2026年上半期、中小企業経営者にとって非常に重要なデータが相次いで公表されました。
一つは建設業の倒産・廃業件数が、リーマンショック直後を超えて過去最多となったというニュース。
もう一つは、ソフトウェア開発やホームページ制作を担う情報サービス業の倒産件数が過去10年間で最多となったという調査です。
一見すると全く違う業界のように見えます。
しかし、経営という視点で見ると、建設業と情報サービス業には驚くほど共通する構造があります。
そして、倒産が増えている原因だけは大きく異なります。
この記事の要点
- 帝国データバンクによると、2026年上半期の建設業の倒産・休廃業解散は5,937件で、リーマン・ショック直後の2009年(5,811件)を上回り上半期として過去最多になりました。
- 東京商工リサーチによると、2026年上半期の情報サービス業の倒産は166件(前年同期比18.5%増)で、2017年以降の過去10年で最多です。
- 建設業とソフトウェア開発は、人の作業量で利益が決まる「請負型ビジネス」という共通の構造を持っています。
- 苦境の原因は異なり、情報サービス業は生成AIなどによる単価下落と内製化、建設業は職人不足や資材高騰などによる供給能力の不足です。
- どちらも小規模事業者ほど影響が大きく、AIの活用、専門性の強化、価格ではなく価値で選ばれる経営への転換が求められています。
建設業は「リーマン超え」の異常事態
帝国データバンクによると、2026年上半期の建設業の倒産は1,043件、休廃業・解散は4,894件で、合計5,937件とリーマン・ショック直後の2009年を超え、上半期の過去最多になりました。
帝国データバンクによると、
2026年上半期の建設業では
- 倒産:1,043件
- 廃業・解散:4,894件
- 合計撤退:5,937件
となりました。
建設業の倒産・廃業の合計5,937件はリーマンショック直後の2009年(5,811件)を上回り、統計開始以降で上半期最多という極めて深刻な数字です。
| 区分(2026年上半期) | 件数 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 倒産(負債1,000万円以上・法的整理) | 1,043件 | 57件増(5.8%増) |
| 休廃業・解散 | 4,894件 | 1,064件増(27.8%増) |
| 合計(市場からの撤退) | 5,937件 | 上半期として過去最多 |
| (参考)2009年上半期の合計 | 5,811件 | リーマン・ショック直後のこれまでの最多 |
リーマンショック当時は世界的な金融危機による需要蒸発が原因でした。
しかし今回は違います。
景気後退だけでは説明できない、業界構造そのものの変化が起きています。
※業種別では、住宅メーカーや工務店などの木造建築工事が947件と全体の約16%を占め、上半期で900件を超えたのは2017年以来9年ぶりです。増加率では左官工事(67.7%増)、金属製屋根工事(66.7%増)、タイル工事(60.7%増)が目立ちます(帝国データバンク)。ハウスメーカーの倒産については「【2026年最新】ハウスメーカー倒産が前年比9割増。アエラホーム民事再生から中小工務店・住宅会社が学ぶべき5つの教訓」でも解説しています。
情報サービス業も過去10年で最多
東京商工リサーチによると、2026年上半期の情報サービス業の倒産は166件(前年同期比18.5%増)で過去10年で最多です。負債1億円未満と従業員5人未満の小規模企業が大半を占めます。
一方、東京商工リサーチによると、
2026年上半期の情報サービス業の倒産は
166件(前年同期比18.5%増)
となり、
2017年以降で最多となりました。
| 項目(2026年上半期) | 件数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 情報サービス業の倒産 | 166件(前年同期比18.5%増) | ― |
| 負債1億円未満 | 147件(前年同期比22.5%増) | 88.5% |
| 従業員5人未満 | 135件(前年同期比25.0%増) | 81.3% |
| 破産 | 162件 | 約98% |
特に目立つのは
- 負債1億円未満が約9割
- 従業員5人未満が8割超
つまり、
小規模な受託開発会社やホームページ制作会社が急速に淘汰され始めている
ということです。
共通点は「請負ビジネス」
建設業とソフトウェア開発は、見積もり・受注・人の作業・納品という請負型ビジネスで、利益が工数と人件費、生産性で決まる点が共通しています。
建設業とソフトウェア開発。
実は昔から
「システム開発は建設業に似ている」
と言われてきました。
理由は非常にシンプルです。
両方とも
- 見積もりを出し
- 受注し
- 人が作業し
- 納品して売上になる
という典型的な請負型ビジネスだからです。
利益は
工数 × 人件費 × 生産性
で決まります。
つまり、
人が増えなければ売上にも限界があり、
価格競争になると利益は一気に薄くなる構造です。
しかし倒産理由は全く違う
同じ請負型でも、情報サービス業は生成AIによる単価下落、建設業は職人不足や資材高騰による供給能力の不足と、倒産が増えている理由は大きく異なります。
倒産理由の違いが非常に重要です。
同じ請負型でも、
現在起きている問題は全く異なります。
| 比較項目 | 情報サービス業 | 建設業 |
|---|---|---|
| 2026年上半期の動向 | 倒産166件(過去10年で最多) | 倒産・休廃業解散5,937件(上半期で過去最多) |
| ビジネスの型 | 請負型(受託開発・Web制作など) | 請負型(工事請負) |
| 主な原因 | 生成AIやノーコードの普及による単価下落・内製化 | 職人不足、資材高騰、金利上昇、確認申請の厳格化 |
| 構造 | 需要はあるのに単価が下がる | 需要があっても供給能力が足りない |
| 影響が大きい層 | 従業員5人未満が8割超 | 中小工務店・小規模施工会社・一人親方 |
情報サービス業
情報サービス業の最大の変化は生成AIの普及です。ホームページ制作や簡単なプログラムをAIで内製できるようになり、需要はあるのに単価が下がる構造になっています。
最大の変化は
生成AIの普及
です。
例えば
- ChatGPT
- Claude
- Gemini
- GitHub Copilot
- ノーコード・ローコード
生成AIやノーコード・ローコードツールによって
以前なら数十万円だった仕事が
数万円、
あるいは社内で完結できるケースまで増えています。
ホームページ制作も、
画像生成も、
文章作成も、
簡単なプログラムも、
AIが代替し始めました。
つまり
需要はあるのに、単価が下がる
という構造になっています。
※東京商工リサーチも、開発スピードの速いツールや生成AIの普及で簡易なコンテンツ制作・開発の内製化が進み、価格競争に依存していた小・零細事業者への逆風が強まっていると指摘しています(東京商工リサーチ)。
建設業
建設業はAIで代替しにくい一方、職人不足や資材高騰、金利上昇、確認申請の厳格化が重なり、需要があっても利益が残らない供給制約の状態にあります。
一方で建設業は逆です。
AIでは家は建ちません。
職人も増えません。
現場作業も代替できません。
それでも倒産が増えている理由は
- 職人不足
- 建築資材高騰
- ナフサ由来資材不足
- 住宅ローン金利上昇
- 建築確認厳格化
つまり
供給能力が足りない
ことです。
需要があっても、
利益が残らない。
人が集まらない。
工期が延びる。
資材が届かない。
※帝国データバンクは、2025年4月の建築基準法改正(4号特例の縮小)で確認申請が厳格化し、設計・申請に時間がかかるようになったことや、ユニットバス・塗料・断熱材など石油由来の建材の欠品・値上がりを挙げています。ただし、直近のナフサ供給不安を主因とする倒産事例は、2026年7月時点ではまだ確認されていないとしています(帝国データバンク)。
利益が残らず、人が集まらず、工期が延び、資材が届かないことが、建設業の苦しさです。
共通しているのは「利益が残らない」
原因は違っても、情報サービス業はAIによる価格破壊、建設業は原価高騰で利益率が悪化し、どちらも売上があっても利益が残らない状態に陥っています。
原因は違います。
しかし結果は同じです。
両業界とも
利益率が急速に悪化しています。
例えば
情報サービス業では
AIによる価格破壊。
建設業では
原価高騰。
どちらも
売上があっても利益が残らない
状態です。
売上があっても利益が残らない状態が、最も危険です。
小規模企業ほど影響を受ける理由
人材確保や資材調達、AI投資で有利な大企業に比べ、小規模企業ほど影響を受けやすく、業界全体ではなく企業間の格差が急速に広がっています。
今回の調査で特徴的なのは、
どちらも
小規模事業者ほど苦しい
ことです。
情報サービス業では
5人未満企業が8割超。
建設業でも
一人親方や小規模工務店が急増しています。
大企業は
- 人材を確保できる
- 資材を優先調達できる
- AI投資ができる
- ブランドで価格を維持できる
しかし、
小規模企業はその逆です。
つまり、
業界全体ではなく
企業間格差
が急速に広がっています。
※帝国データバンクも、大手ゼネコンやハウスメーカーは資材を優先的に確保できる一方、中小工務店や小規模施工会社は材料が入らない、または仕入れ値が高すぎる状況にあり、「持つ者」と「持たざる者」の格差が広がっていると指摘しています(帝国データバンク)。
AIは敵ではない
情報サービス業の競争相手はAIそのものではなく、AIを活用する競合企業です。AIを使う会社が使わない会社から仕事を奪う構造は、士業やコンサル、デザイン会社にも共通します。
情報サービス業を見ると
「AIに仕事を奪われる」
という議論になりがちです。
しかし実際には、
AIを使う会社が、
AIを使わない会社から仕事を奪っています。
つまり
競争相手はAIではありません。
AIを活用する競合企業です。
AIを活用する競合企業に仕事を奪われる構造は、
士業も、
コンサルも、
広告代理店も、
デザイン会社も、
全く同じ構造です。
※生成AIの影響はデザイン業にも表れています。詳しくは「デザイン業の倒産166.6%増、ホームセンターは4期連続減益―2つの業界から見える「時代の変化」」で解説しています。
建設業もAI活用は避けられない
建設現場の作業はAIで代替できませんが、見積作成・積算・工程管理・原価管理・報告書作成などの事務はAI化でき、「現場は人、事務はAI」という分業が重要になります。
建設現場そのものはAIが代替できません。
しかし
- 見積作成
- 積算
- 工程管理
- 図面チェック
- 原価管理
- 写真整理
- 報告書作成
見積作成や工程管理などの事務業務は、急速にAI化できます。
つまり
現場は人、
事務はAI
という分業が今後ますます重要になります。
経営者が今考えるべきこと
2つの調査が示すのは、業界が悪いのではなくビジネスモデルが変わったということです。下請依存からの脱却やAI前提の業務設計など、選ばれる理由を持つ経営への転換が必要です。
今回の二つの調査から読み取れるのは、
業界が悪いのではありません。
ビジネスモデルが変わった
ということです。
これからは
- 下請依存から脱却する
- 専門性を高める
- AIを前提に業務設計する
- 価格ではなく価値で選ばれる会社になる
- ストック型収益を増やす
こうした経営への転換が必要になります。
| 転換の方向 | 具体的な取り組みの例 |
|---|---|
| 下請依存から脱却する | 元請・直販の比率を高め、取引先を分散する |
| 専門性を高める | 得意分野を絞り、価格以外で比較される領域をつくる |
| AIを前提に業務設計する | 見積・事務・制作工程をAIで効率化し、人は付加価値の高い業務に回す |
| 価格ではなく価値で選ばれる | 提案力・品質・アフター対応など選ばれる理由を明確にする |
| ストック型収益を増やす | 保守・運用・メンテナンス契約など継続収入を増やす |
「請ければ売れる」時代は終わりました。
「選ばれる理由」を持つ会社だけが利益を残せる時代です。
まとめ
建設業はリーマン・ショックを超える撤退件数、情報サービス業は過去10年で最多の倒産となりました。原因は違っても、利益を確保できる経営への転換が求められています。
建設業はリーマンショックを超える撤退件数となり、情報サービス業も過去10年で最多の倒産件数を記録しました。
両業界に共通するのは、「請負ビジネス」という構造です。しかし、苦境の原因は異なります。
- 情報サービス業は、生成AI・ノーコード・ローコードの普及による価格競争と業務の内製化。
- 建設業は、慢性的な人手不足、資材価格高騰、金利上昇、施工体制の逼迫。
どちらも最終的には「利益が残らない」という同じ経営課題に行き着いています。
これからは、単に仕事を受ける会社ではなく、
AIを活用し、高付加価値を提供し、利益を確保できる経営へ転換できる企業だけが生き残る時代です。
リーマンショックを超えた今回の数字は、一時的な景気の波ではなく、日本の中小企業経営が新しいステージへ入ったことを示す重要なシグナルといえるでしょう。
よくある質問(FAQ)
建設業と情報サービス業の倒産について、よく寄せられる質問に結論から回答します。
Q. 2026年上半期の建設業の倒産・廃業は何件ですか?
帝国データバンクによると、2026年上半期の建設業の倒産は1,043件、休廃業・解散は4,894件で、合計5,937件でした。リーマン・ショック直後の2009年(5,811件)を上回り、上半期として過去最多です。
Q. 2026年上半期の情報サービス業の倒産は何件ですか?
東京商工リサーチによると、2026年上半期の情報サービス業の倒産は166件(前年同期比18.5%増)で、2017年以降の過去10年で最多です。負債1億円未満が88.5%、従業員5人未満が81.3%を占めます。
Q. 建設業とIT業界の共通点は何ですか?
どちらも見積もり・受注・人の作業・納品で売上になる請負型ビジネスで、利益が工数・人件費・生産性で決まり、価格競争になると利益が薄くなりやすい構造です。
Q. 建設業と情報サービス業で倒産理由はどう違いますか?
情報サービス業は生成AIやノーコードの普及で単価が下がり、顧客の内製化が進んでいることが要因です。建設業は職人不足、資材高騰、金利上昇、確認申請の厳格化など供給能力の不足が要因です。
Q. 請負型の中小企業は何をすべきですか?
下請依存からの脱却、専門性の強化、AIを前提にした業務設計、価格ではなく価値で選ばれる会社づくり、保守・運用などストック型収益の拡大が重要です。
引用・参考資料
本記事の主な出典は次のとおりです(2026年10月27日の更新時にリンクを追加しました)。
- 東京商工リサーチ「2026年上半期(1-6月)『情報サービス業』倒産動向」(2026年7月14日)
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1203052_1527.html - 帝国データバンク「建設業の倒産・休廃業解散動向(2026年上半期)」(2026年7月14日)
https://www.tdb.co.jp/report/industry/20260714-kensetsu26y1-6/
