事業創造ラボ|中小企業経営・資金調達
2026年9月15日公表の東京商工リサーチ調査をもとに構成
Contents
- 0.1 導入|「今、いくらの金利でお金を借りているのか?」
- 0.2 1.結論|金利上昇局面で、経営者が押さえるべき5つのポイント
- 0.3 1中小企業の推定調達金利は平均1.29%
- 0.4 2金利上昇は、幅広い企業に広がっている
- 0.5 3売上規模が小さい企業ほど、調達金利は高い傾向
- 0.6 4財務状況によって、借入金利には差がある
- 0.7 5これから重要なのは、借入金利と返済能力の把握
- 0.8 2.東京商工リサーチの調査概要|中小企業の推定調達金利は1.29%
- 1 1.29%
- 1.1 1.09%
- 1.2 9年ぶりの高水準
- 1.3 3.推定調達金利はどのように上昇してきたのか
- 1.4 推定調達金利の推移
- 1.5 4.10年国債利回りも上昇|長期金利の変化にも注意
- 1.6 5.売上規模別|小規模企業ほど高金利の傾向は続く
- 1.7 売上規模別の推定調達金利
- 1.8 6.財務状況別|債務超過企業の調達金利は1.59%
- 1.9 財務状況別の推定調達金利
- 1.10 7.産業別|10産業すべてで金利が上昇
- 1.11 産業別の推定調達金利
- 1.12 8.地区別|9地区すべてで上昇、北海道が1.47%
- 1.13 地区別の推定調達金利
- 1.14 9.中小企業への影響|金利が1%上がると、返済負担はどれだけ増えるのか
- 1.15 借入残高1億円の場合の利息増加額
- 2 1億円
- 3 +1%
- 4 100万円
導入|「今、いくらの金利でお金を借りているのか?」
「今、うちの会社はいくらの金利でお金を借りているのだろう?」
「これから金利が上がったら、毎月の返済はどれくらい増えるのだろう?」
日本銀行の金融政策が変化し、金利上昇への関心が高まるなか、中小企業経営者にとって、こうした不安は決して他人事ではありません。
特に、原材料費や人件費の上昇によって利益が圧迫されている企業にとって、借入金利の上昇は、利益だけでなく資金繰りにも影響する重要な経営課題です。
東京商工リサーチが2026年9月15日に公表した「2025年度 中小企業の『推定調達金利』調査」によると、中小企業の推定調達金利は平均1.29%となりました。
これは前年度の1.09%から0.20ポイント上昇し、2016年度以来、9年ぶりの高水準です。
さらに注目すべきなのは、金利上昇が特定の企業や業種だけにとどまっていないことです。
売上規模別、産業別、地域別のすべての区分で、前年度を上回りました。
一方で、金利が上昇しているからといって、すべての企業が同じように苦しくなるわけではありません。
重要なのは、自社がどのような条件で借り入れを行い、金利が上昇した場合に、利益と資金繰りがどれだけ変化するのかを把握することです。
本記事では、東京商工リサーチの調査データを整理したうえで、金利上昇局面における中小企業の資金調達と経営対策について解説します。
1.結論|金利上昇局面で、経営者が押さえるべき5つのポイント
今回の調査から、中小企業経営者が押さえておきたいポイントは次の5つです。
1中小企業の推定調達金利は平均1.29%
前年度から0.20ポイント上昇。金利上昇はすでに企業の財務データに表れています。
2金利上昇は、幅広い企業に広がっている
売上規模6区分、産業10区分、地域9区分のすべてで上昇しました。
3売上規模が小さい企業ほど、調達金利は高い傾向
2025年度は売上1~5億円の企業が1.43%。100億円以上の企業は1.21%でした。
4財務状況によって、借入金利には差がある
債務超過企業の平均は1.59%、資産超過企業は1.27%。財務内容は調達条件を考えるうえで重要です。
5これから重要なのは、借入金利と返済能力の把握
金利上昇に備えるには、借入条件の確認、資金繰りの予測、利益を生み出す力の改善が必要です。
今回のデータは、単に「借入金利が上がった」という話ではありません。
これまで低金利を前提に組み立ててきた資金調達や投資計画を、改めて見直す必要があることを示しています。
ただし、金利上昇の影響は、借入残高、金利の種類、返済期間、業績などによって異なります。まずは調査の全体像を確認しましょう。
2.東京商工リサーチの調査概要|中小企業の推定調達金利は1.29%
2025年度 中小企業の推定調達金利
1.29%
前年度比 +0.20ポイント
3年連続上昇
前年度
1.09%
2016年度以来
9年ぶりの高水準
出典:東京商工リサーチ「2025年度 中小企業の『推定調達金利』調査」(2026年9月15日)
調査の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査主体 | 東京商工リサーチ |
| 公表日 | 2026年9月15日 |
| 調査対象期間 | 2025年4月~2026年3月期 |
| 対象企業数 | 25万4,004社 |
| 対象企業 | 有利子負債と支払利息割引料が財務データ上にある中小企業 |
| 指標 | 推定調達金利 |
| 算出方法 | 支払利息割引料 ÷ 有利子負債 |
| 集計方法 | 各年の最高値・最低値からそれぞれ5%を除外して平均 |
※2026年3月期のデータは集計中であり、調査結果は今後変動する可能性があります。
今回の調査では、企業の財務データをもとに、実際の借入に伴う利息負担を推定しています。
ただし、この1.29%は、すべての中小企業が現在の新規融資で適用される金利という意味ではありません。
あくまで調査対象企業の財務データから算出した平均値です。
また、調査では最高値と最低値からそれぞれ5%を除外して平均を算出しています。
そのため、個々の企業の実際の借入金利や、現在金融機関から提示される融資金利とは異なる場合があります。
経営者が自社の借入条件を確認する際には、この平均値だけで判断せず、借入契約ごとの金利を確認することが重要です。
3.推定調達金利はどのように上昇してきたのか
中小企業の推定調達金利は、2022年度に0.93%まで低下しました。
しかし、その後は上昇に転じ、2025年度には1.29%となっています。
推定調達金利の推移
東京商工リサーチ公表値をもとにした主要年度の比較
0.9%. 1.05% 1.2% 1.35%
2022年度 2023年度 2024年度 2025年度
※2023年度は2022年度の0.93%に、2024年度の1.09%との差である0.12ポイントを加えて整理。2025年度は公表値。2022年度の数値は公表資料記載。
2022年度の0.93%から2025年度の1.29%まで、3年間で0.36ポイント上昇したことになります。
また、2025年度の上昇幅は0.20ポイントで、前年度の0.12ポイントから拡大しました。
ここで注目したいのは、金利上昇が一時的な変化ではなく、複数年度にわたって続いていることです。
金利上昇の背景
東京商工リサーチは、今回の金利上昇の背景として、次のような変化を挙げています。
- コロナ禍における資金繰り支援の縮小・終了
- 2024年3月の日本銀行によるマイナス金利政策の終了
- 政策金利の引き上げ
- 金融機関による貸出金利の見直し
コロナ禍では、実質無利子・無担保融資などの資金繰り支援が行われました。
こうした支援によって、企業は比較的低い金利で資金を調達できる環境にありました。
しかし、金融環境が変化するなかで、金融機関は貸出金利の見直しを進めています。
東京商工リサーチによると、2026年8月までに金融機関は債務者区分の見直しをほぼ終えており、既存借入の借り換え、新規融資、リスケ実績などに応じて、中小企業の調達金利には今後も上昇圧力がかかるとしています。
つまり、企業が今後新たに借り入れる場合だけでなく、既存借入の借り換えや返済条件の見直しなども、資金調達コストを左右する要素となります。
ただし、政策金利の引き上げ幅と、個々の企業の借入金利の上昇幅がそのまま一致するわけではありません。
自社への影響を考える際には、金融政策の動向だけでなく、金融機関との契約条件や借入の種類を確認する必要があります。
4.10年国債利回りも上昇|長期金利の変化にも注意
東京商工リサーチの調査では、中小企業の推定調達金利とともに、長期金利の代表的な指標である新発10年物国債の利回りについても言及されています。
| 指標 | 2024年度 | 2025年度 |
|---|---|---|
| 新発10年物国債利回り | 1.50% | 2.37% |
| 前年度との差 | — | +0.87ポイント |
同調査によると、直近の10年国債利回りは2.98~3.01%と、30年ぶりの歴史的な高水準で推移しているとされています。
ここで重要なのは、政策金利と長期金利は異なる指標であるということです。
政策金利は日本銀行の金融政策に関わる短期金利であり、10年国債利回りは市場で形成される長期金利の指標です。
いずれも企業の資金調達環境を考えるうえで重要ですが、同じ動きをするとは限りません。
また、10年国債利回りが上昇したからといって、すべての中小企業の借入金利が同じ幅で上昇するわけでもありません。
それでも、長期金利の上昇は、設備投資などに伴う長期の資金調達を検討する企業にとって、見逃せない変化です。
特に、これから大きな設備投資を行う企業は、現在の金利だけでなく、金利が上昇した場合の返済負担も考慮して投資計画を立てることが重要になります。
5.売上規模別|小規模企業ほど高金利の傾向は続く
売上規模別の調査では、2025年度の推定調達金利が最も高かったのは、売上高1~5億円の企業で1.43%でした。
一方、最も低かったのは、売上高100億円以上の企業で1.21%です。
売上規模別の推定調達金利
0%0.4%0.8%1.2%1.6%
1~5億円
5~10億円
1億円未満
100億円以上
※本文で具体的な数値が公表されている4区分を表示。6区分すべての数値は提供資料に記載されていません。
売上規模が小さい企業ほど調達金利が高い傾向は、引き続き確認されています。
ただし、今回の調査で特に注目したいのは、企業規模による金利差が縮小していることです。
大企業・優良企業の金利も上昇
売上規模別の最高金利と最低金利の差は、前年度の0.30ポイントから、2025年度には0.22ポイントへ縮小しました。
これは、金融機関がこれまで比較的低金利で貸し出していた大手・優良企業に対しても、金利の見直しを進めていることが背景にあると、東京商工リサーチは分析しています。
また、2025年度の上昇幅を見ると、売上高50~100億円の企業が0.27ポイントで最大でした。
| 売上区分 | 2025年度 | 前年度からの上昇幅 |
|---|---|---|
| 1億円未満 | 1.35% | +0.13ポイント |
| 1~5億円 | 1.43% | +0.15ポイント |
| 5~10億円 | 1.37% | 提供資料に記載なし |
| 10~50億円 | 提供資料に記載なし | +0.22ポイント |
| 50~100億円 | 1.31% | +0.27ポイント |
| 100億円以上 | 1.21% | +0.23ポイント |
※提供資料に記載のない数値は補完していません。
ここから分かるのは、金利上昇が小規模企業だけの問題ではないということです。
むしろ、これまで低金利で資金調達していた企業にも、金利上昇の影響が広がっています。
中小企業経営者にとっては、他社の平均金利と比較するだけでなく、自社の借入条件が過去と比べてどう変化しているかを確認することが重要です。
6.財務状況別|債務超過企業の調達金利は1.59%
財務状況別の調査では、債務超過企業の推定調達金利が1.59%となりました。
一方、資産超過企業は1.27%です。
財務状況別の推定調達金利
0%0.45%0.9%1.35%1.8%
債務超過企業
資産超過企業
出典:東京商工リサーチ「2025年度 中小企業の『推定調達金利』調査」
両者の金利差は0.32ポイントです。
財務状況によって、調達金利には依然として差があることが分かります。
ただし、今回の調査では、前年度からの上昇幅は資産超過企業の方が大きくなりました。
| 財務状況 | 2025年度 | 前年度からの上昇幅 |
|---|---|---|
| 債務超過企業 | 1.59% | +0.13ポイント |
| 資産超過企業 | 1.27% | +0.22ポイント |
金利差は、前年度の0.41ポイントから0.32ポイントへ縮小しています。
債務超過企業だけが金利上昇の影響を受けるわけではない
これまでの金利上昇局面では、債務超過企業の調達金利の上昇が目立っていました。
しかし、2025年度は資産超過企業の上昇幅が大きくなっています。
このことから、財務内容が比較的良好な企業であっても、金利上昇の影響を受ける局面に入っていると考えられます。
一方で、債務超過企業は、依然として高い調達金利となっています。
金利上昇に加え、金融機関の債務者区分の見直しや、借り換え時の条件変更などが重なる場合には、資金繰りへの影響が大きくなる可能性があります。
そのため、財務内容に不安がある企業ほど、借入金利だけでなく、返済額、返済期間、借入残高、今後の資金需要を含めた資金繰り管理が重要です。
7.産業別|10産業すべてで金利が上昇
産業別の調査では、10産業すべてで前年度を上回りました。
2025年度の推定調達金利が最も高かったのは建設業の1.40%で、最も低かったのは農・林・漁・鉱業の1.12%です。
産業別の推定調達金利
0%0.4%0.8%1.2%1.6%建設業情報通信業不動産業小売業農・林・漁・鉱業
※提供資料で具体的な数値が示されている5産業を表示。10産業すべてで上昇したことが公表されています。
上昇幅が大きかったのは小売業
| 産業 | 2025年度 | 前年度からの上昇幅 |
|---|---|---|
| 小売業 | 1.32% | +0.27ポイント |
| 卸売業 | 提供資料に記載なし | +0.26ポイント |
| 金融・保険業 | 提供資料に記載なし | +0.26ポイント |
| 情報通信業 | 1.39% | +0.24ポイント |
| 建設業 | 1.40% | +0.17ポイント |
※東京商工リサーチの提供資料に記載された数値を整理。記載のない数値は補完していません。
建設業は最も高い金利水準ですが、上昇幅では小売業が最大となりました。
このように、金利水準が高い産業と、金利上昇幅が大きい産業は必ずしも一致しません。
また、産業間の最高・最低の金利差は、前年度の0.32ポイントから0.28ポイントへ縮小しました。
過去10年間で最も小さい水準です。
これは、これまで比較的低金利だった産業にも、金利上昇の影響が広がっていることを示しています。
建設業・不動産業は何を確認すべきか
建設業や不動産業では、設備投資や物件取得などに伴い、多額の借入を行うケースがあります。
そのため、調達金利の水準だけでなく、借入残高と返済期間を踏まえた利息負担の把握が重要になります。
例えば、借入残高が大きい企業では、金利がわずかに上昇した場合でも、年間の支払利息が大きく増える可能性があります。
一方、小売業では、金利上昇に加えて仕入価格や人件費の上昇が利益を圧迫している場合、借入金利の上昇が資金繰りに与える影響にも注意が必要です。
重要なのは、業種別の平均値をそのまま自社に当てはめるのではなく、自社の借入条件と収益構造を照らし合わせることです。
8.地区別|9地区すべてで上昇、北海道が1.47%
地域別の調査でも、9地区すべてで前年度を上回りました。
最も高かったのは北海道の1.47%で、最も低かったのは中国の1.17%でした。
地区別の推定調達金利
0%0.4%0.8%1.2%1.6%北海道東北関東北陸中国
※提供資料で具体的な数値が示されている5地区を表示。9地区すべてで上昇。
北海道の数値には、特定企業の影響がある
北海道の推定調達金利は1.47%ですが、東京商工リサーチは、北海道エアポート株式会社の影響についても説明しています。
同社の有利子負債は3,821億円で、推定調達金利は2.44%でした。
同社を除いた場合、北海道の推定調達金利は1.34%まで低下します。
この点は、地域別の平均値を見るうえで重要です。
地域の調達金利は、単純にその地域の金融機関が高い金利を設定していることだけで決まるわけではありません。
企業規模、産業構成、財務内容、地域金融機関の構成、金融機関同士の競争環境など、複数の要因が影響します。
したがって、地域別の平均値をもとに、自社の借入金利が高いか低いかを判断するのは適切ではありません。
自社の借入条件を確認する際には、同じ地域の企業との比較だけでなく、財務状況や借入内容も踏まえて考える必要があります。
中部地区では0.25ポイント上昇
地区別の上昇幅では、中部が最大でした。
| 地区 | 前年度 | 2025年度 | 上昇幅 |
|---|---|---|---|
| 中部 | 0.96% | 1.21% | +0.25ポイント |
| 関東 | 提供資料に記載なし | 提供資料に記載なし | +0.21ポイント |
| 北海道 | 1.47% | 1.47% | +0.20ポイント |
| 四国 | 提供資料に記載なし | 提供資料に記載なし | +0.12ポイント |
※北海道の前年度の数値は、提供資料に記載されていません。上昇幅のみを記載しています。
地域別でも、金利上昇の幅は一様ではありません。
経営者は、地域の金融環境を把握しながら、自社の資金調達条件を個別に確認することが重要です。
9.中小企業への影響|金利が1%上がると、返済負担はどれだけ増えるのか
ここからは、今回の調査を中小企業経営に置き換えて考えてみます。
経営者が最も気になるのは、結局のところ「自社の支払利息がいくら増えるのか」という点ではないでしょうか。
例えば、借入残高が1億円ある企業を考えてみます。
金利が1%上昇した場合、借入残高が1億円のまま変わらないと仮定すると、年間の支払利息は100万円増加します。
借入残高1億円の場合の利息増加額
金利が1%上昇した場合の単純試算
借入残高
1億円
金利上昇幅
+1%
年間の支払利息増加額
100万円
1億円 × 1% = 100万円
※借入残高が一定で、借入全額に同じ金利上昇が適用されると仮定した試算です。実際の支払利息は、借入残高の減少、金利の適用条件、借入契約などによって異なります。
年間100万円の利息増加は、月平均に換算すると約8万3,000円です。
この金額が経営に与える影響は、企業の利益水準によって異なります。
例えば、年間の営業利益が500万円の企業にとって、100万円の利息増加は、営業利益の20%に相当する金額です。
ただし、営業利益と支払利息は会計上の区分が異なります。ここでは、利息増加額の規模を把握するための比較として示しています。
金利上昇が利益を圧迫する仕組み
金利上昇による負担は、単に支払利息が増えるだけではありません。
企業の利益構造によっては、原材料費、人件費、光熱費などの上昇と重なることで、経営への影響が大きくなる可能性があります。
利益が減少する流れ
原材料費・人件費・光熱費の上昇
営業利益が圧迫される
借入金利が上昇し、支払利息が増加
利益・資金繰りへの負担が増加
特に注意したいのは、売上が増えていても、利益や手元資金が十分に増えていない企業です。
売上高だけを見ていると、金利上昇の影響を過小評価する可能性があります。
金利上昇局面では、売上高、粗利益、営業利益、支払利息、返済額、現預金残高を一体的に確認することが重要です。
10.既存借入と新規融資では、確認すべきポイントが違う
金利上昇への対応を考える際には、まず自社の借入を整理する必要があります。
特に重要なのが、既存借入の金利がどのような条件で決まっているかという点です。
変動金利と固定金利の違い
| 項目 | 変動金利 | 固定金利 |
|---|---|---|
| 金利 | 契約条件に応じて変動 | 契約期間中は原則固定 |
| 金利上昇の影響 | 金利見直しにより負担が増える可能性 | 固定期間中は直接的な影響を受けにくい |
| 確認事項 | 見直し時期、基準金利、適用条件 | 固定期間終了後の条件、借り換え時の金利 |
※実際の適用条件は借入契約によって異なります。
変動金利の借入がある場合、金利の見直し時期や適用条件を確認することが重要です。
一方、固定金利で借り入れている場合でも、固定期間終了後の金利や、将来の借り換え条件には注意が必要です。
また、金利が上昇した場合に、必ずしも毎月の返済額が直ちに同じ割合で増えるとは限りません。
元金返済と利息の構成、返済期間、金利見直しの条件によって、実際の返済負担の変化は異なります。
借り換えを検討する場合の注意点
金利上昇への対応として、借り換えを検討する企業もあるでしょう。
ただし、借り換えによって必ず返済負担が軽くなるわけではありません。
借り換え先の金利だけでなく、次の点も確認する必要があります。
- 現在の借入金利と借り換え後の適用金利
- 借り換えに伴う手数料や保証料
- 返済期間の変化
- 毎月の返済額と総返済額
- 既存借入の繰上返済に関する条件
- 借り換え後の資金繰りへの影響
例えば、返済期間を延ばすことで毎月の返済額が減少しても、総支払利息が増える場合があります。
そのため、借り換えの判断は、金利だけでなく、資金繰りと総返済負担の両面から行うことが重要です。
11.金利上昇局面で特に注意したい企業
今回の調査からは、幅広い企業で金利上昇が進んでいることが分かります。
そのなかでも、経営者が特に注意したいのは、次のような企業です。
借入残高が大きい企業
金利が上昇した場合、支払利息の増加額が大きくなる可能性があります。借入残高と金利の両方を確認しましょう。
営業利益が少ない企業
利息負担の増加が利益を圧迫し、投資や人材確保に使える資金が減少する可能性があります。
債務超過や財務内容に課題がある企業
今回の調査では、債務超過企業の推定調達金利は1.59%。借り換えや新規融資の条件も含めて、早めに確認することが重要です。
設備投資や事業拡大を予定している企業
投資後の返済負担だけでなく、売上や利益が計画どおりに伸びなかった場合の資金繰りも検討する必要があります。
原材料費や人件費の上昇を価格転嫁できていない企業
利益率が低下している状況で利息負担が増えると、資金繰りの余裕がさらに小さくなる可能性があります。
ただし、これらに該当するからといって、必ず資金繰りが悪化するわけではありません。
借入残高が大きくても、十分な利益と現預金を確保している企業もあります。
反対に、借入残高が少なくても、利益が乏しく、返済に必要な資金を確保できていない企業は注意が必要です。
大切なのは、借入残高の大小だけではなく、利益とキャッシュフローに対して返済負担がどれだけ大きいかを把握することです。
12.経営者が今すぐ確認したい5つの項目
金利上昇への対応は、金融機関に相談する前に、自社の状況を正確に把握することから始まります。
次の5項目を確認してみましょう。
自社の借入・資金繰りチェック
0/5借入先・借入残高・適用金利・金利タイプを一覧にする金利見直し時期と、固定金利の終了時期を確認する借入ごとの毎月の元金返済額・利息・返済終了時期を整理する今後12か月の資金繰りと、返済後の現預金残高を予測する金利上昇時の利息増加額を試算し、利益と資金繰りへの影響を確認する
特に重要なのは、借入一覧の作成
借入先が複数ある企業では、借入条件を一覧にするだけでも、経営判断の精度が高まります。
例えば、次のような項目を整理します。
| 借入先 | 借入残高 | 金利 | 金利タイプ | 返済終了時期 |
|---|---|---|---|---|
| A金融機関 | 〇〇万円 | 〇〇% | 変動・固定 | 〇年〇月 |
| B金融機関 | 〇〇万円 | 〇〇% | 変動・固定 | 〇年〇月 |
| C金融機関 | 〇〇万円 | 〇〇% | 変動・固定 | 〇年〇月 |
この一覧を作成することで、どの借入が金利上昇の影響を受けやすいか、どの時期に返済負担が変化するかを把握しやすくなります。
また、金融機関との面談時にも、具体的な数字をもとに相談できるようになります。
13.具体的な対策①|金利上昇を想定した資金繰り表を作る
金利上昇局面で重要なのは、現在の資金繰りだけでなく、将来の資金繰りを予測することです。
特に、今後12か月程度の資金繰りを月次で確認することをおすすめします。
資金繰り表では、次の項目を整理します。
- 月初の現預金残高
- 売上入金
- 仕入・外注費の支払い
- 人件費・固定費
- 借入金の元金返済
- 支払利息
- 税金・社会保険料
- 設備投資などの臨時支出
- 月末の現預金残高
ここで重要なのは、利益計画と資金繰り計画を分けて考えることです。
会計上は黒字であっても、売掛金の回収が遅れたり、借入金の返済が重なったりすると、手元資金が不足する可能性があります。
さらに、金利上昇による利息負担の増加が加われば、資金繰りの余裕は小さくなります。
金利上昇のシミュレーション
自社の借入残高に対して、金利が0.5ポイント、1ポイント上昇した場合に、年間の利息負担がどれだけ増えるのかを試算します。
例えば、借入残高が1億円で、借入全額に同じ金利上昇が適用されると仮定した場合は、次のようになります。
| 金利上昇幅 | 年間の利息増加額 |
|---|---|
| +0.5ポイント | 50万円 |
| +1.0ポイント | 100万円 |
| +1.5ポイント | 150万円 |
※借入残高が一定の場合の単純試算です。実際の支払利息は、返済による残高の減少や契約条件によって異なります。
この試算を行うことで、金利上昇が利益や資金繰りに与える影響を、具体的な金額で把握できます。
14.具体的な対策②|金融機関との関係を見直す
金利上昇局面では、金融機関とのコミュニケーションも重要になります。
ただし、金利を引き下げてもらうことだけが目的ではありません。
自社の財務状況や今後の事業計画を共有し、必要な資金を適切な条件で調達できる関係を構築することが重要です。
金融機関との面談で確認したいこと
既存借入の金利見直し条件
金利の見直し時期、基準金利、今後の適用条件を確認する。
今後の資金需要
設備投資や運転資金の必要額、調達時期、返済計画を整理する。
財務内容の改善方針
利益改善、借入返済、自己資本の充実など、今後の経営方針を説明できるようにする。
借り換え・返済条件の選択肢
金利だけでなく、返済期間、毎月の返済額、手数料なども含めて比較する。
特に、これから新規融資を受ける予定がある企業は、資金が必要になってから相談するのではなく、早い段階で金融機関と情報共有をしておくことが重要です。
一方で、資金繰りが厳しくなっている企業は、返済が困難になる前に相談する必要があります。
返済条件の変更などを検討する場合も、現状の資金繰りと今後の事業計画を整理し、具体的な改善方針を示すことが大切です。
15.具体的な対策③|借入金利だけでなく、利益を生み出す力を高める
今回の調査では、金利上昇が幅広い企業に広がっていることが分かりました。
このような環境では、借入金利を引き下げる努力だけでなく、企業自身が利益を生み出す力を高めることも重要です。
例えば、次のような取り組みが考えられます。
| 経営課題 | 具体的な取り組み |
|---|---|
| 原材料費の上昇 | 価格改定、仕入先の見直し、原価管理 |
| 人件費の上昇 | 業務効率化、生産性向上、人員配置の見直し |
| 利益率の低下 | 商品・サービス別の採算管理、低採算取引の改善 |
| 資金繰りの悪化 | 売掛金回収の早期化、在庫管理、支払条件の見直し |
| 借入依存の高さ | 利益改善、投資回収計画の見直し、内部留保の確保 |
重要なのは、売上高を増やすことだけを目標にしないことです。
売上が増えても、原価や人件費がそれ以上に増えれば、利益は十分に残りません。
また、利益が出ていても、設備投資や売掛金の増加によって資金が不足することもあります。
金利上昇局面では、売上・利益・キャッシュフローの3つを一体的に改善する経営が求められます。
16.今後の見通し|金利上昇の影響は、これから表面化する可能性がある
東京商工リサーチは、2025年度の調達金利が上昇した背景として、金融機関による貸出金利の見直しを挙げています。
また、既存借入の借り換えや新規融資、リスケ実績などに応じて、中小企業の調達金利には今後も上昇圧力がかかるとしています。
ここで注意したいのは、調達金利が上昇したからといって、すべての企業で直ちに資金繰りが悪化するわけではないということです。
実際の影響は、借入残高、金利タイプ、返済期間、利益水準、現預金残高などによって異なります。
一方、これまで低金利で借り入れていた企業が、借り換えや新規融資の際に、より高い金利を適用される場合には、時間差を伴って資金繰りに影響が出る可能性があります。
今後、経営者が注目したいのは、次の3点です。
① 金融政策と市場金利の動向
政策金利や長期金利がどのように変化するか。
② 金融機関の貸出姿勢と調達条件
新規融資や借り換えの金利、返済条件がどう変化するか。
③ 自社の利益と資金繰り
金利上昇に対して、利益と手元資金がどれだけ耐えられるか。
今後の金利動向を正確に予測することはできません。
だからこそ、特定の金利水準を前提に経営計画を組むのではなく、複数の金利シナリオを想定し、どのような環境でも資金繰りを維持できる体制を整えておくことが重要です。
17.まとめ|「今いくらで借りているのか」を把握することから始めよう
東京商工リサーチの調査によると、2025年度の中小企業の推定調達金利は平均1.29%となり、前年度から0.20ポイント上昇しました。
金利上昇は3年連続で続いており、売上規模別、産業別、地域別のすべての区分で前年度を上回っています。
また、これまで比較的低金利だった大手・優良企業にも金利上昇が広がっていることが、今回の調査の重要なポイントです。
中小企業経営者にとって、金利上昇への対応は、単に金融機関から提示された金利を確認するだけでは不十分です。
自社の借入残高、適用金利、返済条件を把握し、金利が上昇した場合に利益と資金繰りがどれだけ変化するのかを確認する必要があります。
そして、利益率の改善や資金繰り管理を通じて、金利上昇に耐えられる経営体質をつくることが重要です。
最後に、経営者の皆さんに確認していただきたいことがあります。
自社は今、いくらの金利でお金を借りているでしょうか。
そして、その金利が0.5ポイント、1ポイント上昇した場合、年間の支払利息はどれだけ増えるでしょうか。
この数字を把握することが、金利上昇局面における経営対策の第一歩です。
出典・データの取り扱い
本記事は、ユーザー提供の東京商工リサーチ「2025年度 中小企業の『推定調達金利』調査」(2026年9月15日公表)をもとに作成しています。
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調査対象は2025年4月~2026年3月期の25万4,004社。
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2026年3月期は集計中であり、数値は変動する可能性があります。
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推定調達金利は、支払利息割引料を有利子負債で除して算出した指標です。
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業種別・地域別・売上規模別の一部数値については、提供資料に記載された範囲で整理しています。
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金利上昇による利息増加額は、借入残高が一定であると仮定した単純試算です。実際の返済負担は契約条件によって異なります。