Contents
- 1 2026年、5つの業界で起きている倒産増加。その共通点とは?
- 2 先に結論|今回の5業種から見える3つの変化
- 3 1.パチンコホール|売上は増えたのに、法人は10年で半減
- 4 2.スマホゲーム|「当たれば大きい」ビジネスからの転換
- 5 3.木造建築工事業|7カ月で159件、過去10年で最多ペース
- 6 4.飲食業|2026年7月、倒産112件で過去最多
- 7 5.菓子小売業|7カ月で45件、過去30年で最多
- 8 5業種を並べると見えてくること
- 9 共通する危険信号①|売上だけを見ている
- 10 共通する危険信号②|コスト上昇を価格に転嫁できない
- 11 共通する危険信号③|小規模企業ほど変化への対応余力が小さい
- 12 経営者が本当に見るべきなのは「倒産件数」ではない
- 13 では、経営者は何をすればいいのか?
- 14 まとめ|「市場があるから大丈夫」は危険
2026年、5つの業界で起きている倒産増加。その共通点とは?
2026年に入り、さまざまな業界で倒産に関する気になる数字が相次いでいます。
今回注目したいのが、
- パチンコホール
- スマホゲーム
- 木造建築工事業
- 飲食業
- 菓子小売業
の5業種です。
一見すると、これらはまったく違うビジネスです。
ところが、倒産データを並べてみると、ある共通点が見えてきます。
それは、
「売上を確保できるか」だけではなく、「変化したコストや競争環境の中で、利益と現金を残せるか」が経営の分かれ目になっている
ということです。
先に結論|今回の5業種から見える3つの変化
今回のデータから、特に重要なのは3点です。
① 市場が存在していても安心できない
パチンコホールでは、2025年の総売上高が12兆433億円となり、前年比2.8%増加しました。
しかし、法人数は1,130社。
2016年の2,492社から10年間で54.7%減少しています。
つまり、
市場全体の売上が増えても、企業数は減る
ということが起きています。
② コスト上昇を価格に転嫁できない企業が苦しくなる
飲食業では、2026年7月の倒産が112件。
1997年以降の30年間で、7月として過去最多となりました。
物価高倒産は23件、人手不足倒産は13件、人件費高騰による倒産は12件です。
「売上がない」だけではありません。
売上があっても、原材料費・光熱費・人件費を吸収すると利益が残らない
という問題が深刻になっています。
③ 「今までの儲け方」が通用しなくなっている
スマホゲームでは、開発費が数億円規模まで膨らむケースがある一方、リリース後もキャラクター追加やイベントなど継続的な運営コストが必要です。
木造建築では、資材価格、人件費、外注費、住宅ローン金利、建築確認手続き、人手不足など複数の負担が重なっています。
菓子小売では、原材料価格の上昇に加えて、消費者の節約志向や贈答需要の変化が重なっています。
つまり、業界ごとに原因は違っても、
「従来のビジネスモデルのままでは利益が残りにくい」
という点で共通しています。
1.パチンコホール|売上は増えたのに、法人は10年で半減
帝国データバンクの「パチンコホール経営法人の実態調査(2025年)」によると、2025年のパチンコホール経営法人数は1,130社でした。
前年から71社、5.9%減少しています。
さらに2016年の2,492社と比較すると、
10年間で1,362社減少。減少率は54.7%
に達します。
一方、総売上高は12兆433億円。
前年比2.8%増加し、2年連続で前年を上回りました。
これは非常に重要な数字です。
普通なら、
「売上が増えたなら、業界は回復している」
と考えたくなります。
しかし実際には、
売上増加と企業数減少が同時に起きています。
なぜ売上は増えているのか?
帝国データバンクでは、コロナ禍明けによる来客数の回復に加え、2022年に登場したスマートパチスロ、いわゆる「スマスロ」の好調などを要因として挙げています。
さらに2025年の黒字企業割合は71.6%。
5年ぶりに7割を超え、コロナ前の水準に回復しました。
一方で、赤字企業の54.7%は2期連続赤字となっています。
つまり、
業界全体が単純に「復活した」と見るのは危険です。
倒産にも変化が出ている
2025年のパチンコホール経営法人の倒産は16件。
前年の23件から30.4%減少しました。
過去20年でも2012年、2016年の13件に次ぐ少ない水準です。
ただし、2026年は6月までに14件が発生。
2025年の年間16件にかなり近づいており、増加の兆しが見えています。
2.スマホゲーム|「当たれば大きい」ビジネスからの転換
スマートフォンゲーム業界では、より分かりやすく構造変化が表れています。
帝国データバンクによると、2026年1~7月のスマホゲーム事業者の倒産は、
10件
となりました。
前年1年間は3件だったため、すでに大幅に上回っています。
さらに過去最多だった2015年は12件。
2026年は7カ月ですでに10件に達しており、年間では過去最多を更新するとみられています。
なぜゲーム会社の倒産が増えているのか?
スマホゲームは、単純に「ゲームを作れば売れる」という時代ではありません。
現在は、
- 3Dグラフィック
- フルボイス
- 継続的なアップデート
- 新キャラクター
- イベント運営
- 大規模プロモーション
などが必要になります。
その結果、初期開発費が数億円規模になることもあります。
さらに、リリース後も運営費が継続します。
つまり、
作るためのお金だけでなく、売れ続けるためのお金が必要
なのです。
小規模企業ほど厳しい
過去5年以内に発生したスマホゲーム事業者の倒産29件を規模別に見ると、資本金1,000万円未満の事業者が15件。
全体の51.7%を占めています。
さらに、大手ゲーム会社の開発撤退によって受注を失った小規模事業者の破綻も確認されています。
ここから見えるのは、
「自社がゲームを作れる」だけではなく、「継続的に収益を生み出せる事業構造を持っているか」が重要になった
ということです。
3.木造建築工事業|7カ月で159件、過去10年で最多ペース
木造建築工事業は、さらに厳しい状況です。
2026年1~7月の倒産件数は、
159件
でした。
前年同期の132件から27件、20.5%増加。
7カ月累計として過去10年で最多となっています。
このまま推移すると、年間では約270件程度が見込まれています。
負債総額もすでに大きい
2026年1~7月の負債総額は、
約295億8,400万円
です。
すでに2020~2024年の各年の年間負債総額を上回っています。
そして注目したいのが企業規模です。
負債1億円未満の中小零細事業者が102件。
全体の約64.2%を占めています。
原因は一つではない
木造建築業の厳しさは、一つの原因では説明できません。
主な要因として、
- 建築資材価格の上昇
- 人件費・外注費の上昇
- 住宅ローン金利の上昇
- 住宅需要の低下
- 4号特例縮小などによる手続き負担
- 人手不足
- 工期延長
- 請負単価への転嫁難
などが重なっています。
特に危険なのが、
「原価が上がるのに、売価を十分に上げられない」
という構造です。
4.飲食業|2026年7月、倒産112件で過去最多
東京商工リサーチによると、2026年7月の飲食業倒産は、
112件
となりました。
1997年以降の30年間で7月として最多です。
1~7月累計でも621件。
前年同期比5.6%増加しています。
しかも、年間最多だった前年の1,002件を上回るペースです。
特に深刻なのが小規模店
資本金1,000万円未満の企業が93件。
全体の83.0%を占めています。
負債1億円未満も97件で、
86.6%
です。
つまり、飲食業の倒産問題は大型チェーンの問題というより、
小・零細事業者に強く集中している
ことが分かります。
居酒屋・ラーメン店などでも増加
業種別では、
- 居酒屋:23件、前年同月比64.2%増
- ラーメン店:10件、42.8%増
- 配達飲食サービス業:10件、400.0%増
- 中華料理店:7件、前年同月ゼロから増加
などが目立ちます。
「販売不振」だけが問題ではない
原因別では販売不振が91件。
全体の81.2%です。
ただし、その背景には、
- 食材価格上昇
- 光熱費上昇
- 人件費上昇
- 人手不足
- 価格転嫁の難しさ
があります。
特に小規模店では、
「値上げしたらお客様が離れる」
という懸念から、コスト上昇を価格に十分転嫁できないケースがあります。
5.菓子小売業|7カ月で45件、過去30年で最多
東京商工リサーチによると、2026年1~7月の「菓子小売業」の倒産は、
45件
となりました。
同期間として過去30年間で最多です。
年間最多だった2025年の58件を、今年は7カ月ですでに大きく追っています。
こちらも小規模事業者が中心
2026年に倒産した45件のうち、資本金1,000万円未満は31件。
構成比は68.8%です。
原因別では販売不振が41件。
なんと、
91.1%
を占めています。
さらに物価高の影響を受けた倒産は15件。
33.3%を占めています。
消費者の行動も変わっている
菓子店では、
- 小麦など原材料価格の上昇
- 円安
- 商品価格の上昇
- 消費者の節約志向
- 贈答需要の変化
- お中元・暑中見舞い需要の減少
などが重なっています。
「良い商品を作れば売れる」というだけではなく、
消費者がその商品に今いくら払うのか
まで考える必要があります。
5業種を並べると見えてくること
ここまでを見ると、5業種はそれぞれ事情が違います。
| 業種 | 主な変化 |
|---|---|
| パチンコ | 売上回復と企業淘汰が同時進行 |
| スマホゲーム | 開発費・運営費増加+競争激化 |
| 木造建築 | 資材高+人手不足+金利+需要減 |
| 飲食 | 食材・光熱費・人件費+価格転嫁難 |
| 菓子小売 | 原材料高+節約志向+需要構造変化 |
しかし、共通する経営課題があります。
共通する危険信号①|売上だけを見ている
売上が増えていても、利益が減っていれば経営は苦しくなります。
パチンコ業界がまさにその例です。
総売上高は前年比2.8%増加。
しかし法人数は10年間で54.7%減少しています。
これは、
「市場の売上」と「個々の企業の利益」は別物
であることを示しています。
共通する危険信号②|コスト上昇を価格に転嫁できない
飲食、建設、菓子小売では特に重要です。
原材料費が10%上昇した。
人件費が上昇した。
光熱費も上昇した。
しかし販売価格を上げられない。
そうなると、
売上
↓
売上総利益
↓
営業利益
↓
手元資金
という順番で企業の体力が削られます。
共通する危険信号③|小規模企業ほど変化への対応余力が小さい
今回のデータでは、小規模企業の比率が非常に高い業種があります。
飲食業では資本金1,000万円未満が83.0%。
菓子小売業では68.8%。
スマホゲームでも過去5年間の倒産29件のうち、資本金1,000万円未満が51.7%。
木造建築では負債1億円未満が64.2%です。
小規模企業では、
- 人を増やせない
- 値上げしにくい
- 投資余力がない
- 資金繰りの余裕が少ない
- 一社・一商品への依存度が高い
といった問題が重なりやすくなります。
経営者が本当に見るべきなのは「倒産件数」ではない
ニュースで倒産件数を見ることは重要です。
しかし、経営者が本当に確認すべきなのは、
「自社が倒産企業と同じ構造になっていないか」
です。
次の5つを確認してください。
① 粗利益率は下がっていないか?
売上が増えていても、粗利益率が下がっていれば注意が必要です。
② 原価上昇を価格転嫁できているか?
仕入価格、人件費、外注費などの上昇を販売価格へ反映できているでしょうか。
③ 一人当たりの利益は増えているか?
人手不足だから採用する。
しかし売上だけ増えて利益が増えない。
これでは意味がありません。
④ 1年後の資金繰りは大丈夫か?
黒字でも現金が足りなくなることがあります。
特に借入返済が大きい企業は注意が必要です。
⑤ 3年後も今の商品・サービスで稼げるか?
これが最も重要です。
市場そのものが変化している場合、
「去年まで売れていた」
だけでは経営の安全材料になりません。
では、経営者は何をすればいいのか?
今回の5業種から考えると、今から取り組みたいのは次の5つです。
1.売上ではなく粗利益を見る
商品・顧客・店舗・事業ごとに、
「いくら売ったか」
ではなく、
「いくら粗利益が残ったか」
を確認します。
2.値上げできる商品を作る
単純な値上げではなく、
- 高付加価値化
- セット化
- 専門性強化
- サービス追加
- ブランド化
などによって「価格を上げても選ばれる理由」を作ります。
3.人を増やす前に生産性を上げる
人手不足だから採用する。
それだけでは限界があります。
AI・DX・自動化などを活用して、
「一人当たり売上」ではなく「一人当たり粗利益」
を高める発想が重要です。
4.売上の柱を増やす
一つの商品、一つの取引先、一つの市場に依存すると、環境変化に弱くなります。
- 新商品
- 新規顧客
- 新チャネル
- ストック収益
- 法人向けサービス
など、収益源を分散することも重要です。
5.資金繰りを先回りする
「資金がなくなってから金融機関へ相談する」のでは遅い場合があります。
最低でも、
6~12カ月先の資金繰り
を確認しておきましょう。
まとめ|「市場があるから大丈夫」は危険
今回の5業種は、業界そのものが消滅しているわけではありません。
パチンコは売上が増えています。
スマホゲームも市場そのものがなくなったわけではありません。
建設需要も存在します。
飲食店も必要とされています。
菓子もなくなる商品ではありません。
それでも企業は倒産します。
なぜでしょうか。
答えは、
「市場があること」と「自社が利益を残せること」は別だからです。
これからの経営で重要なのは、
「売上を増やす」
だけではありません。
売上を増やす
↓
粗利益を増やす
↓
固定費を吸収する
↓
営業利益を残す
↓
借入を返済する
↓
最後に現金を残す
ここまで考える必要があります。
5業種の倒産データは、単なる「危ない業界ランキング」ではありません。
日本企業の「儲け方」が変わり始めていることを示すデータ
として見るべきでしょう。
出典
- 株式会社帝国データバンク「パチンコホール経営法人の実態調査(2025年)」(2026年8月6日)
- 株式会社帝国データバンク「スマホゲーム事業者の倒産動向(2026年1-7月)」(2026年8月8日)
- 株式会社帝国データバンク「木造建築工事業の倒産動向(2026年1-7月)」(2026年8月10日)
- 東京商工リサーチ「2026年7月『飲食業』倒産」(2026年8月10日)
- 東京商工リサーチ「『ケーキや菓子店』の倒産が過去最多」(2026年8月11日)
※本記事では、提供された調査資料の数値・内容をもとに整理しています。各調査は対象・集計条件が異なるため、件数を単純比較するものではありません。