Contents
エネルギー価格高騰で企業の9割が打撃 価格転嫁できない企業ほど利益が消える
2026年7月27日、帝国データバンクは「エネルギー価格上昇による企業への影響調査」を公表しました。
結果は非常に深刻です。
実に89.4%の企業がエネルギー価格上昇によるマイナス影響を受けていることが判明しました。
さらに注目すべきは、単なるコスト増ではありません。
価格転嫁が十分にできず、約半数の企業が利益減少に直面しているという点です。
現在の物価高局面では、
「値上げできる会社」と「値上げできない会社」
この差が、そのまま利益格差へと直結しています。
今回は7月27日の調査結果に加え、7月6日に発表された「企業が政府に求めるエネルギー政策」もあわせて整理し、中小企業経営者が今考えるべきポイントを解説します。
調査概要
調査機関
株式会社帝国データバンク
調査期間
2026年6月17日~6月30日
対象企業
22,572社
有効回答
10,413社(回答率46.1%)
約9割の企業がエネルギー価格高騰でマイナス影響
企業への影響は以下の結果となりました。
- 大きなマイナス影響:36.8%
- ややマイナス影響:52.6%
合計すると
89.4%
つまり約9社に1社ではなく、
10社中9社が経営への悪影響を感じています。
一方、
- 影響なし:5.8%
- プラス影響:2.1%
と、ごく少数に留まりました。
中東情勢の緊迫化や原油・LNG価格の上昇が続くなか、エネルギー価格は依然として先行き不透明な状況です。
最も深刻なのは運輸・農林水産
業種別に見ると、影響はさらに深刻です。
農林水産
- マイナス影響:96.4%
- 大きなマイナス影響:56.8%
燃料や肥料など、エネルギー依存度が高いことが背景です。
製造業
- マイナス影響:94.8%
- 大きなマイナス影響:47.0%
工場の電力・ガス使用に加え、原材料価格への波及も直撃しています。
運輸・倉庫
- マイナス影響:93.5%
- 大きなマイナス影響:57.5%(全業種最高)
燃料費が主要コストであるため、最も厳しい結果となりました。
企業を苦しめる本当の問題は「価格転嫁できないこと」
今回の調査で最も重要なのはここです。
エネルギー価格上昇による具体的な影響は
| 影響 | 割合 |
|---|---|
| 原材料・資材コスト上昇 | 76.5% |
| 物流コスト上昇 | 58.5% |
| 光熱費上昇 | 55.0% |
| 利益減少 | 47.1% |
| 賃上げ余力低下 | 21.2% |
| 売上減少 | 17.8% |
一見すると
「原材料費が上がった」
という話に見えます。
しかし本質は違います。
コストが上がること自体ではなく、そのコストを販売価格へ転嫁できないことが利益を奪っているのです。
価格転嫁できない企業が増えている理由
企業から寄せられた声を見ると、
値上げすると顧客が離れる
大手企業が値上げを認めない
値上げしても、その後さらに原材料価格が上がる
というコメントが数多く見られます。
つまり、
価格改定そのものより
価格改定のスピードがインフレに追いついていない
ことが利益悪化の最大要因になっています。
利益減少は賃上げにも影響
利益が減れば、
当然ながら
- 賃上げできない
- 設備投資できない
- 人材採用できない
という悪循環になります。
つまり、
エネルギー価格高騰は
単なる燃料費の問題ではなく、
企業の成長投資そのものを止めてしまう問題
へと発展しています。
企業が政府へ最も求めている政策とは
7月6日に公表された
「エネルギー価格上昇に対する企業の政策要望調査」
では、企業が求める政策も明らかになりました。
上位は以下の通りです。
| 政府への要望 | 割合 |
|---|---|
| エネルギー安定供給の確保 | 45.0% |
| 電気・ガス料金補助 | 34.0% |
| 燃料費への直接補助 | 32.1% |
| 価格転嫁支援 | 22.4% |
| エネルギー関連税の軽減 | 21.0% |
| 省エネ設備投資支援 | 20.7% |
注目すべきは、
単なる補助金ではなく
「価格転嫁支援」
が上位に入っていることです。
補助金だけでは解決しないという企業の本音
企業からは
補助金は助かるが、根本的な解決にはならない
という意見も多く寄せられています。
また
- エネルギーの安定供給
- 調達先の多様化
- 長期的なエネルギー政策
など、
短期支援だけではなく
構造的な改革
を求める声も目立ちました。
中小企業経営者が今取り組むべき5つの対策
今回の調査から見えてくる実務上の対応策は明確です。
① 価格転嫁ルールを見直す
毎年の価格改定では遅すぎます。
仕入価格との連動ルールなど、価格改定を制度化することが重要です。
② コストの見える化
どの商品が利益を生み、
どの商品が赤字なのか。
原価管理を徹底しなければ価格交渉もできません。
③ 省エネ投資
LED
空調更新
太陽光
高効率設備など、
補助金を活用した省エネ投資は中長期的な利益改善につながります。
④ 高付加価値化
価格競争から抜け出し、
「価格ではなく価値」で選ばれる企業になることが重要です。
⑤ 取引先との価格交渉
コスト上昇の根拠をデータで提示し、
定期的な価格協議を行う仕組みづくりが不可欠です。
まとめ
今回の帝国データバンク調査は、
「エネルギー価格が高い」
という話ではありません。
本質は
価格転嫁できる企業と、できない企業との格差が急速に広がっている
ということです。
エネルギー価格そのものを企業がコントロールすることはできません。
しかし、
価格転嫁の仕組みづくり
原価管理
高付加価値化
省エネ投資
これらは企業自身が変えられる部分です。
物価高は今後もしばらく続く可能性があります。
だからこそ、
「価格を上げる勇気」
ではなく、
「利益を守る仕組みを持つ企業」
になることが、これからの中小企業経営に求められる最大のテーマと言えるでしょう。
引用・参考資料
- 帝国データバンク「エネルギー価格上昇による企業への影響調査」(2026年7月27日公表)
- 帝国データバンク「エネルギー価格上昇に対する企業の政策要望調査」(2026年7月6日公表)