競売の特別売却とは、期間入札で入札がなかった不動産を、買受可能価額(通常は売却基準価額の8割)以上の金額で、先着順に買い受けられる制度です。入札の競争はありませんが、買受申出保証の提出や裁判所の売却許可決定、代金納付が必要で、物件の調査も欠かせません。
1. はじめに
不動産競売には「入札方式」と「特別売却方式」の2つの売却方法があります。
特に「特別売却」は、競売に参加したいが入札手続きが煩雑だと感じる人にとって魅力的な選択肢です。
本記事では、
✅ 特別売却の仕組み
✅ 入札方式との違い
✅ 特別売却のメリット・デメリット
✅ 投資家・企業経営者が知っておくべき活用ポイント
について詳しく解説していきます!
この記事の要点
- 特別売却は、期間入札で入札がなかった物件について、原則として開札期日の翌日から実施されます。
- 買受可能価額(通常は売却基準価額の8割)以上で申し出ることができ、受付は先着順です。後から申し出た人は、前の人より高い金額でも買い受けられません。
- 申出には、買受申出書、買受申出保証、住民票や法人の登記事項証明書などが必要です。
- 申出からおおむね2週間後に売却決定があり、許可決定の確定後、約30日以内の期限までに残代金を納付します。
- 競売物件には種類・品質の不適合についての担保責任がないため、3点セットの確認や現地調査が欠かせません。
2. 競売の特別売却とは?
特別売却とは、期間入札で入札がなかった物件を、買受可能価額以上の金額で、先着順に買い受けられる競売の売却方法です。
2-1. 特別売却の定義
「特別売却」とは、期間入札で入札がなかった不動産を、先着順で購入できる制度です。
通常の競売(入札方式)では、最も高い金額を提示した人が落札しますが、
特別売却では、買受可能価額(通常は売却基準価額の8割)以上の金額で、先着順に買受けの申出を受け付けます。最初に適法な申出をした人が優先され、後から申し出た人は、前の人より高い金額でも買い受けることはできません。
特別売却のポイント
- 入札不要!先着順で購入可能
- 買受可能価額以上であれば申出額は自分で決められるが、先着順のため、通常は買受可能価額で申し出る(価格交渉の手続きはない)
- 期間入札で入札がなかった物件が対象
- 裁判所の監督のもと、安全に取引できる
3. 特別売却の流れ
特別売却は、期間入札で入札がなかった物件について開札期日の翌日から実施され、先着順の申出、売却決定、代金納付の順に進みます。
競売の特別売却は、以下の流れで進められます。
3-1. 競売入札の終了
通常の競売では、複数の入札者が価格を提示し、最も高額な入札者が落札します。
しかし、期間入札で入札が行われなかった場合は、その物件が売れ残り、特別売却の対象になります。
※落札者(買受人)が代金を納付しなかった場合は、次順位買受申出人への売却や再度の入札などが行われ、特別売却とは別の手続きになります。
3-2. 特別売却の公告
特別売却の実施期間は、BIT(不動産競売物件情報サイト)や新聞などの裁判所の広告に掲載され、原則として開札期日の翌日から実施されます。
対象となる物件は、BITなどで確認できます。
3-3. 先着順で購入申し込み
特別売却では、通常の入札とは異なり、
✅ 先着順で購入申し込みを行うことが可能!
✅ 買受可能価額以上で申し出る。申出には買受申出保証の提出が必要!
このため、入札の競争がなく、買受可能価額で購入できる可能性があるのが特徴です。
※補足:東京地方裁判所では、特別売却物件買受申込書、買受申出保証(現金または裁判所専用の振込用紙による振込)、資格証明書(個人は住民票、法人は代表者の資格証明書。発行後3か月以内)を執行官室に提出します。手続きの細かな運用は裁判所ごとに異なるため、管轄裁判所の執行官室に確認しましょう(東京地方裁判所)。
3-4. 売却決定・代金納付
申し込みが受理されると、
✅ 申出からおおむね2週間後に、裁判所が売却の許可・不許可を決定
✅ 許可決定が確定してから約30日以内の期限までに残代金を納付し、所有権移転登記は裁判所書記官が行う
という流れになります。
| 手続き | 時期の目安 |
|---|---|
| 特別売却の開始 | 原則として開札期日の翌日から |
| 売却決定(許可・不許可) | 買受け申出のおおむね2週間後 |
| 許可決定の確定 | 言渡しの翌日から1週間、不服申立てがない場合 |
| 残代金の納付期限 | 確定からおおむね30日程度 |
| 所有権移転登記 | 代金納付後、裁判所書記官が嘱託 |
4. 特別売却と入札方式の違い
入札方式は最も高い金額を提示した人が落札する競争方式で、特別売却は買受可能価額以上で最初に申し出た人が買い受ける先着方式です。
| 項目 | 入札方式(通常の競売) | 特別売却(先着順) |
|---|---|---|
| 購入方法 | 最高価格で落札 | 先着順 |
| 価格決定 | 入札者の競争で変動 | 買受可能価額以上(先着順のため通常は買受可能価額) |
| 手続き | 競争入札が必要 | 執行官室へ申込書・保証・資格証明書を提出 |
| 保証 | 必要 | 必要 |
| 購入の難易度 | 競争が激しい場合もある | 早い者勝ち |
特別売却は、
✅ 競争が少なく、シンプルな手続きで購入できる点がメリット
✅ しかし、人気のある物件はすぐに売れてしまうため、迅速な判断が求められる
という特徴があります。
5. 特別売却のメリット
特別売却のメリットは、入札の競争がなく、先着順で申し込めば買受可能価額で取得できる可能性があることです。
特別売却には、以下のようなメリットがあります。
5-1. 入札手続きが不要で簡単
通常の競売では入札書類の準備や価格の検討が必要ですが、
特別売却は「先着順」で申し込めるため、スピーディーに不動産を取得できます。
5-2. 競争が少ないため、割安で購入できる可能性が高い
通常の競売では、競争が激しく、価格が上昇することもありますが、
特別売却は入札者がいなかった物件が対象のため、比較的安く購入できるチャンスがあります。
5-3. 先着なら購入できる可能性が高い
入札では、競争相手が高い金額を提示すると落札できませんが、
特別売却では最初に適法な申出をすれば購入できる可能性が高いです。ただし、暴力団員等に該当する場合など売却不許可の事由があれば、許可されません。
6. 特別売却の注意点
特別売却の物件は入札がなかった物件で、競売物件には種類・品質の不適合についての担保責任がないため、3点セットと現地の調査が欠かせません。
特別売却にはデメリットもあるため、購入前に注意が必要です。
6-1. 物件の問題点を慎重にチェック
特別売却に回される物件は、通常の競売で売れなかったものです。
そのため、
✅ 立地や建物の状態に問題がある可能性
✅ 占有者(前の所有者や借主)が退去していないケース
などのリスクを事前に確認しましょう。
6-2. 競売物件の契約不適合責任がない
特別売却物件も通常の競売と同じく、売主側に契約不適合責任(欠陥に対する保証)がないため、
購入後に問題が発生しても、基本的に自己責任となります。
※補足:民法568条4項により、競売の目的物の種類または品質に関する不適合については、担保責任の規定が適用されません。
6-3. 競売物件の調査が必要
- 裁判所の「競売3点セット(物件明細書・評価書・現況調査報告書)」を事前にチェック
- 不動産の占有状況や周辺環境を自分で調査する
事前に十分な調査を行うことで、リスクを回避できます。
7. まとめ
特別売却は、入札がなかった競売物件を買受可能価額以上で先着順に買い受けられる制度で、手続きの流れと物件のリスクを理解したうえで活用することが大切です。
✅ 特別売却とは、期間入札で入札がなかった物件を先着順で購入できる制度!
✅ 入札が不要で、買受可能価額以上で先着順に申し出られるため、手続きがシンプル!
✅ 競争が少なく、市場価格より安く購入できる可能性がある!
✅ ただし、売れ残った物件であるため、リスクや瑕疵に注意が必要!
✅ 購入前には、裁判所の競売情報や現地調査をしっかり行うことが大切!
特別売却は、不動産投資や事業用物件の取得を検討している企業経営者・投資家にとって、大きなチャンスとなります。
一方で、慎重なリスク管理と事前調査が成功のカギとなるため、しっかりと情報収集を行いましょう!
※本記事は一般的な解説です。手続きの詳細は管轄の地方裁判所の執行官室に、物件の権利関係は弁護士・司法書士などの専門家にご確認ください。
よくある質問(FAQ)
競売の特別売却について、よく寄せられる質問に結論から回答します。
Q. 競売の特別売却とは何ですか?
期間入札で入札がなかった不動産を、買受可能価額(通常は売却基準価額の8割)以上の金額で、先着順に買い受けられる競売の売却方法です。
Q. 特別売却はいくらで買えますか?
買受可能価額以上で申し出ることができます。受付は先着順で、後から申し出た人は前の人より高い金額でも買い受けられないため、通常は買受可能価額で申し出ます。
Q. 特別売却の申込みに必要なものは?
東京地方裁判所の例では、特別売却物件買受申込書、買受申出保証、資格証明書(個人は住民票、法人は代表者の資格証明書)が必要です。運用は裁判所ごとに異なるため、執行官室に確認します。
Q. 落札者が代金を払わなかった物件も特別売却になりますか?
なりません。特別売却の対象は期間入札で入札がなかった物件です。買受人が代金を納付しなかった場合は、次順位買受申出人への売却や再度の入札などが行われます。
Q. 特別売却で買った物件に欠陥があったら?
競売では、目的物の種類または品質に関する不適合について担保責任の規定が適用されないため(民法568条4項)、原則として自己責任になります。3点セットと現地の確認が欠かせません。
出典・参考
本記事の主な出典と、2026年10月30日の更新時に確認した資料は次のとおりです。
- 東京地方裁判所 民事第21部「特別売却(不動産)」
https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/minzi_section21/tokubetubaikyaku_hudousan/index.html - 最高裁判所「BIT 不動産競売物件情報サイト」
https://www.bit.courts.go.jp/ - 民事執行規則51条(特別売却)、民法568条(競売における担保責任等)
