Contents
全東信問題は「決済代行会社の破産」から「中小企業の資金繰り問題」へ
2026年7月に発生した決済代行会社「全東信」の破産は、単なる一企業の倒産では終わりませんでした。
全東信を利用していた加盟店では、
- クレジットカード売上の入金停止
- 売掛金の未回収
- 決済端末の利用停止
- 急激な資金繰り悪化
といった深刻な影響が全国へ広がっています。
特に飲食店、美容室、小売店、宿泊業など、キャッシュレス決済比率の高い業種では、「売上はあるのに現金が入ってこない」という、いわゆる黒字倒産のリスクが現実のものとなっています。
こうした状況を受け、政府だけでなく、日本政策金融公庫、信用保証協会、地方銀行、信用金庫までが相次いで支援策を打ち出しています。
さらに2026年7月24日には経済産業省が新たな続報を公表し、支援制度は一段と拡充されました。
本記事では、認定経営革新等支援機関の視点から、現時点で利用できる資金繰り支援制度を整理するとともに、「どの制度を、どの順番で活用すべきか」まで実務的に解説します。
7月24日の続報で何が変わったのか
当初発表された支援策は、
- 特別相談窓口の設置
- セーフティネット貸付の活用
- セーフティネット保証1号の指定準備
- 返済条件変更への柔軟対応
が中心でした。
しかし7月24日の発表では、制度がさらに一歩前進しました。
今回のポイントは次の4点です。
① 特別相談窓口を継続設置
② セーフティネット貸付(経営環境変化対応資金)の対象拡大
③ セーフティネット保証1号の事前相談開始
④ 既往債務の返済条件変更・貸出迅速化を金融機関へ正式要請
さらに、政府は7月31日に官報告示を行い、全東信をセーフティネット保証1号の指定倒産企業として正式指定する予定であることも明らかにしました。
これは、制度が「検討段階」から「利用開始段階」へ進んだことを意味します。
現在利用できる支援制度一覧
現時点で利用できる、または利用準備が進んでいる支援策を整理すると、次のようになります。
| 支援制度 | 実施主体 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 特別相談窓口 | 経済産業省・日本政策金融公庫・商工中金・信用保証協会 | 制度案内・資金繰り相談 |
| セーフティネット貸付(経営環境変化対応資金) | 日本政策金融公庫 | 運転資金・設備資金の融資 |
| 取引企業倒産対応資金 | 日本政策金融公庫 | 倒産企業の取引先向け融資 |
| セーフティネット保証1号 | 信用保証協会 | 一般保証とは別枠・100%保証 |
| 京都信用金庫専用融資 | 京都信用金庫 | 最大1億円の緊急融資 |
| 伊予銀行・愛媛銀行相談窓口 | 各銀行 | 資金繰り・返済相談 |
今回の特徴は、政府・公的金融機関・地域金融機関がそれぞれ役割を分担しながら支援を行っていることです。
特別相談窓口は「最初に相談すべき場所」
経済産業省は、
- 日本政策金融公庫
- 沖縄振興開発金融公庫
- 商工組合中央金庫
- 全国の信用保証協会
に特別相談窓口を設置しています。
ここでは、
- 利用できる制度
- 必要書類
- 保証制度
- 資金繰り
- 返済相談
などを総合的に相談できます。
ここで勘違いしてはいけないのは、「相談窓口=融資窓口」ではないという点です。
相談窓口の役割は、「どの制度が使えるか」を整理することです。
資金調達を成功させる第一歩として、まず相談窓口を活用することをおすすめします。
セーフティネット貸付(経営環境変化対応資金)が大幅に使いやすくなった
今回の続報で最も重要な変更の一つが、セーフティネット貸付(経営環境変化対応資金)の対象拡大です。
通常、この制度は「売上が一定割合以上減少した」などの要件があります。
しかし、全東信の破産による影響を踏まえ、今回の特例では、
「今後、資金繰りに著しい支障を来すおそれがある事業者」
まで対象が広がりました。
つまり、
- 現時点では売上が維持できている
- しかし売掛金が回収できず、今後資金繰りが悪化する可能性が高い
という企業も相談対象になります。
これは非常に大きな変更です。
融資条件
セーフティネット貸付(経営環境変化対応資金)の主な条件は次のとおりです。
国民生活事業
- 融資限度額:7,200万円
中小企業事業
- 融資限度額:7億2,000万円
返済期間
- 設備資金:20年以内
- 運転資金:10年以内
据置期間
- 最大3年
なお、金利は所定の基準利率が適用され、企業の状況や担保の有無などによって異なります。
「取引企業倒産対応資金」との違いに注意
ここで多くの経営者が混乱しやすいのが、
- セーフティネット貸付(経営環境変化対応資金)
- 取引企業倒産対応資金
の違いです。
どちらも日本政策金融公庫の融資制度ですが、目的が異なります。
| 制度 | 対象 | 特徴 |
|---|---|---|
| セーフティネット貸付(経営環境変化対応資金) | 外部環境の変化で資金繰りが悪化・悪化するおそれがある事業者 | 今回の特例で対象拡大 |
| 取引企業倒産対応資金 | 取引先の倒産によって直接影響を受けた事業者 | 倒産企業との取引実績が条件 |
つまり、
全東信との取引が直接あり、売掛金が回収できない企業は「取引企業倒産対応資金」が有力候補となります。
一方で、全東信の影響を間接的に受け、資金繰り悪化が懸念される企業は、「経営環境変化対応資金」が選択肢となります。
どちらが適しているかは、事業内容や影響の程度によって異なるため、日本政策金融公庫や認定経営革新等支援機関へ相談しながら判断することが重要です。
前編まとめ
ここまで見てきたように、7月24日の続報によって、政府の支援は「制度の準備」から「実際に使える段階」へ進みました。
特に、
- セーフティネット貸付の対象拡大
- セーフティネット保証1号の事前相談開始
- 返済条件変更への正式要請
は、資金繰りに不安を抱える企業にとって大きな後押しとなります。
後編では、京都信用金庫の1億円専用融資、日本政策金融公庫「取引企業倒産対応資金」の詳細、伊予銀行・愛媛銀行の支援、そして認定経営革新等支援機関としておすすめする資金調達の優先順位と実務対応について詳しく解説します。