新型コロナウイルスの感染拡大から6年以上が経過しました。
しかし、中小企業経営に残された「コロナの後遺症」は、まだ終わっていません。
東京商工リサーチが2026年8月3日に公表したデータによると、2026年7月の「新型コロナ」関連の経営破たんは176件に達し、2026年に入って最多となりました。
2020年2月の第1号からの累計は、ついに1万4,458件です。
さらに注目したいのは、単に「コロナの影響が長引いている」ということではありません。
現在、中小企業を苦しめているのは、
コロナ禍で抱えた過剰債務
+
物価・原材料・エネルギーコスト上昇
+
人件費上昇
+
借入金利上昇
という複合的な経営負担です。
コロナ後の売上回復だけでは解決できない企業が、徐々に資金繰りの限界を迎えている可能性があります。
Contents
結論|問題は「コロナ」そのものから「コロナ後の財務」に変わった
今回のデータから中小企業経営者が見るべきポイントは、大きく4つあります。
1つ目は、2026年7月のコロナ関連破たんが176件となり、今年最多になったこと。
2つ目は、累計が1万4,458件まで増加したこと。
3つ目は、東京商工リサーチが今後も「月間100件台」で推移するとみていること。
そして4つ目が最も重要です。
現在の問題は、感染拡大や営業自粛そのものではありません。
コロナ禍で積み上がった借入を抱えた状態で、コスト増、人件費増、金利上昇という新たな負担に対応しなければならなくなっていることです。
2026年7月のコロナ破たんは176件
東京商工リサーチによると、2026年7月に判明した「新型コロナ」関連の経営破たんは、負債1,000万円未満を含め176件でした。
2026年の推移を見ると、
・3月:162件
・5月:119件
・6月:139件
・7月:176件
となっており、5月にいったん119件まで減少したものの、その後2カ月連続で増加し、7月は2026年最多となりました。
累計では1万4,458件に達しています。
重要なのは、コロナ破たんが過去の出来事になっていないことです。
全国250社に1社がコロナ破たん
東京商工リサーチは、2016年の総務省「経済センサス」による国内企業数358万9,333社を母数として、コロナ破たん率を算出しています。
その比率は0.402%。
単純計算すると、全国の企業約250社に1社がコロナ関連で経営破たんしたことになります。
地域別では、
東京都 0.686%
福岡県 0.652%
宮城県 0.586%
群馬県 0.510%
京都府 0.489%
となっています。
一方、最も低い岐阜県は0.165%であり、地域によって大きな差があります。
件数では東京都が2,871件
累計件数では東京都が2,871件で、全体の19.8%を占めています。
続いて、
大阪府 1,304件
福岡県 883件
愛知県 638件
北海道 628件
兵庫県 610件
神奈川県 603件
埼玉県 455件
千葉県 400件
京都府 388件
広島県 379件
宮城県 349件
となっています。
コロナ破たんは一部地域だけの問題ではなく、全国に広がっています。
なぜ2026年になってもコロナ破たんが続くのか
ここからが中小企業経営者にとって重要です。
現在の企業経営を苦しめている直接的な要因を、すべて「コロナ」に求めるのは適切ではありません。
東京商工リサーチが指摘しているのは、コロナ禍で抱えた過剰債務を解消できていない企業に、新たな経営負担が重なっていることです。
コロナ禍では多くの企業が資金繰りを維持するために融資を利用しました。
中小企業庁の過去の資料でも、民間ゼロゼロ融資の返済開始時期は2023年7月から2024年4月に集中し、最後の大きなピークは2024年4月とされていました。
つまり現在は、「融資を受けて生き延びる段階」から、「借りた資金を返しながら本業で利益を出す段階」へ完全に移っています。
さらに「物価高」が利益を削っている
もう一つ見逃せないのが物価高です。
東京商工リサーチによると、2026年上半期の「物価高」倒産は439件。
前年同期比27.6%増となり、上半期として過去最多を更新しました。
特に問題になるのが、仕入価格や原材料価格が上がっても、その上昇分を販売価格へ十分に転嫁できない企業です。
売上高だけを見ると増えていても、粗利益率が低下すれば手元に残る利益は減ります。
そこに借入返済が重なれば、黒字でもキャッシュが減っていく可能性があります。
「売上が戻ったから大丈夫」ではない
ここが今回のニュースから経営者が最も学ぶべきポイントでしょう。
コロナ後に売上が回復した企業でも、安全とは限りません。
例えば、
コロナ前
売上1億円
営業利益800万円
借入3,000万円
だった企業が、
現在
売上1億1,000万円
営業利益300万円
借入6,000万円
になっていればどうでしょうか。
売上だけを見ると成長しています。
しかし、利益は減り、借入は増えています。
この状態で人件費、金利、原材料価格がさらに上がれば、資金繰りは急速に悪化する可能性があります。
経営を見る際には「売上が戻ったか」ではなく、利益とキャッシュフロー、そして債務返済能力が回復したかを見る必要があります。
特に注意したい企業
特に注意したいのは、次のような企業です。
・コロナ融資の借入残高がまだ大きい
・借入本数が増えている
・借入返済後の現金がほとんど残らない
・売上は戻ったが利益率が低下している
・原材料・仕入価格を十分に価格転嫁できていない
・最低賃金上昇などで人件費負担が急増している
・変動金利の借入が多い
・毎月の試算表を作成していない
・資金繰り表を作成していない
複数該当する企業は、「まだ支払いができているから大丈夫」と判断するのではなく、今後12カ月程度の資金繰りを確認しておくべきでしょう。
経営者が今確認すべき5つの数字
1.借入残高
コロナ前と現在を比較します。
借入が増えている場合、その増加額に見合う利益・キャッシュフローを生み出せているかを確認します。
2.月間返済額
毎月の元金返済額を確認します。
損益計算書上の利益だけではなく、返済後にいくら現金が残るかを見ることが重要です。
3.粗利益率
物価高局面では売上高以上に重要です。
値上げによって売上が増えていても、仕入・原材料価格がそれ以上に上昇していれば収益力は悪化します。
4.人件費率
最低賃金や採用難による賃金上昇が続くなか、人件費増加を吸収できるだけの付加価値を生み出せているか確認します。
5.現預金
「あと何カ月売上が落ちても耐えられるか」という視点で確認します。
利益が出ていても現預金が不足すれば、企業経営は続けられません。
資金繰りが厳しくなってからでは遅い
金融機関への相談で重要なのはタイミングです。
資金が完全に不足してから、
「来月の支払いができません」
と相談するよりも、数カ月先の資金不足を予測した段階で相談した方が、検討できる選択肢は多くなります。
そのためにも、最低でも12カ月程度の資金繰り予定を作成しておくことをおすすめします。
借換えや返済条件の見直し等についても、必要性が見えてきた段階で金融機関や認定経営革新等支援機関などの専門家へ相談することが重要です。
今後もコロナ破たんは月100件台で推移する可能性
東京商工リサーチは、コロナ破たんについて、今後も一進一退を続けながら月間100件台で推移するとみています。
これは「コロナ禍がまだ続いている」という意味ではありません。
むしろ、コロナ禍で悪化した財務体質を十分に改善できないまま、物価、人件費、金利など経営環境が変化した企業の退出が続いている、と考えるべきでしょう。
まとめ|これから見るべきは「売上」ではなく「返済後に現金が残るか」
2026年7月の新型コロナ関連破たんは176件となり、今年最多を記録しました。
累計は1万4,458件。
約250社に1社という計算になります。
しかし、本当に見るべきなのは「コロナ破たん」という名称ではありません。
現在の中小企業を取り巻いているのは、
過剰債務
×
物価高
×
人件費上昇
×
金利上昇
という複合的な経営環境です。
売上が回復しているだけでは安心できません。
「利益が残っているか」
「借入返済後にも現金が残っているか」
「今後12カ月の資金繰りに問題がないか」
この3点を改めて確認してみてください。
主な出典
東京商工リサーチ「新型コロナ破たん、7月は176件でことし最多」(2026年8月3日)
東京商工リサーチ「2026年上半期『物価高』倒産 最多の439件」
中小企業庁「民間ゼロゼロ融資の返済開始時期」関連資料