の激化スーパーや量販店の方が安く、節約志向が強まっている「割高な販売チャネル」というイメージが定着
③労働集約型ビジネスの限界補充・回収・清掃などを人が巡回して行う人件費・物流費・電気代の上昇でコストが悪化
自販機ビジネスが苦しくなった3つの理由(本文の内容を整理)

①購買行動の変化

最も大きな理由は、飲み物を買う場所が自販機からコンビニへ移ったことです。特にコンビニコーヒーの登場で、自販機の主力だった缶コーヒーの需要が大きく減りました。

最も大きいのは、消費者の購買行動の変化です。

以前は

「喉が渇いたら自販機」

という行動が一般的でした。

しかし現在は

コンビニで買う

という行動が定着しています。

さらに大きな影響を与えたのが、コンビニコーヒーです。

缶コーヒーはかつて自販機の主力商品でしたが、コンビニのカウンターコーヒーの登場により大きく需要を奪われました。

コンビニは全国に約5万店舗あり、利便性では自販機を上回る存在となっています。

※補足:日本フランチャイズチェーン協会によると、2025年末のコンビニの店舗数は5万6,054店です(共同通信)。


②価格競争の激化

2つ目の理由は価格です。自販機の飲料はスーパーや量販店より高く、物価高で節約志向が強まる中、消費者がより安い売り場を選ぶようになっています。

2つ目は価格競争です。

現在、自販機の飲料価格は150円前後が一般的です。

一方、スーパーや量販店では

80円〜100円程度

で販売されていることも珍しくありません。

物価高の影響で節約志向が強まる中、消費者はより安い販売チャネルを選ぶ傾向が強まっています。

その結果、

自販機は割高な販売チャネル

というイメージが定着してしまいました。


③労働集約型ビジネスの限界

自販機は「自動」と名が付いていても、補充や売上金の回収などを人が巡回して行う労働集約型のビジネスです。人手不足と人件費・物流費・電気代の上昇が収益を圧迫しています。

3つ目の理由は、自販機ビジネスの構造そのものです。

自動販売機という名前から「自動化されたビジネス」と思われがちですが、実際には非常に労働集約的なビジネスです。

例えば、以下の作業はすべて人間が行っています。

  • 商品の補充
  • 売上金の回収
  • ゴミ箱の清掃
  • メンテナンス
  • 在庫管理

つまり、自販機ビジネスは

人が巡回して初めて成立するビジネス

なのです。

近年は人手不足が深刻化し、人件費も大きく上昇しています。

さらに

  • 原材料価格の高騰
  • 物流費の上昇
  • 電気代の上昇

などが重なり、コスト構造が急激に悪化しました。


業界が進める自販機ビジネス改革

飲料メーカーは、不採算機の撤去、データを使った補充の効率化、商品構成の見直しの3つを中心に、自販機ビジネスの立て直しを進めています。

こうした状況を受け、飲料メーカーは自販機ビジネスの改革を進めています。

主な対策は次の3つです。


①不採算機の撤去

最も直接的な対策は、売上が少ない場所の自販機の撤去です。台数を増やす戦略から、収益が出る場所に絞る戦略への転換が進んでいます。

最も直接的な対策は、不採算自販機の撤去です。

ダイドーは約2万台の撤去を進めています。

今後は「とにかく台数を増やす」時代から、

収益が出る場所に集中する

という戦略に変わっていくと考えられます。


②DXによる効率化

自販機の在庫や売上をリアルタイムで把握し、補充ルートや品ぞろえを最適化することで、人手に頼る運営コストを減らす取り組みが進んでいます。

次に進められているのが、自販機のデジタル化です。

最新の自販機では

  • 在庫状況
  • 売れ筋商品
  • 売上データ

などをリアルタイムで把握できます。

在庫や売上をリアルタイムで把握できることにより、

  • 補充ルートの最適化
  • 売れ筋商品の自動調整

などが可能になり、オペレーションコストを削減できます。


③商品構成の見直し

コーヒー豆の価格高騰などを受けて、自販機の品ぞろえをコーヒー中心から水・お茶・炭酸飲料などへ見直し、データで売れ筋を判断する動きも進んでいます。

商品構成の見直しも進められています。

例えば、コーヒー豆の価格が高騰しているため、コーヒーの比率を下げ、

  • ミネラルウォーター
  • お茶
  • 炭酸飲料

などの比率を増やす動きが見られます。

売れ筋商品をデータ分析で判断することで、販売効率を高める取り組みも進んでいます。


自販機ビジネスは消えるのか?

自販機ビジネスが完全に消えることはないと考えられますが、どこにでもある形ではなく、人通りの多い場所や観光地など収益性の高い場所に集中していくとみられます。

では、自販機ビジネスは今後なくなるのでしょうか。

結論から言えば、

完全に消えることはありません。

ただし、今までのように「どこにでもあるビジネス」ではなくなる可能性は高いでしょう。

今後は

  • 人通りの多い場所
  • 観光地
  • 駅や高速道路

など、収益性の高い場所に集中する形になると考えられます。

つまり、

量のビジネスから質のビジネスへ

と変化していくのです。


自販機ビジネスの変化は日本経済の縮図

自販機ビジネスの苦境は、人手不足・物価高・消費行動の変化という日本経済全体の変化を映しています。中小企業も、これまで儲かってきたモデルが続く前提を見直す必要があります。

今回の自販機ビジネスの問題は、単なる飲料業界の話ではありません。

自販機ビジネスの苦境は、

  • 人手不足
  • 物価高
  • 消費行動の変化

という、日本経済全体の変化を象徴しています。

つまり、自販機ビジネスの苦境は

日本のビジネスモデルの転換

を示しているとも言えるのです。

これからの企業経営では、

「これまで儲かっていたモデルが永遠に続く」

という前提は通用しません。

市場環境が変化すれば、ビジネスモデルそのものを変える必要があります。

今回のダイドーの2万台撤去は、まさにその象徴と言えるでしょう。

中小企業が自販機業界の動きから見直したいポイントは、次のとおりです。

  • 店舗・営業所・取引先ごとの採算を数字で確認し、赤字が続く拠点や取引を放置していないか
  • 補充・配送・巡回など、人手に頼る作業のコストが人件費や物流費の上昇でどれだけ増えているか
  • 顧客が買う場所や価格の比較のしかたが変わり、自社の販売チャネルが割高に見られていないか
  • 売上や在庫のデータを使って、品ぞろえや作業の回り方を見直せていないか

日本の街に当たり前のように存在していた自販機。
その風景も、これから大きく変わっていくのかもしれません。


よくある質問(FAQ)

自販機ビジネスの現状について、よく寄せられる質問に結論から回答します。

Q. ダイドーはなぜ自販機を撤去するのですか?

自販機事業の収益性が下がり、2026年1月期に298億円の減損損失を計上して303億円の最終赤字になったためです。採算の合わない場所の自販機約2万台を引き上げ、収益性の高い場所に集中します。

Q. 自販機ビジネスが苦しくなった理由は何ですか?

コンビニやスーパーへの購買の移行、自販機の価格面の不利、補充や売上金の回収など人手に頼る運営コストの上昇の3つが主な理由です。

Q. 日本の自販機は何台ありますか?

日本自動販売システム機械工業会の統計では、2025年12月末の設置台数は約388万台(うち飲料自販機は約218万台)で、2013年のピーク(約509万台)から減っています。

Q. 自販機ビジネスはなくなるのですか?

完全になくなることはないと考えられます。ただし台数を増やす戦略から、人通りの多い場所や観光地など収益性の高い場所に絞る形へ変わっていくとみられます。

Q. 自販機業界の動きから中小企業が学べることは何ですか?

これまで儲かってきたモデルが続く前提を見直し、拠点や取引ごとの採算、人手に頼る作業のコスト、顧客の買い方の変化を数字で確認することです。

出典・参考

本記事の主な出典と、2026年10月29日の更新時に確認した資料は次のとおりです。

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