【2026年最新】人手不足倒産・後継者難倒産が過去最多|測量業に見る「採れない・継げない」中小企業の危機

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はじめに

中小企業の経営環境で、見過ごせない変化が起きています。

東京商工リサーチ(TSR)が2026年10月5日に発表した調査によると、2026年度上半期(4~9月)の「人手不足」倒産は240件となり、年度上半期として過去最多を更新しました。前年同期比では17.0%増です。

さらに翌10月6日には、「後継者難」倒産が263件となり、こちらも年度上半期として過去最多を更新しました。前年同期比は23.4%増です。

この2つの数字を並べると、今の中小企業が直面している問題が見えてきます。

「人が採れない」

そして、

「会社を継ぐ人もいない」

という問題です。

その象徴的な業界として、今回TSRが取り上げたのが「測量業」です。

測量業者は2003年度末をピークに22年連続で減少。2025年度末には10,924業者となり、ピークから25.9%減少しています。

しかも問題は、会社の数だけではありません。

代表者や技術者の高齢化が進み、ベテランが持つ技術や地域の知識を次世代へどう引き継ぐかという問題が浮上しています。

これは測量業だけの話ではありません。

「社長しか分からない」「ベテランしかできない」「地域のことを知っている人がいない」

そんな会社にとって、非常に重要な警告です。

結論

今回のデータから見えてくる重要なポイントは5つです。

  1. 人手不足倒産は年度上半期で過去最多の240件
  2. 後継者難倒産も過去最多の263件
  3. 測量業者は22年連続で減少
  4. 測量業では代表者の高齢化と技術承継が同時進行
  5. 「採用」だけではなく「技術を組織に残す仕組み」が必要

つまり、これからの中小企業経営では、

「人を採用する」だけでは足りません。

採用できなくても事業が回る仕組み、そしてベテランが退職しても技術が残る仕組みをつくる必要があります。


人手不足倒産が過去最多

TSRによると、2026年度上半期の人手不足倒産は240件。

前年同期の205件から17.0%増加し、2013年の調査開始以降、年度上半期として過去最多となりました。

さらに注目したいのが「人件費高騰」です。

人件費高騰による倒産は130件で、前年同期比75.6%増。

人手不足倒産全体の54.1%を占めています。

つまり現在の人手不足問題は、

「人がいないから困る」

だけではありません。

人を確保するための賃金上昇そのものが、企業の利益や資金繰りを圧迫する段階に入っている

ということです。

特に資本金1,000万円未満の企業が159件で、全体の66.2%を占めています。

中小・零細企業ほど、人材確保と利益確保を同時に行うことが難しくなっています。


後継者難倒産も過去最多

翌10月6日、TSRは後継者難倒産についても発表しました。

2026年度上半期の後継者難倒産は263件。

前年同期比23.4%増で、2023年度上半期の222件を上回り、過去最多となりました。

さらに深刻なのが、代表者の死亡と体調不良です。

死亡が120件、体調不良が105件。

合計225件で、後継者難倒産全体の85.5%を占めています。

これは何を意味するのでしょうか。

事業承継は「いつか考えるもの」ではなく、

準備していなければ、経営者に何かあった瞬間に問題になる

ということです。


測量業では「会社そのもの」が減っている

ここで今回のテーマの中心となる測量業を見てみます。

国土交通省によると、2025年度末の測量業登録業者数は10,924業者。

前年から216業者、1.9%減少しました。

しかも2003年度末の14,750業者をピークに、22年連続で減少しています。

ピークから見ると3,826業者、25.9%減少しています。

さらに2025年度は、新規登録271業者に対して登録消除が487業者。

「新しく入ってくる会社」より「登録から消える会社」の方が大幅に多い状態です。

そして、この減少は地方だけの現象ではありません。

TSRによると、2015年から2025年にかけて北海道、東北、関東、中部、北陸、近畿、中国、四国、九州の全9地区で測量業者が減少しています。

特に北陸では10年間で18.4%減少しています。


さらに深刻なのが「高齢化」

測量業では、代表者の高齢化も進んでいます。

2025年に年齢が判明した測量業者2,956社のうち、60歳以上は2,003社。

実に67.7%が60歳以上です。

70歳以上も1,040社で、2015年の506社から105.5%増加しています。

一方、60歳未満の代表者は2015年の1,305社から2025年には953社へ減少しました。

つまり、

「高齢の経営者が増えている」

だけではありません。

若い経営者が十分に入ってきていない

ことも問題なのです。


技術者も高齢化している

そして、ここが今回最も重要なポイントです。

国土地理院が2024年3月に公表した「令和5年度測量業における測量士・測量士補に関する実態調査」では、測量業者の過半数が従業員10人未満。

さらに、測量士・測量士補は50歳代が最も多く、5年前と比較して高齢化が進んでいるとされています。

同調査では、

  • 経験年数20年以上の測量士・測量士補が最も多い
  • 募集数に比べて応募・採用数が少ない
  • 採用理由では「人手不足」が最も多い
  • 入社後の教育を実施していない業者も多い

といった課題が確認されています。

つまり、

採用したい。
でも応募が来ない。
採用できても育成する余力がない。
そしてベテランが退職すると技術が抜けてしまう。

という構造です。


「技術承継」は事業承継とは違う

ここは経営者が特に注意すべきところです。

事業承継というと、

「次の社長を誰にするか」

を考えがちです。

しかし、実際にはそれだけではありません。

例えば測量業なら、

  • 地域ごとの地形特性
  • 顧客との関係
  • 現場での判断
  • 測量機器の使い方
  • 過去案件の知識
  • 災害時の対応経験
  • 行政・発注者との仕事の進め方

など、長年の経験から形成された「暗黙知」があります。

これを次世代に移さなければ、社長が交代しても会社の競争力は維持できません。


「ベテランを若手に置き換える」だけでは不十分

ここからが中小企業経営者にとって重要な話です。

人手不足になると、多くの会社は、

「若い人を採用しよう」

と考えます。

もちろん必要です。

しかし、それだけでは解決しません。

重要なのは、

ベテランの経験を、若手が再現できる形に変換すること

です。

例えば、

「○○さんなら分かる」

を、

「この条件なら、この判断をする」

というルールに変える。

「○○さんに聞けば分かる」

を、

「この案件の情報はここに残っている」

というデータに変える。

「背中を見て覚えろ」

を、

「この業務ではこの手順と判断基準」

に変える。

これが技術承継です。


測量業の問題は、他業界にも共通する

今回の測量業のデータは、決して測量業だけの問題ではありません。

例えば、

  • 建設業の職人
  • 製造業の熟練技術者
  • 自動車整備
  • 設備工事
  • 運送業
  • 介護・福祉
  • 地域密着型サービス
  • 士業
  • 飲食店の料理人

などでも同じ問題が起こり得ます。

「この人がいないと回らない」

という状態は、その人が会社の強みである一方で、経営上のリスクにもなります。


売上が増えても安心できない

測量業では、もう一つ注目すべきデータがあります。

TSRが6期連続で財務データを確認できた3,890社を分析したところ、2025年度の売上高は5,482億円。

2020年度から12.6%増加しています。

ところが純利益は256億円で、2020年度の295億円を13.2%下回っています。

純利益率も、

2020年度 6.0%
↓
2025年度 4.6%

と低下しています。

特に資本金1,000万円未満の企業では、2025年度の純利益率が3.2%。

2020年度の5.9%から2.7ポイント低下しています。

つまり、

売上を増やしても利益が残らない。

この状態では、

  • 採用
  • 人材育成
  • 設備投資
  • DX
  • 技術承継

に投資する余力がなくなります。

人手不足と収益力低下が、悪循環になっている可能性があります。


中小企業経営者が今確認すべき5つのこと

今回のデータから、測量業以外の企業にも共通するチェックポイントを整理します。

1.「この人しかできない仕事」は何か

社長、部長、ベテラン社員に依存している業務を洗い出します。

2.退職したら失われる知識は何か

顧客情報、技術、判断基準、地域情報などを確認します。

3.採用できなかった場合でも回るか

「採用すること」を前提にせず、省力化・標準化・分業化を検討します。

4.若手を育てる仕組みがあるか

OJTだけに依存せず、業務手順、判断基準、教育計画を整備します。

5.事業承継を「社長交代」だけで考えていないか

経営権だけでなく、

顧客・技術・ノウハウ・人材・判断基準

まで承継できる状態をつくる必要があります。


これからの中小企業に必要なのは「人を増やす経営」から「人が残る経営」へ

人手不足だから採用する。

これは当然です。

しかし、採用市場そのものが厳しくなると、採用だけに頼る経営には限界があります。

だからこそ、

人が少なくても回る仕組み

そして、

ベテランがいなくなっても技術が残る仕組み

をつくることが重要になります。

そのためには、

  • 業務の標準化
  • マニュアル化
  • 動画・写真による技能記録
  • OJTの体系化
  • 技術・ノウハウのデータベース化
  • AI・DXによる業務効率化
  • 若手への権限移譲
  • 計画的な事業承継

などを組み合わせていく必要があります。


今後さらに重要になる「技術承継」

測量業は社会インフラを支える仕事です。

道路、河川、土地利用、災害対応など、地域社会にとって欠かせない機能があります。

だからこそ、単純に「会社が減っている」という話だけではありません。

地域に必要な技術を、誰が持ち続けるのか。

ここが重要です。

そして、この問題は測量業に限りません。

日本の中小企業では、今後さらに経営者・技術者の高齢化が進みます。

「後継者を決める」のが事業承継の第一歩だとすれば、

「技術を移す」のは事業承継の実務です。


まとめ

今回のTSRと国土交通省・国土地理院のデータから見えてくるのは、

「採れない」と「継げない」が同時に進んでいる

という現実です。

人手不足倒産は2026年度上半期で240件。

後継者難倒産は263件。

そして測量業者は22年連続で減少しています。

しかし、本当に怖いのは数字そのものではありません。

自社でも、

「社長しか分からない」
「ベテランしかできない」
「若手に任せられない」
「採用できれば解決すると思っている」

という状態になっていないか。

ここを確認することです。

これからの中小企業経営では、

人を採ることと同じくらい、人が持っている技術・経験・顧客関係を会社に残すこと

が重要になります。

人手不足時代の経営課題は、採用だけではありません。

「人がいなくても会社の価値が残る仕組み」をつくれるか。

これが、これからの中小企業の生き残りを左右するテーマになっていくでしょう。

出典

  • 東京商工リサーチ「年度上半期の『人手不足』倒産 過去最多の240件 深刻な“賃上げ疲れ”、『賃上げ倒産』が1.7倍に増加」(2026年10月5日)
  • 東京商工リサーチ「年度上半期の『後継者難』倒産 過去最多の263件 高まる事業承継への直接支援と意識改革の必要性」(2026年10月6日)
  • 東京商工リサーチ「地方圏中心に減少が続く測量業者 高齢化が続くなか技術・ノウハウの承継が課題」(2026年10月6日)
  • 国土交通省「令和7年度末の建設関連業登録業者の登録状況」
  • 国土地理院「令和5年度 測量業における測量士・測量士補に関する実態調査報告書」

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