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日本政策金融公庫「取引企業倒産対応資金」は今回最も重要な制度の一つ
前編で紹介した「経営環境変化対応資金」と並び、今回の全東信問題で直接影響を受けた企業が最優先で検討したい制度が、日本政策金融公庫の「取引企業倒産対応資金(セーフティネット貸付)」です。
この制度は、取引先企業の倒産によって資金繰りに支障が生じた事業者を対象とした、専用の融資制度です。
利用できる主なケース
日本政策金融公庫では、次のいずれかに該当する事業者を対象としています。
- 倒産企業に対して50万円以上の売掛金債権等を有する
- 倒産企業への取引依存度が20%以上
- 倒産企業へ貸付金や保証金などの債権を有する
- 倒産企業の債務を保証している
- 倒産企業の施設へ入居し影響を受けている
- 倒産により受注予定案件が取り消された
つまり、売掛金が回収できないケースだけではなく、倒産によって営業活動へ影響が出た事業者まで幅広く対象となっています。
引用
日本政策金融公庫「取引企業倒産対応資金(国民生活事業・中小企業事業)」
融資条件
国民生活事業
- 融資限度額:別枠3,000万円
中小企業事業
- 融資限度額:1億5,000万円
返済期間
- 10年以内
据置期間
- 最大3年
この制度は、「取引先倒産」という明確な理由があることから、今回の全東信問題では最も利用しやすい制度の一つと考えられます。
セーフティネット保証1号はいよいよ実用段階へ
今回の続報で大きく前進したのが、**セーフティネット保証1号(連鎖倒産防止)**です。
経済産業省は、全東信を対象企業として指定する手続きを進めるとともに、信用保証協会では正式指定に先立ち、事前相談を開始しました。
これは、「制度が利用できるか分からないから待つ」のではなく、「今のうちから相談を始めてほしい」というメッセージでもあります。
セーフティネット保証1号の特徴
一般保証とは別枠で、
融資額100%を信用保証協会が保証
します。
主な内容は次のとおりです。
- 保証割合:100%
- 一般保証とは別枠
- 無担保8,000万円
- 普通保証2億円
- 原則として第三者保証人不要
引用
経済産業省「参考資料3 セーフティネット保証1号概要」
京都信用金庫は「専用融資」まで創設
政府だけではありません。
今回特に踏み込んだ対応を行ったのが京都信用金庫です。
京都信用金庫では、
- 全店舗に相談窓口を設置
- 全東信影響企業専用融資を新設
- 決済代行会社の切替支援
まで実施しています。
専用融資の概要
対象
全東信破産の影響を受けた企業・個人事業主
融資限度額
最大1億円
融資期間
5年以内
受付
2026年12月30日まで
緊急案件は迅速審査となっています。
さらに、
決済端末が利用できなくなった企業へは、
提携する別の決済代行会社の紹介まで行っています。
これは単なる融資ではなく、
「営業を止めない支援」
と言えるでしょう。
京都信用金庫が把握した被害状況
京都信用金庫によると、
全東信を利用していた取引先は169社。
その内訳は
- 飲食店:約70%
- 美容関係:約10%超
- 雑貨小売など
となっています。
これは、キャッシュレス決済への依存度が高い業種ほど影響を受けていることを示しています。
引用
京都信用金庫ニュースリリース
日本経済新聞
読売新聞オンライン
伊予銀行・愛媛銀行も相談窓口を設置
四国でも地域金融機関が動いています。
伊予銀行・愛媛銀行では、
全営業店で相談窓口を開設しました。
相談内容は、
- 資金繰り
- 入金遅延
- 返済条件変更
- 電話相談
などです。
現時点では専用融資制度までは発表されていませんが、
「まず相談してください」
という姿勢を打ち出しています。
引用
日本経済新聞(2026年7月9日)
支援制度はどの順番で活用すべきか
認定経営革新等支援機関として、私がおすすめする優先順位は次のとおりです。
STEP1 未入金額を確認する
まずは、
- 未回収売掛金
- 入金予定日
- 今後の入金予定
を整理してください。
STEP2 資金繰り表を作成する
最低でも3か月先まで、
- 現金残高
- 支払予定
- 借入返済
を一覧化しましょう。
STEP3 メインバンクへ相談する
金融機関は、
相談が早い会社ほど支援しやすくなります。
STEP4 日本政策金融公庫へ相談する
状況に応じて、
- 経営環境変化対応資金
- 取引企業倒産対応資金
のどちらが適切か相談します。
STEP5 信用保証協会へ相談する
セーフティネット保証1号の対象となる場合は、
事前相談を進めましょう。
STEP6 認定経営革新等支援機関を活用する
事業計画や資金繰り表の作成、金融機関との調整など、制度を組み合わせた支援を受けることで、より適切な資金調達につながります。
認定経営革新等支援機関として伝えたいこと
今回の全東信問題では、
政府
日本政策金融公庫
信用保証協会
地方銀行
信用金庫
が、これまでにないスピードで支援策を打ち出しています。
これは裏を返せば、
「連鎖倒産を防がなければならない」
という強い危機感の表れでもあります。
一方で、どれだけ制度が整っても、
相談しなければ制度は利用できません。
資金が底をついてからでは、
融資審査や保証手続きに必要な時間を確保できず、選択肢が限られるケースもあります。
だからこそ、
「まだ大丈夫」ではなく、「今相談する」
という姿勢が重要です。
今後想定される追加支援
現時点でも支援策は充実していますが、
今後は
- 他の地方銀行・信用金庫による専用融資
- 自治体独自の利子補給制度
- 商工団体による追加支援
などが発表される可能性があります。
最新情報は、経済産業省、中小企業庁、日本政策金融公庫、信用保証協会、取引金融機関の公式発表を継続的に確認することをおすすめします。
まとめ
全東信破産への支援は、当初の相談窓口設置から大きく進展し、
- セーフティネット貸付(経営環境変化対応資金)の要件緩和
- 取引企業倒産対応資金の活用
- セーフティネット保証1号の事前相談開始
- 京都信用金庫の最大1億円専用融資
- 伊予銀行・愛媛銀行など地域金融機関の相談体制
- 返済条件変更への柔軟対応
と、政府・公的金融機関・地域金融機関が一体となった支援体制が整いつつあります。
今回の一連の支援策は、「資金が尽きた企業を救う制度」ではなく、**「資金が尽きる前に相談した企業を支える制度」**です。
少しでも影響を受けている、あるいは今後影響を受ける可能性がある事業者は、早めに相談し、自社に合った制度を組み合わせて活用することが、事業継続への最も重要な一歩となるでしょう。