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はじめに|コロナが終わっても、経営の苦しさは終わっていない
コロナ禍が終わり、経済活動が正常化してから数年が経過しました。
しかし、中小企業の経営環境は、本当に改善したのでしょうか。
東京商工リサーチが2026年10月1日に公表した最新データによると、2026年度上半期(4~9月)の円安関連倒産は38件となり、前年同期比18.7%増加しました。2年ぶりに前年同期を上回っています。
一方、新型コロナ関連の経営破たんは、2026年9月だけで133件発生。2020年2月の第1号発生からの累計は1万4,700件に達しました。
今回のデータで注目したいのは、円安倒産とコロナ破たんという、異なる要因による経営破たんが現在も続いていることです。
円安は仕入価格を押し上げ、企業の利益を圧迫します。一方、コロナ融資の返済は、企業の手元資金を減少させます。
つまり、現在の中小企業は、日々の事業活動で利益を確保することと、過去の借入金を返済することの両方に向き合わなければならない状況にあります。
今回は、東京商工リサーチの最新データをもとに、円安倒産とコロナ破たんの現状を整理し、中小企業経営者が確認すべきポイントを解説します。
1. 円安倒産は38件、2年ぶりに前年同期を上回る
東京商工リサーチによると、2026年度上半期(4~9月)の円安関連倒産は38件でした。
前年同期比18.7%増となり、2年ぶりに前年同期を上回りました。
また、2026年9月単月では5件となり、前年同月比28.5%減少しています。
ただし、円安倒産は2022年7月から51カ月連続で発生しており、一時的な減少だけで状況が改善したとは判断できません。
負債総額は減少しているが、小・零細企業への影響が目立つ
今回、もう一つ注目したいのが負債総額です。
2026年度上半期の円安倒産による負債総額は145億8,500万円で、前年同期比39.8%減少しました。3年連続で前年同期を下回っています。
一見すると、倒産による影響は小さくなっているようにも見えます。
しかし、倒産件数は増加しています。
その背景として、倒産企業の規模の違いが考えられます。
前年同期の最大倒産は、スポーツ・カジュアル靴などを販売する株式会社ロイヤル(愛知)で、負債額は83億3,000万円でした。
一方、2026年度上半期の最大倒産は、ペレット製造販売の株式会社トーシン(滋賀)で、負債額は23億3,100万円です。
負債10億円以上の倒産も6件あり、前年同期の7件から1件減少したにとどまっています。
東京商工リサーチは、小・零細企業を中心に推移していると指摘しています。
つまり、大型企業の倒産が減ったからといって、中小企業の経営環境が改善しているわけではありません。
2. 円安倒産の半数以上が卸売業に集中
今回の円安倒産で特に目立つのが、卸売業です。
2026年度上半期の業種別件数は次のとおりです。
| 業種 | 倒産件数 | 前年同期 |
|---|---|---|
| 卸売業 | 20件 | 15件 |
| 小売業 | 7件 | 6件 |
| 製造業 | 5件 | 3件 |
卸売業は20件で全体の52.6%を占めています。
なぜ卸売業で円安倒産が目立つのでしょうか。
卸売業は、商品を仕入れて販売するビジネスモデルです。
輸入商品や輸入原材料を扱う企業では、円安が進むと仕入価格が上昇します。
しかし、仕入価格が上昇したからといって、販売価格をすぐに引き上げられるとは限りません。
取引先との価格交渉が難航したり、競合他社との価格競争があったりすると、仕入コストの上昇を自社で吸収せざるを得なくなります。
その結果、売上が維持できていても粗利益率が低下し、最終的には資金繰りが悪化する可能性があります。
特に、薄利多売型の卸売業では、わずかな粗利益率の低下でも経営への影響が大きくなります。
これは卸売業だけの問題ではありません。
製造業、小売業、飲食業、建設業など、輸入原材料やエネルギー価格の影響を受ける企業にも共通する課題です。
3. 為替介入を実施しても、円安の影響は続く
東京商工リサーチの資料によると、政府は2026年4月から8月までの間に、合計27兆1,342億円の為替介入を実施しました。
一時的に円高方向へ誘導したものの、その効果は長続きせず、再び円安に戻したとされています。
ここで経営者が理解しておきたいのは、為替介入が行われたことと、自社の仕入コストが安定することは別問題だという点です。
為替相場は、さまざまな要因で変動します。
円安が進めば、輸入商品や原材料、エネルギーなどの調達コストが上昇する可能性があります。
一方で、円高に戻ったとしても、仕入価格がすぐに下がるとは限りません。実際の仕入価格には契約条件や在庫、取引先の価格改定なども影響するためです。
経営者は為替相場だけを見るのではなく、自社の実際の仕入単価と粗利益率を継続的に確認する必要があります。
4. コロナ破たんは累計1万4,700件、今も月100件台
続いて、新型コロナ関連の経営破たんです。
東京商工リサーチによると、2026年9月のコロナ関連破たんは133件でした。
2020年2月の第1号発生からの累計は1万4,700件に達しています。
この数字を全国の企業数358万9,333社(2016年総務省「経済センサス」)で割ると、破たん率は0.409%となります。
全国企業のおよそ250社に1社がコロナ関連で破たんした計算です。
2026年も月ごとに増減を繰り返している
2026年のコロナ破たんは、次のように推移しています。
- 3月:162件。3カ月ぶりに150件を超過
- 4月:150件未満に減少
- 5月:119件。2021年1月以来の120件割れ
- 6月:139件に増加
- 7月:2026年の最多を記録
- 8月:再び減少
- 9月:133件に増加
一度減少しても、再び増加するという一進一退の状況が続いています。
東京商工リサーチは、物価高や人件費上昇などによるコスト負担の増加、本業の改善の遅れ、コロナ融資の返済負担などを背景として挙げています。
重要なのは、コロナ禍そのものが収束したとしても、当時の借入金や、その後の経営環境の変化は企業に残っているということです。
5. コロナ破たんが多い地域はどこか
都道府県別に見ると、東京都が2,923件で最も多く、全体の19.8%を占めています。
続いて、大阪府1,323件、福岡県906件、愛知県644件、北海道641件となっています。
主な都道府県の累計件数は以下のとおりです。
| 都道府県 | 累計件数 |
|---|---|
| 東京都 | 2,923件 |
| 大阪府 | 1,323件 |
| 福岡県 | 906件 |
| 愛知県 | 644件 |
| 北海道 | 641件 |
| 兵庫県 | 618件 |
| 神奈川県 | 610件 |
| 埼玉県 | 462件 |
| 千葉県 | 405件 |
| 京都府 | 398件 |
| 広島県 | 382件 |
| 宮城県 | 360件 |
300件以上の都道府県は14に広がっています。
一方、破たん率で見ると、東京都が0.699%、福岡県が0.669%、宮城県が0.605%と高く、全国平均の0.409%を上回っています。
最低は岐阜県の0.165%でした。
なお、この破たん率は2016年の企業数を母数としているため、現在の企業数を使った最新の発生率とは異なります。地域比較の参考値として見る必要があります。
6. 円安倒産とコロナ破たんに共通する経営課題
ここまで見てきた2つのデータは、直接の原因が異なります。
しかし、中小企業経営という視点で見ると、共通する問題があります。
それは、利益と資金繰りの両方が圧迫されることです。
円安は粗利益を減らす
円安によって仕入価格が上昇すると、販売価格へ転嫁できない企業では粗利益率が低下します。
例えば、年間売上1億円の企業で、粗利益率が20%から18%に低下したとします。
この場合、粗利益は2,000万円から1,800万円となり、年間200万円減少します。
これは仮定による試算ですが、売上が変わらなくても利益が大きく変わることを示しています。
借入返済は現預金を減らす
一方、コロナ融資の返済負担は、企業のキャッシュフローに影響します。
例えば、営業利益が出ている企業でも、借入金の元本返済が大きければ、手元資金が増えないことがあります。
利益が出ていることと、資金繰りに余裕があることは同じではありません。
この違いを理解していないと、決算書上は黒字なのに、預金残高が減り続けるという状況に陥る可能性があります。
2つが同時に発生するとどうなるのか
円安による仕入コストの増加と、過去の借入金返済が同時に発生すると、経営への負担はさらに大きくなります。
- 仕入価格が上がる
- 粗利益率が低下する
- 営業利益が減少する
- 借入金の返済は続く
- 現預金が減少する
- 新たな設備投資や人材投資が難しくなる
このような状況が続けば、企業は将来の成長に必要な投資まで抑えざるを得なくなる可能性があります。
7. 経営者が今すぐ確認すべき5つのポイント
今回のデータを踏まえ、経営者が確認しておきたいことを5つに整理します。
① 仕入価格の上昇を把握できているか
まずは、主要商品の仕入単価がどの程度変化しているかを確認しましょう。
仕入先別、商品別に価格の推移を把握することが重要です。
② 価格転嫁はできているか
仕入価格が上がっているにもかかわらず、販売価格が据え置かれていないでしょうか。
価格改定が難しい場合は、商品構成や取引条件、販売先の見直しも検討する必要があります。
③ 粗利益率が低下していないか
売上高だけでなく、粗利益額と粗利益率を確認しましょう。
売上が伸びていても、利益率が下がっていれば経営状態は悪化している可能性があります。
④ 借入金の返済負担を把握しているか
借入金残高だけでなく、毎月の元本返済額、利息、返済終了時期を一覧にしておきましょう。
今後の資金繰りを考えるためには、借入金の返済予定を含めた資金繰り表が重要です。
⑤ 6カ月から12カ月先の資金繰りを予測しているか
現在の預金残高だけで安心してはいけません。
今後の売上、仕入、人件費、税金、借入返済を反映した資金繰り表を作成し、将来の資金不足を早めに把握することが必要です。
8. これからの中小企業経営で重要なのは、利益とキャッシュを残す仕組み
今回の円安倒産とコロナ破たんのデータは、中小企業が置かれている経営環境を改めて示しています。
売上を増やすことだけでは、会社を守ることはできません。
仕入コストが上昇する環境では、適切な価格設定と粗利益率の確保が重要になります。
また、借入金の返済が続く企業では、利益だけでなく、実際に現金がどれだけ残るかを把握する必要があります。
そのためには、次の3つの取り組みが重要です。
- 利益構造の見直し:商品別・取引先別の粗利益を把握し、価格改定や取引条件の改善を進める。
- 資金繰り管理の徹底:借入返済や納税を含めた資金繰り表を作成し、将来の資金不足を予測する。
- 本業の収益力改善:売上だけでなく、付加価値と営業利益を増やす事業構造へ転換する。
まとめ|倒産データから学ぶべきは、自社の経営状態を早く把握すること
今回の東京商工リサーチのデータから、次のことが分かりました。
- 2026年度上半期の円安倒産は38件で、2年ぶりに前年同期を上回った。
- 円安倒産の52.6%を卸売業が占め、小・零細企業への影響が目立っている。
- コロナ破たんは2026年9月に133件発生し、累計1万4,700件となった。
- 物価高や人件費上昇、本業の改善の遅れ、コロナ融資の返済が経営を圧迫している。
- これからの経営では、売上だけでなく利益率とキャッシュフローの管理が重要になる。
倒産という結果だけを見ていても、自社の経営改善にはつながりません。
大切なのは、他社で起きていることを自社の経営に置き換えて考えることです。
仕入価格は上がっていないか。粗利益率は低下していないか。借入返済を続けても、十分な現預金を確保できているか。
こうした数字を定期的に確認することが、経営環境の変化に対応する第一歩になります。
出典・参照資料
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東京商工リサーチ「2026年度上半期の『円安』倒産は38件、2年ぶり増加 卸売業が20件と突出、小・零細企業にコスト上昇が直撃」2026年10月1日
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東京商工リサーチ「新型コロナ破たん、9月は133件発生」2026年10月1日