市場が成長しても会社は生き残れない?5業種の最新データから見えた中小企業経営の共通課題

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はじめに|市場が伸びているのに、なぜ倒産する企業があるのか

市場が拡大している業界でも、倒産する企業はあります。

反対に、厳しい競争環境の中でも、新しい顧客を獲得し、成長を続けている企業もあります。

この違いはどこにあるのでしょうか。

2026年9月末から10月初旬にかけて、帝国データバンクと東京商工リサーチから、5つの業種に関する興味深いレポートが公表されました。

今回取り上げるのは、次の5業種です。

  • ラーメン店
  • 和菓子店
  • 玩具店
  • 防衛関連産業
  • 婚活・恋活マッチングアプリ

一見すると、まったく異なる業界です。

しかし、それぞれのデータを比較すると、現在の中小企業経営に共通する重要な変化が見えてきます。

それは、市場の成長と企業の成長は一致しないこと、そして従来のビジネスモデルを維持するだけでは競争力を保てなくなっていることです。

今回は各業界の最新データを整理しながら、中小企業経営者が押さえておくべき共通課題と具体的な対策を解説します。

1.ラーメン店の倒産は再び増加。中堅企業にも広がる経営難

帝国データバンクの調査によると、2026年1~9月に発生したラーメン店の倒産は56件でした。

前年2025年の年間倒産件数は60件であり、わずか9カ月で前年の年間件数に迫る水準となっています。

今回注目したいのは、倒産企業の業歴です。

2026年の倒産56件のうち、業歴10年以上の企業は36件。全体の64.3%を占めています。

これまでラーメン店の倒産は、創業間もない個人店や小規模店舗が目立っていました。しかし、2026年は一定の知名度や実績を持ち、複数店舗を展開してきた中堅クラスの企業にも倒産が広がっています。

背景にあるのは、食材価格や人件費の上昇です。

ラーメン店では、いわゆる「1,000円の壁」が価格設定の制約となっています。原材料費が上昇しても、価格を引き上げれば顧客が離れる可能性があり、十分な価格転嫁ができない企業も少なくありません。

また、多店舗展開によるスケールメリットを生かせず、売上高を確保していても利益が残らない企業もあります。

一方、大手チェーンでは、1杯3,000円を超えるプレミアムな体験の提供や、サプライチェーン管理、DX化による効率経営への転換も進んでいます。

重要なのは、店舗数や売上を増やすことではなく、客数が減少しても利益を確保できる経営体質をつくることです。

2.和菓子店の倒産は過去最多ペース。老舗でも安心できない

帝国データバンクによると、2026年1~9月の和菓子店の倒産は22件となりました。

これまで年間倒産件数が最も多かった2025年を上回るペースで推移しています。

特に注目すべきなのが、長い歴史を持つ老舗企業の倒産です。

2020年以降の倒産138件のうち、業歴100年以上の企業は24件で17.4%を占めています。業歴50年以上の企業は全体の約半数に上ります。

和菓子店が直面している課題は複合的です。

まず、原材料費の上昇です。小豆、砂糖、もち米などに加え、包装資材、光熱費、人件費も上昇しています。

しかし、和菓子は日常の茶請けや地域の贈答品として購入されることも多く、値上げに対する抵抗感が生じやすい商品です。

価格を引き上げた結果、来店頻度や販売数量が減少し、十分な価格転嫁につながらないケースもあります。

さらに、顧客の高齢化、若年層の和菓子離れ、冠婚葬祭の簡素化など、需要面でも変化が起きています。

加えて、職人の高齢化や技術承継の問題、店舗・工場の設備投資負担、コロナ禍で借り入れた資金の返済負担も経営を圧迫しています。

一方で、成長している企業もあります。

観光地でのインバウンド需要、OEM製造、ネット通販、ふるさと納税など、販売チャネルを拡大する動きです。

また、フルーツ大福やネオ和菓子など、新しい商品を開発して若年層の需要を取り込む企業もあります。

老舗としての歴史や技術は重要な資産ですが、それを守るだけではなく、新しい市場に適応することが必要になっています。

3.玩具店市場は過去最高。それでも従来型店舗は苦戦

ラーメン店や和菓子店とは対照的に、市場全体が拡大しているのが玩具店業界です。

帝国データバンクによると、2025年度の玩具店市場は7,620億円となり、前年度から8.6%増加しました。

2020年度の4,254億円と比較すると約1.8倍です。

しかし、この市場成長をけん引しているのは、従来型のおもちゃ店ではありません。

ガチャ専門店とトレーディングカード専門店です。

2020年度を100とした指数では、2025年度はガチャ専門店が385、トレカ専門店が307となった一方、従来型のおもちゃ店は151にとどまりました。

また、2025年度の市場増加額602億円のうち、7割超をガチャ・トレカ専門店が占めています。

この背景には、消費者ニーズの変化があります。

近年は、子どもだけでなく大人も玩具を楽しむ「キダルト」需要が拡大しています。

特定のキャラクターを狙って購入する指名買いや、ガチャを引く体験そのものを楽しむコト消費など、従来の玩具店とは異なる購買行動が広がっています。

一方、従来型店舗では、ネット通販や大手家電量販店との競争が激化しています。

さらに、ゲームソフトのダウンロード販売が普及したことで、店頭に足を運ぶ理由も弱くなっています。

2026年10月1日には、日本トイザらスが民事再生法の適用を申請しました。

この事例からも、従来の強みを維持するだけでは事業環境の変化に対応できないことが分かります。

これからの店舗経営では、何でもそろうことよりも、顧客がわざわざ訪れる理由をつくることが重要です。

4.防衛関連産業は4,628社。需要拡大の中で企業の選別が進む

帝国データバンクは、防衛省や各地の自衛隊、防衛関連組織と直接取引のある企業4,628社を分析しました。

2027年度の防衛省概算要求は8兆8,900億円と過去最大規模です。

今回の調査で注目したいのは、需要の拡大だけでなく、取引企業の構成が変化している点です。

業種別では、建設業の構成比が2013年の29.1%から2026年には31.5%へ上昇し、卸売業を抜いて最多となりました。

背景には、自衛隊施設の強靱化や既存施設の保守・更新需要があります。

地域別では、九州の構成比が15.1%から16.8%へ上昇。沖縄県も3.1%から5.1%へ上昇しました。

一方、北海道は12.1%から10.2%へ低下しています。

さらに重要なのが、企業規模別の変化です。

年商1~10億円未満の企業は55.1%から49.8%へ低下した一方、10~50億円未満の企業は19.7%から23.0%へ上昇しました。

つまり、需要が拡大している市場でも、小規模事業者の構成比が低下し、中規模・中堅企業の存在感が高まっているのです。

これは、発注規模の拡大に伴い、財務・営業体力や継続供給能力を備えた企業が選ばれやすくなっている可能性を示しています。

中小企業にとっては、建設、設備保守、設計、ITなどの関連分野で新しい事業機会が生まれる可能性があります。

ただし、成長市場への参入には、必要な技術、品質管理、資金力、取引要件などを事前に確認する必要があります。

5.マッチングアプリ運営会社は7倍に増加。ニッチ市場で競争が激化

東京商工リサーチの調査によると、2026年の婚活・恋活マッチングアプリ運営会社数は35社となり、前年比25.0%増加しました。

2019年の5社と比較すると7倍です。

マッチングアプリは、若年層を中心とした出会いの手段から、社会的に広く利用されるサービスへと変化しています。

こども家庭庁の2024年度調査でも、既婚者が結婚相手と出会った場所・機会としてマッチングアプリが25.1%で最多となっています。

注目したいのは、サービスの細分化です。

顔写真不要、アバター型、再婚希望者向け、シニア層向けなど、特定のニーズに特化したサービスが登場しています。

また、運営企業の57.1%は資本金500万円未満であり、小資本での参入も目立ちます。

一方で、参入企業が増える中、サービスを終了する企業も出ています。

市場が拡大しているからといって、すべての企業が利益を確保できるわけではありません。

大手企業と同じ顧客層を取り合うのではなく、特定の顧客が抱える課題に対応する独自のサービスを提供できるかが重要です。

6.5業種に共通する5つの経営課題

ここまでの5業種を比較すると、共通する経営課題が見えてきます。

① 市場の成長と自社の成長は一致しない

玩具市場は過去最高規模となりましたが、従来型のおもちゃ店は市場全体ほど成長していません。

防衛関連産業でも、需要拡大の中で企業規模による構成比の変化が見られます。

重要なのは、市場が伸びているかではなく、自社がその市場で利益を獲得できているかです。

② 価格転嫁できない企業は利益を失う

ラーメン店や和菓子店では、原材料費、人件費、光熱費の上昇が収益を圧迫しています。

値上げすれば顧客が離れる可能性があり、値上げしなければ利益率が低下します。

単純な値上げではなく、提供価値や商品構成、顧客層を見直す必要があります。

③ 従来の成功モデルが通用しなくなっている

職人の技術、老舗ブランド、幅広い品ぞろえ、既存の取引関係など、これまでの強みだけでは競争力を維持しにくくなっています。

自社の強みを生かしながら、顧客ニーズに合わせて事業モデルを変えることが重要です。

④ 企業規模ではなく、経営体制が競争力を左右する

事業規模が拡大すると、固定費や管理負担も増加します。

売上や店舗数の拡大を利益につなげるには、管理職の育成、権限移譲、採算管理、業務の標準化が必要です。

経営者個人の能力だけに依存する経営から、組織全体で成果を生み出せる経営へ転換しなければなりません。

⑤ 投資には明確な回収計画が必要

新店舗、工場、設備、システム、人材への投資は成長に必要です。

しかし、投資によって固定費や借入返済が増加すれば、売上が計画どおりに伸びなかった場合の経営リスクも高まります。

投資目的、収益改善効果、回収期間、資金繰りを一体で管理することが重要です。

7.中小企業経営者が今すぐ取り組むべき7つのこと

今回のレポートから得られる教訓を、具体的な経営行動に落とし込むと次の7つになります。

  1. 商品・サービス別の利益を把握する
    • 売上高だけでなく、粗利益率や営業利益率を確認する。
    • 利益の出ていない商品・サービスを特定する。
  2. 価格設定を見直す
    • 原材料費、人件費、固定費の変化を把握する。
    • 価格改定、高付加価値化、商品構成の変更を検討する。
  3. 顧客の変化を把握する
    • 顧客の年齢層、購入頻度、ニーズを確認する。
    • 既存顧客以外に新しい需要がないか調査する。
  4. 自社の強みを明確にする
    • 技術、専門性、ブランド、サービスなどを整理する。
    • 競合と比較して選ばれる理由を明確にする。
  5. 新しい販路・収益モデルを開拓する
    • EC、OEM、法人取引、ストック型収益などを検討する。
    • 既存の販売チャネルだけに依存しない。
  6. 投資と資金繰りを管理する
    • 投資回収期間と借入返済額を確認する。
    • 月次の資金繰り予測を作成する。
  7. 組織の自律化を進める
    • 管理職の役割・権限を明確にする。
    • 社員が自ら判断・改善できる仕組みをつくる。
    • 技術やノウハウを組織に蓄積する。

まとめ|市場の変化に合わせて、経営の仕組みを変えられるか

今回の5業種のレポートから見えてきたのは、業界によって市場環境や競争条件は異なるものの、企業経営に共通する課題が存在するということです。

市場が成長していても、利益を獲得できなければ企業は成長できません。

長い歴史や実績があっても、顧客ニーズの変化に対応できなければ事業の継続は難しくなります。

反対に、厳しい市場環境の中でも、顧客の変化を捉え、独自の価値を提供し、収益構造を見直す企業には新しい成長機会があります。

経営者が今、考えるべきなのは、単に売上を増やすことではありません。

  • 自社は何で利益を生み出しているのか
  • 顧客から選ばれる理由は何か
  • 従来のビジネスモデルは今後も通用するのか
  • 投資に見合う利益を生み出せているか
  • 社長がいなくても組織として事業を運営できるか

こうした問いを改めて考える必要があります。

市場の変化を止めることはできません。しかし、自社の経営構造を変えることはできます。

これからの中小企業経営では、外部環境の変化に対応しながら、自社の強みを生かした利益構造と組織体制を構築できるかどうかが、事業の持続的な成長を左右するのではないでしょうか。

皆さんの会社では、今どのような変化が起きていますか?

売上は伸びているのに利益が残らない、顧客層が変化している、これまでの売り方が通用しなくなっているなど、ぜひ自社の状況を振り返ってみてください。


参考資料・出典

  • 帝国データバンク「『ラーメン店』の倒産動向(2026年1-9月)」2026年10月1日
  • 帝国データバンク「『和菓子店』の倒産動向(2026年1-9月)」2026年10月3日
  • 帝国データバンク「『玩具店(おもちゃ店)』業界動向調査(2025年度)」2026年10月1日
  • 帝国データバンク「防衛関連産業4628社の実態調査(2026年)」2026年9月29日
  • 東京商工リサーチ「2026年『婚活・恋活マッチングアプリ』企業動向調査」2026年9月25日

※各統計の対象範囲・調査方法は異なります。本文では各調査の公表値を使用しています。

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