情報漏洩が相次ぐ今、中小企業がやるべきサイバー攻撃対策10選|経営者が知っておきたい情報管理の基本

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はじめに:情報漏洩は、もはや他人事ではない

2026年10月、日本国内では企業や団体の情報システムに対する不正アクセスや、委託先を経由した情報漏洩などの公表が相次いでいます。

報道では、旅行予約、ECサイト、金融、保険、運輸、小売り、医療、メディアなど、幅広い業種の事案が取り上げられています。

漏洩した可能性がある情報も、メールアドレスだけではありません。氏名、住所、電話番号、予約情報、会員情報、金融関連情報、本人確認書類など、事案によってさまざまです。

こうしたニュースを見ると、「大企業だから攻撃されるのではないか」「うちの会社には盗まれるような情報はない」と考える経営者もいるかもしれません。

しかし、中小企業にも、顧客情報、従業員情報、取引先情報、見積書、契約書、会計データ、メールアカウントなど、守るべき情報が存在します。

さらに、外部のクラウドサービスや業務委託先を利用している場合、自社だけでなく、サービス提供会社や委託先のセキュリティ対策も無関係ではありません。

サイバー攻撃への備えは、IT担当者だけの仕事ではありません。顧客からの信頼、事業の継続、会社の信用を守るための経営課題です。

この記事では、情報漏洩が相次ぐ背景を整理し、中小企業が実行できる具体的な対策と、万が一の際に備えておくべき対応を解説します。

この記事の結論

中小企業が優先して取り組みたいことは、次の5つです。

  1. 多要素認証を設定する。 メールやクラウドサービスなど、重要なアカウントの不正ログイン対策を強化する。
  2. ソフトウェアやウェブサイトを更新する。 古いシステムや放置されたウェブサイトを点検する。
  3. アクセス権限を見直す。 従業員や委託先が、必要以上の情報にアクセスできる状態を改める。
  4. バックアップを確保する。 データが暗号化・消失した場合でも、復旧できる状態をつくる。
  5. 被害発生時の対応手順を決める。 誰に連絡し、何を止め、どこに相談するかを事前に決めておく。

高額なセキュリティシステムを導入する前に、まずは自社の情報資産と現在の管理方法を把握することが重要です。

1.何が起きているのか?情報漏洩が相次ぐ背景

2026年10月に公表された報道一覧では、さまざまな業種で不正アクセスや情報漏洩の可能性が取り上げられています。

特徴的なのは、特定の業界だけに問題が集中しているわけではないことです。

幅広い業種で情報漏洩が問題になっている

今回提供された報道一覧には、次のような業種が含まれています。

業種・分野主な情報資産の例
小売・EC会員情報、購入履歴、住所、連絡先
旅行・運輸予約情報、連絡先、本人確認関連情報
金融・保険顧客情報、契約情報、金融関連情報
医療・介護患者情報、利用者情報、予約情報
メディア・出版会員情報、メールアドレス
BtoB企業取引先情報、契約情報、社内文書
業務委託・クラウド複数の企業やサービスに関係するデータ

※上表は今回提供された報道一覧を分野別に整理したものです。個々の事案の被害状況や原因を一律に示すものではありません。

重要なのは、情報漏洩の影響が業種を問わず広がり得ることです。

例えば、顧客情報を大量に保有する企業だけでなく、取引先の連絡先や見積書を管理する小規模な会社も、情報管理の対象となります。

また、攻撃によって業務システムが停止すれば、情報が流出しなくても事業に影響が及ぶ可能性があります。

2026年10月29日時点|情報漏洩・不正アクセス企業一覧

公開情報を調べたところ、2026年9月以降に公表された事案には、大規模な顧客情報の漏洩から、外部委託先を経由した情報流出、不正アクセスの調査中の事案まで、幅広いケースがあります。

以下は、10月29日時点で確認できた主な事案の一覧です。網羅的な全件リストではなく、ニュースや経営者向けコンテンツで取り上げる価値の高い事案を中心に整理しています。情報漏洩まとめ.site

1.10月後半に公表された主な事案

公表日企業・団体対象サービス・システム件数・規模状況
10月28日花キューピットインターネット花キューピット、ビジネス花キューピット4,238,242件漏洩確認
10月28日日本航空(JAL)旅客サービスシステムの委託先約92,000人漏洩の可能性
10月28日Rise UPメール配信サービス経由でモアコンタクト関連情報1,548,002件(延べ)漏洩確認
10月27日ソニーネットワークコミュニケーションズSo-net会員データベース2,141,986件漏洩確認
10月27日スマートシェアSNSキャンペーン支援ツール「OWNLY」約14,000件漏洩事案として公表
10月26日楽天グループ楽天トラベルの海外ホテル予約関連サイト最大約260万件漏洩の可能性
10月26日ドトールコーヒー社内システム951人分漏洩の可能性
10月26日古河電工パワーシステムズ出荷管理用Webシステム未公表漏洩の可能性
10月26日cotta通販サイト未公表不正アクセスの可能性を調査中
10月24日チャリ・ロト「チャリロト」アプリ373人分漏洩確認
10月24日カカオピッコマメール配信システム経由のメールアドレス1,002,404件漏洩確認
10月23日佐川急便お荷物問い合わせサービス最大約5,323万件漏洩のおそれ
10月23日リンツ&シュプルングリージャパンオンラインショップ・公式アプリ3,147,469件漏洩確認
10月23日カプコンCAPCOM ID11,774,247件(全世界)漏洩確認
10月23日新潟日報社メール配信システム「ブラストメール」最大約25万3,000人分漏洩確認
10月23日リクルートカーセンサーnet・C-MATCH最大3,709,551件漏洩の可能性
10月23日グリーンモンスターFXなび約619万件情報漏洩事案として公表
10月23日ゼビオホールディングス(GALLERY・2)ECサイト約13万件情報漏洩事案として公表
10月23日ペイクラウドホールディングス(バリューデザイン)Value Card約142万件漏洩事案として公表
10月23日アンドエスティHD社内業務サーバー関連約250万件漏洩事案として公表

主な出典: 企業の公式発表および情報漏洩事案の公開情報一覧。花キューピット、So-net、JAL、カプコンについては公式発表も確認できます。Hana Cupid

件数を見る際の注意点

例えば、カプコンは「CAPCOM ID」の情報について全世界合計11,774,247件の漏洩を公表しています。一方、佐川急便の最大約5,323万件は、重複を含む可能性があり、実人数や漏洩が確定した人数を意味するものではありません。花キューピットは4,238,242件の会員情報について漏洩を確認しています。これらは同じ意味の数字ではありません。Capcom

2.10月前半に公表された主な事案

公表日企業・団体対象サービス・システム件数・規模状況
10月20日ソースネクスト会員情報管理システム22,519,960件情報流出の可能性を公表
10月20日日本経済新聞社システム開発に利用するクラウドサービス約183万件情報漏洩事案として公表
10月19日GMOリサーチ&AIアンケートサイト「infoQ」894,082件外部持ち出しを確認
10月19日ビーケー・ジャパンバーガーキング公式アプリ約1,118万件情報漏洩事案として公表
10月上旬焼肉きんぐ公式アプリ10,788,963件情報漏洩を公表
10月上旬セイコーマートアプリ関連システム574,647人分個人情報の閲覧を確認
10月上旬MrMax会員情報関連システム最大1,735,154人分一部の情報流出を確認
10月上旬楽天ドライブクラウドストレージ15,382アカウント情報の取得・閲覧を確認
10月中旬大和証券外部委託先関連約11万人漏洩の可能性
10月中旬シチズン時計外部委託先関連約10万人漏洩の可能性

出典:情報漏洩事案の公開情報一覧および各社の公表情報。個別事案については、件数や確認状況が続報で変わる可能性があります。

情報漏洩の原因は一つではない

不正アクセスによる情報漏洩には、複数の経路があります。

  • ソフトウェアやウェブシステムの脆弱性を悪用される
  • IDやパスワードなどの認証情報を不正に利用される
  • 外部サービスや委託先のシステムが侵害される
  • アクセス権限やアカウント管理に不備がある
  • メールの誤送信など、人的なミスによって情報が漏れる

すべての情報漏洩が同じ原因で起きているわけではありません。

したがって、ウイルス対策ソフトを導入すれば万全という考え方では不十分です。自社のシステム構成、情報の保管場所、利用している外部サービス、従業員の運用方法をまとめて確認する必要があります。

2.なぜ中小企業も対策が必要なのか?

結論からいえば、会社の規模だけでサイバーリスクの有無を判断できないからです。

中小企業でも、インターネットに接続されたウェブサイト、メール、クラウドストレージ、会計システム、顧客管理システムなどを利用しています。

こうした仕組みには、適切な設定や更新、アクセス管理が必要です。

理由①:重要な情報は社内の至るところにある

例えば、次のような情報を考えてみてください。

  • 顧客の氏名、住所、電話番号、メールアドレス
  • 従業員の住所、給与、雇用契約に関する情報
  • 取引先との契約書や見積書
  • 銀行口座や請求・支払に関する情報
  • 経営計画、原価情報、営業資料
  • メールアカウントや各種サービスの認証情報

これらが漏洩すると、顧客や従業員への対応だけでなく、取引先との信頼関係や業務の継続にも影響する可能性があります。

特に、メールアカウントを不正利用されると、取引先への偽メール送信や、業務上のやり取りを悪用した詐欺につながるおそれがあります。

理由②:外部サービスを使っていても、リスクがゼロになるわけではない

中小企業では、自社でサーバーを管理せず、クラウドサービスや外部業者にシステム運用を任せているケースが少なくありません。

外部サービスの利用自体が問題なのではありません。適切に管理されたサービスは、中小企業のセキュリティ向上にも役立ちます。

ただし、サービスを利用する企業側にも、次のような確認が必要です。

  • 誰がアカウントを保有しているか
  • 多要素認証を利用できるか
  • 退職者や不要になったアカウントが残っていないか
  • 外部委託先にどこまでの権限を与えているか
  • 契約終了時にデータやアカウントをどう扱うか
  • 事故発生時の連絡先や責任分担が明確か

「有名なサービスだから安全」「業者に任せているから大丈夫」と決めつけず、自社が管理できる部分を明確にしましょう。

3.問題の本質は、技術だけではなく情報管理の仕組みにある

サイバー攻撃への対策というと、専門的な機器やソフトウェアをイメージするかもしれません。

もちろん、技術的な対策は重要です。しかし、それだけで情報漏洩を防げるわけではありません。

経営者が考えるべきなのは、何を守るのか、誰に利用を認めるのか、どこまでリスクを許容するのかという管理方針です。

経営者が決めるべき4つのこと

① 何を守るのか

自社が保有する情報を洗い出し、特に重要な情報を明確にします。

すべての情報に同じ管理コストをかけるのではなく、顧客情報、従業員情報、契約情報、認証情報など、影響の大きいものから優先的に対策します。

② 誰が利用できるのか

情報へのアクセス権限を、業務上必要な範囲に限定します。

全社員がすべての顧客情報や人事情報を閲覧できる状態が本当に必要なのか、改めて確認しましょう。

③ 誰が責任を持つのか

社内の担当者、経営者、システム管理会社、クラウドサービス提供者の役割を整理します。

「ITのことは担当者に任せている」という状態では、事故が起きたときに意思決定が遅れる可能性があります。

④ 事故が起きたときにどうするのか

情報漏洩の疑いが生じた場合、誰に連絡し、どのシステムを隔離し、どこに相談するかを事前に決めておきます。

情報漏洩は、発生を完全に防ぐことだけでなく、発生時の被害を抑え、事業を復旧できる体制を整えることも重要です。

4.中小企業が今すぐできる対策10選

ここからは、中小企業が優先順位を付けて実行できる対策を紹介します。

対策①:重要なアカウントに多要素認証を設定する

最初に確認したいのが、メール、クラウドストレージ、会計システム、顧客管理システム、管理者アカウントなどの認証設定です。

多要素認証は、パスワードだけでなく、認証アプリやセキュリティキーなど、別の要素を組み合わせて本人確認を行う仕組みです。

パスワードが漏れた場合でも、不正ログインのリスクを下げる効果が期待できます。

実行すること

  • 重要なアカウントで多要素認証を有効にする
  • パスワードを使い回さない
  • 長く、推測されにくいパスワードを使用する
  • 共有アカウントを減らし、個人ごとに利用者を管理する
  • 管理者アカウントを日常業務用のアカウントと分ける

まずは、会社のメールアカウントから確認することをおすすめします。

対策②:OS・ソフトウェア・ウェブサイトを更新する

古いソフトウェアや、修正プログラムが適用されていないシステムは、既知の脆弱性を悪用されるリスクがあります。

WindowsやmacOSなどのOS、ブラウザー、業務ソフト、ルーター、VPN機器、ウェブサイトのCMSやプラグインなど、利用しているものを確認しましょう。

実行すること

  • OSやソフトウェアの自動更新設定を確認する
  • サポートが終了した製品を洗い出す
  • ウェブサイトの保守担当者を明確にする
  • 更新が必要な機器やソフトを一覧化する
  • 重要なセキュリティ情報を定期的に確認する

更新によって業務への影響が考えられる場合は、バックアップや動作確認などを含め、適切な手順で実施してください。

対策③:誰がどの情報にアクセスできるかを見直す

退職者のアカウントが残っていたり、外部委託先に広すぎる権限を付与していたりすると、情報漏洩時の影響が大きくなります。

実行すること

  • 従業員のアカウント一覧を作る
  • 退職・異動時の権限変更手順を決める
  • 外部委託先のアカウントと権限を確認する
  • 顧客情報や人事情報へのアクセスを必要最小限にする
  • 不要な共有リンクや公開設定を見直す

アカウント管理は、一度確認すれば終わりではありません。入退社や組織変更に合わせて更新する仕組みが必要です。

対策④:利用しているクラウドサービスを洗い出す

会社が契約しているサービスを、経営者や管理担当者がすべて把握できているでしょうか。

メール、ファイル共有、会計、勤怠、給与、顧客管理、営業支援、オンライン会議など、業務で利用するサービスは多岐にわたります。

実行すること

  • サービス名と管理者を一覧にする
  • 保管されている情報を確認する
  • 多要素認証の利用可否を確認する
  • 利用者数と権限を確認する
  • 解約済み・未使用のアカウントを整理する

個人契約のサービスに会社のデータが保存されている場合も、管理方法を見直しましょう。

対策⑤:バックアップを取り、復旧できることを確認する

バックアップは、情報漏洩だけでなく、ランサムウェアや機器故障、誤操作などによるデータ消失への備えでもあります。

ただし、バックアップを取っているだけでは十分ではありません。

本番環境と同じアカウントやネットワークから自由にアクセスできるバックアップは、攻撃によって同時に被害を受ける可能性があります。

実行すること

  • 重要データのバックアップ対象を決める
  • 自動バックアップの実行状況を確認する
  • 本番環境とは分離した保管方法を検討する
  • バックアップへのアクセス権限を制限する
  • 定期的にデータを復元できるか試す

重要なのは、「バックアップが存在すること」ではなく、「必要なときに業務を復旧できること」です。

対策⑥:ウイルス対策と端末管理を確認する

従業員が利用するパソコンやサーバーなどの端末について、基本的な保護機能が有効になっているかを確認します。

実行すること

  • OS標準の保護機能や導入済みのセキュリティソフトを確認する
  • セキュリティ更新が適用されているか確認する
  • 管理者権限を必要以上に付与しない
  • 私物端末の業務利用ルールを決める
  • 不要なソフトウェアを整理する

製品を導入するだけでなく、適切に設定・更新・運用することが重要です。

対策⑦:従業員が不審なメールやリンクを見分けられるようにする

フィッシングメールなどをきっかけに、認証情報が盗まれたり、不正なプログラムを実行させられたりすることがあります。

実行すること

  • 送信元アドレスやURLを確認する
  • 不自然な添付ファイルを安易に開かない
  • メールに記載されたリンクから安易にログインしない
  • 送金先変更や緊急の振込依頼は別の経路で確認する
  • 不審なメールを受信した場合の報告先を明確にする

従業員を責めるだけでは、問題は解決しません。疑わしいメールを安心して報告できる仕組みを整えましょう。

対策⑧:外部委託先の管理方法を確認する

自社のシステムを守るには、業務を委託している会社や、データを共有している外部サービスの管理も重要です。

実行すること

  • どの会社にどの情報を渡しているか整理する
  • 委託先が利用できるシステムやデータを確認する
  • 契約上の情報管理・事故報告の取り決めを確認する
  • 委託先の担当者や利用アカウントを確認する
  • 事故発生時の連絡先を共有する

委託先で事故が発生した場合の対応は、契約内容や事案によって異なります。あらかじめ責任分担と連絡手順を確認しておくことが大切です。

対策⑨:保有する個人情報を必要以上に増やさない

情報漏洩対策では、守る仕組みを強化するだけでなく、守るべき情報そのものを見直すことも重要です。

使わなくなった顧客情報や、業務上の必要性がなくなったファイルが長期間保存されていないでしょうか。

実行すること

  • 保有している個人情報を洗い出す
  • 利用目的を確認する
  • 保存期間と削除ルールを整理する
  • 必要性の低い情報の保有を見直す
  • 情報を削除する際の手順を決める

ただし、法令や契約などによって保存が必要な情報もあります。保存期間や削除方法は、情報の種類と適用されるルールを確認して決定してください。

対策⑩:情報漏洩が起きた場合の対応手順を決める

万が一、情報漏洩や不正アクセスの疑いが生じたとき、経営者や従業員がその場で対応を考え始めるのでは、初動が遅れる可能性があります。

実行すること

  • 社内の報告先を決める
  • システム管理会社などの緊急連絡先を整理する
  • 初動対応の責任者を決める
  • 顧客や取引先への連絡手順を整理する
  • 外部専門家や公的相談窓口への連絡方法を確認する

具体的な対応は、侵害されたシステムや被害の状況によって異なります。事前に手順書を用意し、必要に応じて訓練することが重要です。

5.情報漏洩が発生したら、何をすべきか?

不正アクセスや情報漏洩の疑いを発見した場合は、被害の拡大防止、状況の把握、適切な連絡・報告、復旧を並行して進める必要があります。

初動対応の基本的な流れ

ステップ1:社内の責任者と経営者に連絡する

不審なログイン、見覚えのない操作、端末の異常などを確認した場合は、社内で定めた連絡先に速やかに報告します。

ステップ2:専門家と連携して被害拡大を防ぐ

侵害が疑われる端末やシステムについて、状況に応じてネットワークからの隔離、アカウントの停止、認証情報の変更などを検討します。

ただし、むやみに端末を初期化したり、ログなどの記録を消したりすると、原因調査に必要な情報が失われる可能性があります。自社だけで判断せず、システム管理会社や専門家の指示を受けて対応してください。

ステップ3:影響範囲を確認する

どのシステムが侵害されたのか、どの情報にアクセスされた可能性があるのか、影響を受ける顧客や取引先はどこかを確認します。

ステップ4:必要な報告・連絡を行う

個人情報の漏洩など、法令上の報告や本人通知が必要となるケースがあります。個人情報保護委員会の公表資料や専門家の助言を確認し、適切に対応します。

ステップ5:復旧と再発防止を進める

原因を調査し、脆弱性の修正、認証設定の見直し、権限管理の改善、バックアップからの復旧などを進めます。

IPAの「中小企業のためのセキュリティインシデント対応の手引き」には、情報漏洩、ウイルス感染、システム停止などが発生した場合の対応手順が整理されています。

参考資料:IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版・付録8
https://www.ipa.go.jp/security/guide/sme/about.html

6.経営者が30日以内に実施したい行動計画

対策を一度にすべて実施しようとすると、担当者の負担が大きくなり、結局何も進まないことがあります。

まずは、30日間で基本的な管理体制を整えることを目指しましょう。

期間実施事項完了の判断基準
1週目情報資産・利用サービス・管理者を洗い出す重要なサービスと管理者が一覧になっている
2週目多要素認証、アカウント、アクセス権限を確認する優先度の高いアカウントの設定・権限を確認できている
3週目更新状況、バックアップ、委託先を確認する未更新のシステムやバックアップの課題が整理されている
4週目緊急連絡先と初動対応手順を整備する担当者が初動対応の流れを説明できる

30日で高度なセキュリティ体制が完成するわけではありません。しかし、現状を把握し、重要なリスクから順に対策するための基盤は整えられます。

自社だけで判断・対応することが難しい場合は、システム管理会社やセキュリティの専門家に相談しましょう。

7.無料で活用できる公的資料・相談先

中小企業がセキュリティ対策を進める際は、公的機関が公開している資料を活用できます。

IPA「不正アクセス対策特設サイト」

不正アクセスへの対応や、インシデント発生時の手引きなどを確認できます。

https://www.ipa.go.jp/security/support/incident-support.html

IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版

経営者が認識すべき事項、社内で実施する対策、情報セキュリティ基本方針のサンプル、資産管理台帳、インシデント対応の手引きなどが公開されています。

https://www.ipa.go.jp/security/guide/sme/about.html

経済産業省「中小企業のためのセキュリティインシデント対応の手引き」

情報漏洩、ウイルス感染、システム停止などの被害が発生した際に、初動対応から復旧までの流れを確認できます。

https://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/sme_incident.html

これらの資料を活用すれば、専門人材が限られる中小企業でも、対策の優先順位や基本的な対応手順を整理できます。

8.よくある質問

Q1.従業員が10人程度の会社でも対策は必要ですか?

はい。従業員数だけで安全性を判断することはできません。顧客情報、従業員情報、メール、クラウドサービスなどを利用しているなら、重要なアカウントの認証設定、ソフトウェアの更新、アクセス権限、バックアップなどを確認する必要があります。

Q2.ウイルス対策ソフトを導入していれば安心ですか?

いいえ。ウイルス対策ソフトは重要ですが、それだけですべての不正アクセスや情報漏洩を防げるわけではありません。多要素認証、脆弱性の修正、権限管理、バックアップ、従業員教育などを組み合わせて対策する必要があります。

Q3.クラウドサービスを使っていれば自社での対策は不要ですか?

いいえ。サービス提供者が管理する領域と、利用企業が管理する領域は異なります。アカウント、アクセス権限、多要素認証、共有設定、利用者管理など、自社側で確認すべき項目があります。

Q4.情報漏洩が発生した場合、必ず公表しなければなりませんか?

すべての事案で一律に同じ対応になるわけではありません。個人情報保護法上の報告・本人通知の要件や、契約上の義務などを確認する必要があります。事案の内容に応じて、専門家や関係機関に相談してください。

Q5.最初に何をすればよいですか?

まず、会社のメール、クラウドストレージ、会計システム、顧客管理システムなどの重要なサービスを洗い出してください。そのうえで、多要素認証、利用者・権限、更新状況、バックアップを確認することをおすすめします。

まとめ:セキュリティ対策は、会社の信用を守る経営活動

情報漏洩や不正アクセスは、技術的な問題だけではありません。

顧客情報をどのように管理するのか。誰がアクセスできるのか。外部サービスや委託先をどう管理するのか。事故が起きた際に、誰が判断し、どのように事業を復旧するのか。

これらは、経営者が把握しておくべき重要な管理事項です。

中小企業に必要なのは、最初から完璧なシステムを導入することではありません。

まずは、自社が保有する情報と利用サービスを把握する。重要なアカウントの認証を強化する。ソフトウェアを更新する。アクセス権限を見直す。バックアップを確保する。そして、事故が起きた場合の対応手順を決める。

こうした基本対策を継続することが、情報漏洩のリスクを抑え、顧客・従業員・取引先からの信頼を守ることにつながります。

経営者が今日できる最初の一歩は、IT担当者やシステム管理会社に「当社の重要な情報はどこにあり、誰がアクセスでき、万が一のときに復旧できる状態なのか」と確認することです。

情報セキュリティを一部の担当者だけの仕事にせず、経営管理の一環として取り組んでいきましょう。


出典・参考資料

  • IPA「不正アクセス対策特設サイト」
  • IPA「不正アクセスによる漏えい等の事案を踏まえ、速やかに実施すべき対策等について」
  • IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版
  • 経済産業省「中小企業のためのセキュリティインシデント対応の手引き」

※本記事は、2026年10月29日時点で参照した公的資料と、提供された報道情報を基に構成しています。個別の情報漏洩事案の詳細や最新の対応状況については、各社の公式発表を確認してください。

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