【2026年最新】タングステンショック到来!中国輸出規制で製造業に迫る危機|アルミショックの次は「超硬工具不足」か

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【2026年最新】タングステンショック到来!中国輸出規制で製造業に迫る危機

「ナフサショック」「アルミショック」に続き、今度は製造業にとってさらに深刻な危機が訪れようとしています。

その危機が、

タングステンショック

です。

多くの経営者は原油価格や中東情勢に注目していますが、実際には日本のものづくり企業にとって、タングステン不足の方が深刻な問題になる可能性があります。

なぜなら、タングステンは代替が極めて難しく、自動車、航空機、半導体、精密機械、金型加工など、日本の基幹産業を支える「超硬工具」の主原料だからです。

2026年に入り、中国による輸出規制強化の影響が顕在化し、すでに国内メーカーでは値上げや供給制限が始まっています。

今回は、タングステンショックの全貌と、中小企業が今から備えるべき対策について解説します。

この記事の要点

  • タングステンは超硬工具の主原料で、世界の鉱石生産の約8割を中国が占めています。
  • 中国は2025年2月にタングステンを輸出規制の対象に加え、2026年1月の対日規制強化以降、炭化タングステンとタングステン粉末の日本向け輸出は2〜4月にゼロとなりました。
  • 三菱マテリアルは超硬合金素材を最大3倍以上に値上げし、超硬工具のコスト上昇・納期遅延・利益率悪化が製造業、特に価格転嫁しにくい下請け加工業者に広がるおそれがあります。
  • 使用済み超硬工具(スクラップ)はタングステンを80%以上含む資源で、日本機械工具工業会は2026年6月に国内還流を促すガイドラインを改定しました。
  • 中小企業は、工具の在庫管理、スクラップ回収ルートの確保、工具寿命の延長、価格転嫁、脱中国リスクの認識の5つに今すぐ取り組むことが重要です。

【追記】公開後の主な動き(2026年10月23日時点)

記事公開(2026年6月)後も、日本企業のリサイクル投資の具体化や、米国のタングステンスクラップ輸出制限など、調達環境を左右する動きが続いています。

時期出来事
2025年2月中国がタングステン関連品目に新たな輸出規制を導入(USGS)
2026年1月中国が軍民両用品目の対日輸出規制を強化(共同通信)
2026年2〜4月炭化タングステンとタングステン粉末の日本向け輸出がゼロ(中国税関総署のデータ、共同通信)
2026年5月三菱マテリアルが日本とドイツでタングステン再生能力増強に計100億円強の投資を発表(日刊工業新聞)。住友電工は中国からの調達が完全に停止したと発表(共同通信)
2026年6月三菱マテリアルが超硬合金素材を6月受注分から3倍超に値上げ(共同通信)。日本機械工具工業会が超硬工具スクラップのリサイクルガイドラインを改定(日本機械工具工業会)
2026年7月三菱マテリアルがドイツ・ゴスラー工場の再生能力増強(約5,000万ユーロ、年間約5,000トン→7,000トン、2028年完成予定)を発表(MONOist)
2026年8月米国商務省産業安全保障局(BIS)が、タングステンのくず・スクラップの国外販売を原則禁止する規則を公表(8月27日から1年間)(米連邦官報)
タングステンをめぐる主な動き(各出典をもとに作成)

米国のタングステンスクラップ輸出制限

2026年8月27日から1年間、米国の事業者はタングステンのくず・スクラップを原則として米国内の事業者にしか販売できなくなりました。国外への販売にはBISの例外承認が必要です。

住友電工は中国からの調達停止後、米国からの調達とリサイクルで必要量をおおむね賄っているとしています(共同通信)。米国の制限により、米国産の再生原料を使う日本企業の調達に影響が出る可能性があります(分析)。規則の詳細はHolland & Knightの解説も参考になります。

国内メーカーの対応

三菱マテリアル、住友電工ともに、中国に依存しないリサイクル原料の比率を高める方向で設備投資を進めています。

  • 三菱マテリアル:日本新金属の秋田工場に約80億円を投じて年間処理能力を2倍の2,400トンに、ドイツの子会社で1.4倍の7,000トンに引き上げる計画です。2030年度にリサイクル原料比率100%を目指しています(日刊工業新聞)。
  • 住友電工:原料の約3割を中国から調達していましたが、2026年5月に中国からの調達が完全に停止したと発表しました(共同通信)。

中国の日本向け輸出について、2026年5月以降の品目別データは本記事の追記時点で確認できていません。最新の調達状況は、取引先の工具商社やメーカーに確認することをおすすめします。


タングステンとは何か?

タングステンは、硬さ・耐摩耗性・耐熱性に優れたレアメタル(希少金属)です。その性質から、超硬工具、金型、半導体部材、航空宇宙部品などに幅広く使われています。

タングステンはレアアースではなく、

レアメタル(希少金属)

に分類される金属です。

最大の特徴は、

  • ダイヤモンドに次ぐ硬さ
  • 高い耐摩耗性
  • 極めて高い耐熱性能

を持つことです。

そのため、

  • 超硬工具
  • ドリル
  • エンドミル
  • 金型
  • 半導体部材
  • 電子機器部材
  • 航空宇宙部品

などに幅広く使用されています。

現代の製造業において、

「タングステンなしでは加工できない」

と言っても過言ではありません。


なぜ今タングステン不足なのか?

タングステン不足の原因は、生産の約8割を中国が占める供給構造、中国による輸出規制の強化、それを受けた国内メーカーの値上げの3つが重なっていることです。

理由① 中国が世界シェアの約80%を握っている

米国地質調査所(USGS)の推計では、2025年の世界のタングステン鉱山生産約8万5,000トンのうち、中国は約6万7,000トン(約79%)を占めています(USGS Mineral Commodity Summaries 2026)。

最大の問題は供給の偏在です。

現在、世界のタングステン生産量の約80%を中国が占めています。

つまり、中国の政策ひとつで世界市場が大きく左右される構造になっています。


理由② 中国が輸出規制を強化

中国は2025年2月にタングステンを輸出規制の対象に加え、2026年1月には軍民両用品目の対日輸出規制を強化しました。その結果、日本向けの一部加工品の輸出が止まっています。

2025年2月、中国政府はタングステンなどのレアメタルを輸出規制対象に追加しました。

さらに2026年に入り、

  • 炭化タングステン
  • タングステン粉末

の日本向け輸出が実質停止状態となっています。

中国税関のデータによれば、

2026年2月~4月の日本向け輸出量はゼロ。

つまり、

「中国から物が入ってこない」

という事態が現実に起きています。


理由③ 国内メーカーも値上げへ

需給逼迫を受け、住友電工や三菱マテリアルなどの大手メーカーが価格を改定しました。三菱マテリアルは超硬合金素材を最大3倍以上に値上げしています。

需給逼迫を受け、

  • 住友電工
  • 三菱マテリアル

などの大手メーカーは価格改定を実施。

三菱マテリアルは一部製品について最大3倍以上の値上げを発表しています。

加工現場では、

「超硬工具が手に入らない」

「納期が見えない」

という声も増え始めています。


本当に怖いのは「代替材料がほぼない」こと

タングステンの最大のリスクは、超硬工具に必要な硬度・耐熱性・耐摩耗性を同時に満たす代替材料がほぼないことです。供給不足がそのまま生産能力の低下につながります。

アルミや鉄であれば代替材料があります。

しかしタングステンは違います。

超硬工具の性能を実現するうえで、

  • 硬度
  • 耐熱性
  • 耐摩耗性

を同時に満たす代替材料はほぼ存在しません。

そのため、

供給不足=生産能力低下

につながる可能性があります。


製造業にどんな影響が出るのか?

タングステン不足が製造業に与える影響は、工具コスト上昇、納期遅延、利益率悪化、設備稼働率低下、倒産リスク増加の5つです。特に下請け加工業者への影響が大きくなります。

① 工具コスト上昇

超硬工具の価格が上がると、切削加工を行う企業の製造原価が増加します。工具を多く使う加工業ほど影響が大きくなります。

切削工具価格の上昇による原価増加。


② 納期遅延

超硬工具が手に入らない、または納期が見えない状態になると、加工能力が下がり、製品の納期遅延につながります。

工具不足による加工能力低下。


③ 利益率悪化

工具コストの上昇分を取引先への販売価格に転嫁できない企業は、上昇分を自社で負担することになり、利益率が悪化します。

価格転嫁できない企業は利益を圧迫される。


④ 設備稼働率低下

工具を調達できなければ、工作機械があっても稼働できません。受注があっても対応できず、設備稼働率が下がるおそれがあります。

工具調達ができず受注対応が困難になる。


⑤ 倒産リスク増加

原価上昇を価格転嫁できない下請け加工業者から資金繰りが悪化し、倒産リスクが高まる可能性があります。

特に下請け加工業者は深刻です。

原価上昇を価格転嫁できない企業から資金繰りが悪化する可能性があります。

下請け加工業者の資金繰り悪化は、2024~2025年に起きた

  • 建設業
  • 飲食業
  • 介護業
  • 運送業

の倒産増加と同じ構図です。


既に始まっている「脱中国」の動き

国内の大手工具メーカーは、中国からの原料調達に頼らないよう、使用済み超硬工具からタングステンを回収するリサイクル能力の増強を進めています。

三菱マテリアルは100億円投資

三菱マテリアルは、日本とドイツで総額100億円強を投じ、タングステンのリサイクル能力を増強します。2029年までの稼働を目標としています。

三菱マテリアルは、

  • 日本
  • 欧州

で総額100億円規模の投資を発表。

目的は、

タングステンリサイクル能力の増強

です。


住友電工もリサイクル拡大

住友電工グループは1980年代から超硬工具のリサイクルに取り組み、中国からの原料調達を約3割に抑えてきました。2026年5月には中国からの調達が完全に停止したと発表しています。

住友電工グループは1980年代からタングステンリサイクルを推進。

現在では中国依存度を約30%まで低下させています。


「スクラップ」が資源になる時代

使用済みの超硬工具(スクラップ)は、タングステンを80%以上含む高品位の資源です。捨てていた工具が、鉱石よりも価値の高い原料として注目されています。

今回の危機で最も注目されているのが、

超硬工具スクラップ

です。

実は、

鉱石中のタングステン含有率は1%未満ですが、

超硬工具には80%以上のタングステンが含まれています(超硬合金のタングステン含有率は住友電工 SEIテクニカルレビューによる)。

つまり、

捨てられていた超硬工具の方が高品質な資源なのです。


日本機械工具工業会もガイドライン改定

日本機械工具工業会は2026年6月、超硬工具スクラップの国内還流を促すガイドラインを改定しました。国内還流に協力する回収窓口事業者のリストも、改定とあわせて公表されています。

2026年6月、

日本機械工具工業会は、

超硬工具スクラップの海外流出を防ぐためのガイドライン改定を発表しました。

背景には、

国内での資源循環を強化し、

中国依存から脱却する狙いがあります。

今後は、

「スクラップ回収事業者」

のリスト整備なども進められる予定です。

※追記:回収窓口事業者のリスト(27事業者)は、ガイドラインの改定とあわせて公表済みです。リストは回収業者を選ぶ際の参考資料で、掲載の有無で取引の適否を判断するものではないとされています(日本機械工具工業会、日刊工業新聞)。


中小企業が今すぐ取るべき5つの対策

中小企業が今すぐ取るべき対策は、在庫管理の徹底、スクラップ回収ルートの確保、工具寿命の延長、価格転嫁、脱中国リスクの認識の5つです。

対策具体的な行動
① 超硬工具の在庫管理を徹底する不要なロスを削減する
② スクラップ回収ルートを確保する捨てるのではなく資産として管理する
③ 工具寿命の延長を図る再研磨や再利用を積極活用する
④ 原価上昇を価格転嫁する早期に顧客へ説明する
⑤ 脱中国リスクを経営課題として認識するタングステン以外のレアメタルの調達リスクも確認する
中小企業が取るべき5つの対策(本記事の内容を整理)

① 超硬工具の在庫管理を徹底する

超硬工具の在庫と使用量を把握し、紛失や使い捨てなどの不要なロスを減らすことで、調達が難しい時期にも必要な工具を確保しやすくなります。

不要なロスを削減する。


② スクラップ回収ルートを確保する

使用済み超硬工具は捨てずに分別・保管し、国内還流に協力する回収事業者へ引き渡すことで、資源として活用できます。

捨てるのではなく資産として管理する。


③ 工具寿命の延長を図る

再研磨や再利用で1本の工具を長く使えば、新しい工具の購入量を減らし、価格上昇と調達難の影響を小さくできます。

再研磨や再利用を積極活用する。


④ 原価上昇を価格転嫁する

工具コストの上昇分は、根拠となる値上げ通知などを示し、早い段階で取引先に説明して価格転嫁を進めることが重要です。

早期の顧客説明が重要。


⑤ 脱中国リスクを経営課題として認識する

中国の輸出規制リスクはタングステンに限りません。レアアースやガリウムなど、自社が使う材料の調達先を経営課題として確認しておくことが必要です。

タングステンだけではありません。

今後、

  • レアアース
  • ガリウム
  • ゲルマニウム
  • アンチモン

などでも同様のリスクが発生する可能性があります。


まとめ|タングステンショックは製造業の構造問題である

タングステン不足は一時的な価格高騰ではなく、中国依存や地政学リスクによる構造問題です。超硬工具スクラップは戦略資源として扱われる時代になりつつあります。

タングステン不足は一時的な価格高騰ではありません。

背景には、

  • 中国依存
  • 地政学リスク
  • 資源ナショナリズム
  • サプライチェーン再編

という構造的な問題があります。

そして今後、

「超硬工具スクラップ」

は単なる廃棄物ではなく、

戦略資源

として扱われる時代になるでしょう。

アルミショックの次はタングステンショック。

日本のものづくり企業にとって、2026年は資源戦略が企業存続を左右する重要な転換点になりそうです。


出典:日本経済新聞(2026年5月19日、5月28日、6月2日)、共同通信、TBS NEWS DIG、日刊工業新聞、上村製作所「ものづくりだより」等をもとに作成。

よくある質問(FAQ)

タングステンショックと超硬工具不足について、中小製造業の経営者からよく寄せられる質問に結論から回答します。

Q. タングステンショックとは何ですか?

タングステンショックとは、中国の輸出規制強化によってタングステンの供給が逼迫し、超硬工具の値上げや調達難が製造業に広がっている状況を指します。

Q. なぜタングステンが不足しているのですか?

世界の鉱石生産の約8割を中国が占めるなか、中国が2025年2月にタングステンを輸出規制の対象に加え、2026年1月に対日規制を強化したためです。炭化タングステンとタングステン粉末の日本向け輸出は2026年2〜4月にゼロでした。

Q. タングステン不足は中小企業にどんな影響がありますか?

工具コストの上昇、納期遅延、利益率の悪化、設備稼働率の低下が考えられます。原価上昇を価格転嫁できない下請け加工業者では、資金繰りが悪化するおそれがあります。

Q. 中小企業はまず何をすればよいですか?

超硬工具の在庫管理の徹底、スクラップ回収ルートの確保、再研磨などによる工具寿命の延長、取引先への早期の価格転嫁の説明、脱中国リスクの把握の5つから始めることが有効です。

Q. 使用済みの超硬工具はどう扱えばよいですか?

捨てずに分別・保管し、国内還流に協力する回収事業者へ引き渡すことが推奨されています。日本機械工具工業会は2026年6月にガイドラインを改定し、回収窓口事業者のリストを公表しています。

出典・参考

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