Contents
- 1 はじめに|住宅ローンの使い方が、経営リスクになる
- 2 結論|融資の目的と実際の利用方法を一致させることが重要
- 3 1.フラット35の不適正利用が64件判明
- 4 2.フラット35は民泊や店舗の取得に自由に使える融資ではない
- 5 3.民泊への転用だけでなく、店舗・事務所利用も問題になった
- 6 4.発覚するとどうなる?残債務の一括返済請求などのリスク
- 7 5.経営者が見落としやすいのは、資金繰りへの影響
- 8 6.今後は審査と融資後の確認が強化される
- 9 7.経営者が今すぐ確認すべき5つのポイント
- 10 8.民泊・不動産事業を行う経営者が考えるべきこと
- 11 まとめ|融資は「借りられるか」だけでなく「適切に使えるか」が重要
- 12 出典・参考資料
はじめに|住宅ローンの使い方が、経営リスクになる
2026年10月20日、会計検査院の調査により、住宅ローン「フラット35」で、民泊施設や店舗などに利用される不適正な融資が64件確認されたことが明らかになりました。
融資額は合計約30億4,074万円。住宅金融支援機構は、該当する64件について一括返済を求めるなど、厳正に対処したと公表しています。
今回の問題で注目したいのは、住宅ローンの不適正利用が発覚すると、単に金利条件が変わるだけでは済まない可能性があることです。
不動産を民泊や賃貸事業に活用しようと考えている経営者にとって、融資契約と実際の物件利用が一致しているかどうかは、資金繰りや事業継続にも関わる重要な問題です。
この記事では、会計検査院と住宅金融支援機構の公表内容をもとに、今回の事実、想定されるリスク、経営者が確認すべきポイントを整理します。
結論|融資の目的と実際の利用方法を一致させることが重要
今回のニュースから押さえておきたいポイントは、次の5つです。
- 会計検査院の調査で、フラット35の不適正利用64件が判明した
- 内訳は民泊・旅館業施設が25件、店舗・事務所等が39件
- 64件の融資額は合計約30億4,074万円
- 住宅金融支援機構は、該当案件に一括返済を求めるなどの対応を実施した
- 今後は融資時の審査と、融資後の物件利用状況の確認が強化される方針
特に重要なのは、「住宅ローンを組めたこと」と「その物件をどのように使ってもよいこと」は別だという点です。
不動産を取得する際には、物件の収益性だけでなく、利用目的に合った融資を選び、契約上の条件を守れるかどうかまで確認する必要があります。
1.フラット35の不適正利用が64件判明
2026年10月20日、会計検査院は、住宅金融支援機構が関係するフラット35の融資審査等について、改善を求める処置要求・意見表示を行いました。
住宅金融支援機構の公表によると、2023年度・2024年度に融資実行されたフラット35の買取債権54,221件のうち、64件で居住に関する要件に適合しない利用が確認されました。
| 不適正利用の内容 | 件数 |
|---|---|
| 民泊・旅館業施設等への利用 | 25件 |
| 店舗・事務所等への利用 | 39件 |
| 合計 | 64件 |
64件の融資額は、合計約30億4,074万円です。
なお、報道では、都市部の戸建て住宅10,925件を抽出調査し、不適正利用が疑われた135件を詳細確認した結果、64件が判明したとされています。
この数字は、検査の対象や抽出方法を踏まえて読む必要があります。64件という結果だけで、フラット35全体の不適正利用の実態すべてが分かったわけではありません。
2.フラット35は民泊や店舗の取得に自由に使える融資ではない
フラット35は、住宅金融支援機構と取扱金融機関が関係する、長期固定金利型の住宅ローンです。
利用目的は、自ら居住する住宅の取得に限定されています。
住宅金融支援機構の公式注意喚起では、次のような利用を認めていません。
- 自ら居住するつもりがなく、投資目的で住宅を取得する
- 融資住宅に自ら居住せず、事務所や店舗として利用する
- 住宅取得費以外の費用を上乗せして申し込む
- 消費者ローンなどの返済資金を上乗せして申し込む
つまり、物件が住宅として建築されていることだけでは、フラット35を利用できるとは限りません。
融資の申込目的、契約条件、実際の利用方法が整合していることが重要です。
3.民泊への転用だけでなく、店舗・事務所利用も問題になった
今回の64件のうち、民泊などへの利用は25件、店舗・事務所等への利用は39件でした。
報道では、店舗や事務所を住宅と兼用しているケースも取り上げられています。店舗等として使用する部分は、住宅としての融資対象から外れる場合があります。
ここで注意したいのは、住宅の一部を事業に使う場合の扱いを、すべて一律に判断できるわけではないという点です。
物件の間取り、利用面積、居住実態、契約内容などによって確認すべき事項が変わります。
「自分も住んでいるから問題ない」「一部だけなら大丈夫だろう」と自己判断するのではなく、事業利用を始める前に取扱金融機関や住宅金融支援機構に確認することが重要です。
4.発覚するとどうなる?残債務の一括返済請求などのリスク
今回、住宅金融支援機構は、該当する64件について一括返済を求めるなどの対応を既に実施したと公表しました。
住宅金融支援機構の公式注意喚起でも、不適正利用が判明した場合の対応として、残債務の一括返済請求が明示されています。
さらに、事案に応じて、次のような対応が取られる可能性があります。
- 不適正利用が判明した融資の残債務の一括返済請求
- 警察への通報
- 関係事業者の監督官庁への通報
- 虚偽の住民票届出に関する自治体への通報
- 損害賠償請求
- 不適正利用に関与した取扱金融機関への処分
ただし、これらすべてが個々の事案で必ず実施されるという意味ではありません。実際の対応は、契約内容や事実関係などによって異なります。
また、公式資料では、虚偽の内容で融資を受けることについて、詐欺罪に該当し得ると注意喚起しています。単なる契約違反と刑事責任の有無は区別して考える必要があります。
5.経営者が見落としやすいのは、資金繰りへの影響
不動産を民泊や賃貸事業に活用する場合、経営者は家賃収入、稼働率、修繕費、管理費、借入返済額などをもとに収支計画を立てます。
しかし、融資の利用条件に適合していなければ、想定した収益計画そのものが成り立たなくなる可能性があります。
例えば、収益物件の借入残高が多く、物件の収入を返済原資としている場合、残債務の一括返済を求められれば、短期間で多額の資金を用意しなければならない可能性があります。
その結果、手元資金の減少、他の借入返済への影響、追加融資の必要性など、経営全体に影響が及ぶことも考えられます。
これは今回の64件すべてで発生したと確認された事実ではありません。しかし、経営者が融資契約を確認する際に想定しておくべきリスクです。
6.今後は審査と融資後の確認が強化される
住宅金融支援機構は今回の検査結果を踏まえ、次の対応を公表しました。
- フラット35は、自ら居住することを前提としない民泊施設や店舗等の取得には利用できない旨を、説明資料に明示する
- 物件の間取り図を確認するなど、居住に関する審査を強化する
- 融資後の住宅の利用状況に関する調査を一層強化する
- 不適正利用が判明した場合は厳正に対処する
この方針から、今後は融資を受ける時点だけでなく、融資を受けた後の物件利用についても、これまで以上に注意が必要になると考えられます。
民泊への転用、店舗の併設、事務所利用、賃貸への切り替えなどを検討している場合は、実施前に融資条件を確認することが重要です。
7.経営者が今すぐ確認すべき5つのポイント
不動産を所有している、または取得を検討している経営者は、次の項目を確認しましょう。
① 融資契約上の利用目的
住宅ローン、事業用融資、不動産投資向け融資など、どの融資を利用しているかを確認します。
② 実際の物件利用状況
自宅、賃貸住宅、民泊、店舗、事務所など、実際の利用方法が契約内容と一致しているか確認します。
③ 申込時の説明内容
融資申込書や契約書に記載した居住予定、物件の利用方法、事業計画などに、実態と異なる点がないか確認します。
④ 事業利用への変更予定
今後、民泊への転用、店舗の併設、賃貸への切り替えなどを予定している場合は、変更前に取扱金融機関へ相談します。
⑤ 万が一の場合の資金繰り
借入残高、手元資金、毎月の返済額、他の借入返済などを把握し、資金繰りへの影響を確認します。
すでに契約内容と実際の利用状況に違いがある場合は、自己判断で隠したり放置したりせず、契約書を確認したうえで、取扱金融機関や必要に応じて弁護士などの専門家に相談しましょう。
8.民泊・不動産事業を行う経営者が考えるべきこと
民泊や賃貸事業そのものが問題なのではありません。
重要なのは、事業の目的に合った資金調達方法を選び、融資条件を守りながら運営することです。
住宅取得を目的としたローンと、収益を生む事業用不動産の資金調達では、前提となる利用目的が異なります。
不動産投資では、物件価格や利回りだけでなく、資金調達の条件、運営費用、税金、修繕費、空室リスク、返済計画まで含めて判断する必要があります。
目先の低い金利や借りやすさだけを優先して融資を選ぶと、契約条件と事業計画が合わなくなるおそれがあります。
まとめ|融資は「借りられるか」だけでなく「適切に使えるか」が重要
今回のフラット35の不適正利用64件の問題は、住宅ローンの利用目的と実際の物件利用を一致させることの重要性を示しています。
特に、民泊や店舗、事務所などに不動産を活用する場合は、利用目的に合った融資を選び、契約条件を確認することが欠かせません。
経営者が確認すべきなのは、次の3点です。
- 融資契約と物件の利用方法が一致しているか
- 事業利用への変更に、金融機関への相談や承認が必要ではないか
- 万が一、返済条件に問題が生じた場合に資金繰りを維持できるか
融資は、事業を成長させるための重要な手段です。だからこそ、借入時の条件を理解し、適切に利用することが、長期的な経営の安定につながります。
出典・参考資料
- 会計検査院「証券化支援事業におけるフラット35の債権に係る融資審査等について」(2026年10月20日)
- 住宅金融支援機構「会計検査院の検査結果に係る住宅金融支援機構の対応について」(2026年10月20日)
- 住宅金融支援機構「【フラット35】の不適正利用に巻き込まれないために」
- 毎日新聞「フラット35で不適正利用、全国で計64件 店舗使用など 検査院」(2026年10月20日)