1. はじめに
第三債務者とは、債務者に対して支払義務を負っている人や会社のことです。給与・売掛金・預金が差し押さえられたとき、勤務先や取引先、銀行が第三債務者になります。
「第三債務者」という言葉を聞いたことはありますか?
第三債務者とは、債務者に対して金銭などの支払義務を負っている者のことを指します。
特に 債権回収や強制執行の場面 で重要な役割を果たします。
例えば、
✅ 給与の差押え
✅ 売掛金の差押え
✅ 銀行口座の差押え
といった状況で、第三債務者が支払いを止める役割を担うことがあります。
本記事では、
✅ 第三債務者の基本的な定義
✅ どのようなケースで関係するのか?
✅ 第三債務者の責任と義務
について、わかりやすく解説していきます。
この記事の要点
- 第三債務者とは「債務者の債務者」で、従業員の給与を払う会社、取引先に代金を払う会社、預金を預かる銀行などが該当します。
- 裁判所の差押命令が届くと、第三債務者は債務者への支払いを止めなければならず、債務者に払っても差押債権者に対抗できません(二重払いのリスク)。
- 差押債権者は、差押命令が債務者に届いてから1週間(給与などは原則4週間)たつと、第三債務者から直接取り立てることができます。第三債務者は法務局に供託することもできます。
- 陳述の催告を受けた第三債務者は、2週間以内に債権の有無などを裁判所に回答する必要があり、怠ると損害賠償責任を負うことがあります。
- 給与の差押えは原則として手取りの4分の1までで、手取りが月44万円を超える場合は33万円を超える部分が差押えの対象になります。
2. 第三債務者とは?
第三債務者とは、債権者から見て「債務者のさらに債務者」にあたる人や会社です。債務者に給与や代金、預金を支払う立場にある者が第三債務者になります。
2-1. 基本的な定義
第三債務者は、債務者に対して支払義務を負う者です。企業は従業員の給与や取引先への代金の支払いを通じて、知らないうちに第三債務者になることがあります。
第三債務者とは、債務者(借金をしている人)に対して支払い義務を負っている者のことを指します。
例えば、以下のようなケースが該当します。
✅ 企業が取引先に対して商品やサービスの代金(買掛金)の支払い義務を負っている
✅ 会社が従業員に対して給与の支払い義務を負っている
✅ 銀行が顧客に対して預金の払戻し義務を負っている
| 登場人物 | 立場 | 給与差押えの例 |
|---|---|---|
| 差押債権者 | お金を回収したい人 | 従業員にお金を貸した消費者金融など |
| 債務者 | 借金などを負っている人 | 借金をしている従業員 |
| 第三債務者 | 債務者に支払義務を負う人 | 従業員に給与を支払う会社 |
2-2. 債権差押えと第三債務者
裁判所の差押命令が第三債務者に届くと、第三債務者は債務者への支払いを禁止されます。その後、差押債権者からの取立てに応じるか、法務局に供託して支払います。
第三債務者は、債権者(お金を回収したい人)が裁判所に差押えを申し立て、裁判所の差押命令が第三債務者に届いた時点から、債務者への支払いを停止する義務 があります(民事執行法145条)。
例えば、
✅ 従業員の給与が差押えされた場合、会社は給与の一部を債権者に支払う必要がある
✅ 取引先の売掛金が差押えされた場合、代金を支払う企業は取引先ではなく、差押債権者へ直接支払う(または法務局に供託する)ことになる
給与や売掛金が差し押さえられたケースでは、第三債務者が適切に対応しないと法的責任を問われる可能性があります。
| 手順 | 第三債務者がすること | 根拠 |
|---|---|---|
| ① 差押命令の送達 | 債務者への支払いを止める | 民事執行法145条 |
| ② 陳述の催告 | 送達から2週間以内に、債権の有無や金額、弁済の意思などを書いた陳述書を提出する | 民事執行法147条 |
| ③ 取立て | 債務者に差押命令が届いてから1週間(給与などは原則4週間)経過後、差押債権者の取立てに応じて直接支払う | 民事執行法155条 |
| ④ 供託(選択) | 差押えられた金額を法務局に供託して支払義務を免れる(差押えが競合したときは供託が義務) | 民事執行法156条 |
3. どのようなケースで関係するのか?
第三債務者が関わる代表的なケースは、従業員の給与差押え、取引先の売掛金の差押え、銀行口座の預金の差押えの3つです。対象によって差押えの範囲が異なります。
3-1. 給与差押えの場合
従業員の給与が差し押さえられると、会社は差押えの範囲の金額を従業員に支払わず、差押債権者に直接支払うか供託します。差押えできるのは原則として手取りの4分の1です。
企業の従業員が借金をしており、その債権者が給与を差し押さえた場合、
✅ 会社(第三債務者)は、差押えの範囲の金額を従業員に支払わず、差押債権者の取立てに応じて直接支払うか、法務局に供託 する必要があります。
差押えできるのは、税金や社会保険料を引いた手取り額の4分の1が原則です(手取りが月44万円を超える場合は33万円を超える部分の全額。民事執行法152条、同法施行令2条)。養育費などの請求では2分の1まで差し押さえられます。
3-2. 売掛金の差押え
取引先の売掛金が差し押さえられると、代金を支払う側の企業は、取引先には支払わず、差押債権者に直接支払うか供託する必要があります。
企業間取引で、B社がA社に対して売掛金を持っている(A社がB社に代金を支払う立場にある)場合、B社の債権者がその売掛金を差し押さえることがあります。
✅ この場合、A社(第三債務者)はB社に支払わず、差押債権者に直接支払うか、法務局に供託する必要がある。
3-3. 銀行口座の差押え
預金口座が差し押さえられると、銀行は差押命令が届いた時点の預金残高のうち差押額までを凍結し、取立てに応じて差押債権者に支払うか供託します。
預金口座に対する差押えの場合、
✅ 銀行(第三債務者)は差押え対象の金額を差し止め、債権者に支払う必要がある。
預金の差押えの対象は、原則として差押命令が銀行に届いた時点の残高です。その後に入金された分は対象になりません。
4. 第三債務者の義務と責任
差押命令を受けた第三債務者は、債務者への支払いを止め、陳述書を提出し、取立てか供託で支払います。債務者に支払ってしまうと、二重に支払う責任を負うおそれがあります。
4-1. 差押えの通知を受けたらどうするべきか?
差押命令が届いたら、債務者への支払いを止め、期限内に陳述書を提出します。その後は差押債権者の取立てに応じるか、法務局へ供託して支払います。
第三債務者が裁判所の差押命令を受けた場合、
✅ 債務者への支払いを止め、陳述書の提出と、差押債権者への支払い(取立てへの対応)または供託を行う義務がある。
✅ 債務者に勝手に支払うと、第三債務者自身が責任を問われる可能性がある。
陳述の催告がある場合は、差押命令の送達から2週間以内に陳述書を提出する必要があります(民事執行法147条1項)。差押債権者は、債務者に差押命令が送達されてから1週間(給与などで養育費等を含まない場合は4週間)たつと取立てができます(さいたま地方裁判所「差押債権者の方へ」、民事執行法155条)。
4-2. 違反した場合のリスク
差押命令の送達後に債務者へ支払っても、差押債権者には対抗できず、もう一度支払う必要が出るおそれがあります。陳述を怠ったり嘘を書いたりすると損害賠償責任も生じます。
✅ 誤って債務者に支払うと、再度支払義務を負う可能性がある。
✅ 陳述の催告に答えなかったり、事実と異なる陳述をしたりすると、損害賠償責任を負うリスクがある。
差押えを受けた後に債務者へ支払っても、差押債権者には対抗できません(民法481条)。また、陳述の催告に故意または過失で答えなかったり、事実と異なる陳述をしたりすると、それによって生じた損害を賠償する責任を負います(民事執行法147条2項)。
5. まとめ
第三債務者は、債務者に支払義務を負う立場として差押えに関わります。差押命令が届いたら支払いを止め、陳述書の提出と取立て・供託の手続きを正しく行うことが重要です。
✅ 第三債務者とは、債務者に対して支払義務を負っている者のこと。
✅ 債権回収や差押えの場面で重要な役割を果たす。
✅ 給与・売掛金・預金口座の差押えなど、様々なケースに関係する。
✅ 差押命令の内容に従い、適切に対応しないと責任を問われる可能性がある。
企業経営者や個人事業主は、第三債務者としての役割を理解し、適切に対応することが重要です。
※本記事は一般的な解説です。個別の対応は、裁判所の書類に記載された案内を確認のうえ、弁護士などの専門家にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
第三債務者と差押えへの対応について、企業からよく寄せられる質問に結論から回答します。
Q. 第三債務者とは何ですか?
第三債務者とは、債務者に対して金銭などの支払義務を負っている者です。従業員の給与を支払う会社、取引先に代金を支払う会社、預金を預かる銀行などが該当します。
Q. 会社に従業員の給与差押命令が届いたらどうすればよいですか?
差押えの範囲の給与を従業員に支払うのを止め、陳述の催告があれば2週間以内に陳述書を提出します。その後は差押債権者の取立てに応じて支払うか、法務局に供託します。
Q. 給与はいくらまで差し押さえられますか?
原則として手取り額の4分の1までです。手取りが月44万円を超える場合は33万円を超える部分が全額差押えの対象になり、養育費などの請求では2分の1まで差し押さえられます。
Q. 差押え後に債務者に支払ってしまうとどうなりますか?
差押命令の送達後に債務者へ支払っても差押債権者には対抗できないため、差押債権者にもう一度支払わなければならないおそれがあります。
Q. 第三債務者が陳述書を出さないとどうなりますか?
陳述の催告に故意または過失で答えなかったり、事実と異なる陳述をしたりすると、それによって生じた損害を賠償する責任を負うことがあります。
出典・参考
本記事の主な出典と、2026年10月27日の更新時に確認した資料は次のとおりです。
- さいたま地方裁判所 第3民事部債権執行係「差押債権者の方へ」
https://www.courts.go.jp/saitama/vc-files/saitama/2020/sashiosaesaikensya.pdf - 民事執行法145条(差押命令)、147条(第三債務者の陳述の催告)、152条(差押禁止債権)、155条(差押債権者の取立て)、156条(第三債務者の供託)、民事執行法施行令2条
- 民法481条(差押えを受けた債権の第三債務者の弁済)
