【2026年最新版】特定贈与信託を完全解説

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特定贈与信託とは、障害のある方の生活・療養のために、親族などの個人が金銭などの財産を信託銀行等に信託し、受益者が受け取る信託受益権について一定額まで贈与税を非課税にする制度です(相続税法21条の4)。非課税限度額は、特別障害者が6,000万円、特別障害者以外の特定障害者(中軽度の知的障害者、精神障害者保健福祉手帳2・3級の方など)が3,000万円で、身体障害者手帳3級以下の方は対象外です。

──経営者が「使える人・使えない人」を正しく理解すべき理由

相続・資産承継の相談現場で、
時折出てくる制度が 特定贈与信託 です。

ただし、この制度は

  • 名前は聞いたことがある
  • 何となく節税になりそう
  • でも実際はよく分からない

という理解にとどまっている経営者がほとんどです。

結論から言えば、特定贈与信託は


✔ 使える人はかなり限定される

✔ だがハマる人には非常に強力


という 「ピンポイント型の制度」 です。

この記事では、
2026年時点の最新制度を前提に、

  • 特定贈与信託とは何か
  • 税制上の優遇内容
  • 向いている経営者・向いていない経営者
  • よくある誤解と失敗

を、実務目線でわかりやすく解説します。

この記事の要点

  • 特定贈与信託は、障害のある方(特定障害者)の生活の安定のために、個人が財産を信託銀行等に信託する制度です。
  • 非課税限度額は、特別障害者が6,000万円、特別障害者以外の特定障害者が3,000万円です。
  • 身体障害者手帳で対象になるのは1・2級(特別障害者)だけで、3級以下の方は対象外です。
  • 信託は受益者が亡くなるまで続き、受益者には生活費や医療費として定期的に金銭が交付されます。
  • 手続きでは、障害者非課税信託申告書を信託銀行等を通じて税務署長に提出します。

■ 1. 特定贈与信託とは?(まず結論)

特定贈与信託とは、障害のある方の生活・療養のために財産を信託銀行等に信託し、非課税限度額までの部分について贈与税をかけない制度です。

特定贈与信託とは、


✔ 障害のある方の生活・療養のために

✔ 財産を信託銀行などに信託し

✔ 非課税限度額までの部分について贈与税を非課税にできる制度


です。

この制度は、
相続税対策ではなく「福祉的配慮」を目的とした制度
である点が最大の特徴です。

※補足:非課税になるのは限度額までの部分です。限度額を超えて信託した部分は、通常の贈与税の対象になります。


■ 2. 制度の法的な位置づけ

特定贈与信託は、相続税法21条の4の「特定障害者に対する贈与税の非課税」にもとづく、信託銀行等を受託者とする信託です。

特定贈与信託は、

  • 相続税法(21条の4 特定障害者に対する贈与税の非課税)
  • 信託法

に基づく 税制優遇付き信託制度 です。


✔ 誰が関与するのか?

  • 委託者:財産を出す人(多くは親・祖父母。個人に限られ、法人は委託者になれない)
  • 受益者:障害のある方(特定障害者)
  • 受託者:信託銀行等(信託業務を兼営する金融機関と信託会社)

👉 個人同士で自由に作れる信託ではありません。


■ 3. 特定贈与信託の最大の特徴|贈与税の非課税枠

非課税限度額は、受益者が特別障害者なら6,000万円、特別障害者以外の特定障害者なら3,000万円です。

この制度の核心は、
贈与税の非課税措置 にあります。


【非課税限度額(2026年時点)】

障害の区分非課税限度額
特別障害者(重度の障害者)6,000万円
特別障害者以外の特定障害者(中軽度の知的障害者、精神障害者保健福祉手帳2・3級の方など)3,000万円
特定贈与信託の非課税限度額(信託協会の資料をもとに作成)

👉 この金額までは、
贈与税がかかりません。

※補足:「特定障害者」は、特別障害者と、特別障害者以外の特定障害者を合わせた呼び方です。


✔ 「暦年贈与」や「相続時精算課税」とは別枠

  • 年110万円とは無関係
  • 非課税限度額までの部分は、暦年課税・相続時精算課税とは別枠で非課税

■ 4. どんな人が「受益者」になれるのか?

受益者になれるのは特定障害者に限られ、身体障害者は手帳1・2級の方だけが対象です。

ここが最も重要な制限です。


✔ 受益者になれるのは「障害者」に限られる

具体的には、

  • 身体障害者手帳(1級・2級の方に限る)
  • 療育手帳など、知的障害の判定を受けたことがわかる書類
  • 精神障害者保健福祉手帳(1級〜3級)

などを有する方が対象。

区分主な対象者非課税限度額
特別障害者重度の知的障害者と判定された方、精神障害者保健福祉手帳1級の方、身体障害者手帳1・2級の方、65歳以上で市町村長等の認定を受けた方など6,000万円
特別障害者以外の特定障害者中軽度の知的障害者と判定された方、精神障害者保健福祉手帳2・3級の方、65歳以上で中軽度の知的障害者に準ずると認定された方3,000万円
対象外身体障害者手帳3級以下の方(中軽度の身体障害者)—
受益者になれる方の区分(信託協会の資料をもとに作成)

✔ 「将来障害が心配」では使えない


❌ 健常者の子・孫には使えない

❌ 老後不安対策では使えない


この点を誤解して検討すると、
時間とコストを無駄にします。


■ 5. 特定贈与信託の仕組み(お金の流れ)

親などが信託銀行等と信託契約を結んで財産を信託し、信託銀行等が管理して、受益者に生活費などを定期的に交付します。

① 親・祖父母が金銭などの財産を信託銀行等へ信託する

② 信託契約を締結

③ 信託銀行等が受益者(障害者)のために管理

④ 生活費・医療費などとして定期的に給付

👉 一括で自由に使えるお金にはならない
という点が重要です。

※補足:信託できる財産は、金銭、有価証券、継続して賃貸している不動産、受益者の居住用不動産(ほかの財産とあわせて信託する場合に限る)などです。信託は受益者が亡くなるまで続き、あらかじめ期間を決めることはできません。受益者が亡くなった後の残りの財産は、受益者の相続人や受遺者に渡ります。信託するときに、障害者団体や社会福祉施設などを寄附先に指定しておくこともできます。


■ 6. 経営者にとってのメリット

主なメリットは、高額な非課税枠と、信託銀行等が財産を管理して受益者の生活費を確保できることです。

✔ メリット①:高額な贈与税非課税枠

  • 最大6,000万円(特別障害者の場合。それ以外の特定障害者は3,000万円)
  • 生前に安心して資金を移せる

✔ メリット②:資金の使途が管理される

  • 浪費・詐欺リスクを回避
  • 親亡き後も生活費を確保

✔ メリット③:相続対策と福祉配慮を両立


✔「税金対策」ではなく「安心の設計」


として評価される。


■ 7. デメリット・制約(ここを理解しないと失敗)

主なデメリットは、使い道が生活・療養に限られること、受託者が信託銀行等に限られること、費用がかかることです。

❌ デメリット①:使途の自由がない

  • 生活費
  • 医療費
  • 療養関連費用

👉 投資や贅沢目的には使えない。


❌ デメリット②:信託銀行等しか受託できない

  • 家族信託のように柔軟ではない
  • 契約条件は金融機関主導

❌ デメリット③:コストがかかる

  • 初期費用
  • 信託報酬(継続費用)

※補足:費用は信託銀行等によって異なります。たとえば三菱UFJ信託銀行では、信託の設定時(新規・追加)に信託元本の3.3%の信託報酬がかかります。


❌ デメリット④:相続税対策の万能薬ではない

  • 健常な相続人には無関係
  • 株式承継には使えない

■ 8. 経営者が検討すべき典型ケース

障害のある子がいて、親亡き後の生活資金を確保したい経営者が、検討の対象になります。

✔ 障害のある子がいる

✔ 親亡き後の生活が最大の不安

✔ 相続で兄弟間トラブルを避けたい

✔ 十分な金融資産がある

✔ 「管理」まで含めて任せたい


■ 9. 向いていないケース(重要)

受益者になれる障害者がいない場合や、節税・自社株承継が主な目的の場合は、ほかの方法が向いています。

❌ 障害者がいない

❌ 純粋な節税目的

❌ 自社株の承継が主目的

❌ 柔軟な資金運用をしたい

この場合は、

  • 家族信託
  • 遺言信託
  • 生前贈与

の方が適しています。

制度主な目的受託者特徴
特定贈与信託障害のある方の生活の安定信託銀行等贈与税の非課税枠あり(6,000万円・3,000万円)
家族信託財産管理・承継の柔軟な設計家族など税制上の優遇はなく、設計の自由度が高い
後見制度支援信託成年後見の対象者の財産保全信託銀行等払戻しに家庭裁判所の指示書が必要
特定贈与信託と、ほかの信託の比較

■ 10. よくある誤解(経営者編)

特定贈与信託は、障害者のための制度で、節税の切り札でも、自由に使えるお金でもありません。

❌ 誤解①:誰でも使える贈与信託

→ 障害者限定

❌ 誤解②:相続税対策の切り札

→ 目的が違う

❌ 誤解③:自由に使えるお金

→ 使途制限あり


■ 11. 実務上の注意点(2026年時点)

手続きでは申告書の提出と障害区分の証明が必要で、相続全体の設計とあわせて検討することが大切です。

  • 障害者非課税信託申告書を、信託銀行等を通じて所轄の税務署長に提出する必要がある
  • 受益者の障害区分の確認が必須(判定書や手帳の写しなどの証明書類を添付する)
  • 相続全体設計と必ずセットで検討
  • 他の兄弟姉妹への説明が重要

■ 12. まとめ|特定贈与信託は「福祉と承継のための制度」

特定贈与信託は、障害のある家族の生活を守るための制度で、対象者と非課税限度額を正しく確認したうえで検討することが大切です。

最後に要点を整理します。


✔ 特定贈与信託は障害者のための制度

✔ 特別障害者は6,000万円、それ以外の特定障害者は3,000万円まで贈与税非課税

✔ 信託銀行等が管理・給付

✔ 経営者でも使えるのは限定ケース

✔ 節税目的だけでは使えない

✔ 相続・信託設計の一部として検討


特定贈与信託は、


✔ 税金を減らすための制度ではなく

✔ 家族を守るための制度


です。

経営者が検討する場合は、
相続・信託・税務を一体で設計できる専門家とともに、
慎重に進めることが不可欠です。

※本記事は一般的な解説です。対象となるか、どの区分に当たるかは、信託銀行等や税理士などの専門家にご確認ください。


よくある質問(FAQ)

特定贈与信託について、よく寄せられる質問に結論から回答します。

Q. 特定贈与信託とは何ですか?

障害のある方の生活・療養のために、親族などの個人が財産を信託銀行等に信託し、非課税限度額までの部分について贈与税を非課税にする制度です(相続税法21条の4)。

Q. 特定贈与信託の非課税限度額はいくらですか?

受益者が特別障害者なら6,000万円、特別障害者以外の特定障害者なら3,000万円です。限度額を超えた部分は通常の贈与税の対象になります。

Q. 身体障害者手帳を持っていれば利用できますか?

1級・2級の方(特別障害者)は利用できますが、3級以下の方は対象外です。中軽度で対象になるのは、知的障害者と精神障害者保健福祉手帳2・3級の方などです。

Q. 受益者が亡くなった後、残った財産はどうなりますか?

信託は受益者の死亡で終了し、残りの財産は受益者の相続人や受遺者に渡ります。信託するときに、障害者団体や社会福祉施設などを寄附先に指定しておくこともできます。

Q. 特定贈与信託の手続きで必要なものは?

信託銀行等と信託契約を結び、障害者非課税信託申告書を信託銀行等を通じて税務署長に提出します。障害の区分を証明する書類や受益者の住民票の写しなどを添付します。

出典・参考

本記事の主な出典と、2026年10月30日の更新時に確認した資料は次のとおりです。

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