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はじめに
東京商工リサーチ(TSR)が2026年9月8日に発表した2026年8月の倒産動向データによると、「ゼロゼロ融資後倒産」と「物価高倒産」は前年同月を下回り、一見すると落ち着きを見せています。しかし同時に発表された「税金滞納倒産」は前年同月比+73.3%、1-8月累計でも前年同期比+58.7%と大幅に増加しています。倒産件数全体の表面的な減少に安心せず、資金繰りの厳しさがどこに移っているのかを正しく把握することが、中小企業経営者にとって重要です。
結論
- ゼロゼロ融資後倒産・物価高倒産は件数ベースでは一服しているが、累計ベース・小規模企業への集中という構造的な厳しさは続いている。
- 税金滞納倒産だけが突出して急増しており、資金繰りの限界が「納税・社会保険料の未払い」という形で表面化し始めている。
- 9月17-18日の日銀金融政策決定会合をはじめ、今後の金利動向次第で、落ち着いていたゼロゼロ融資後倒産が再び増加に転じる可能性がある。
制度・ニュースの概要
TSRは毎月、全国企業倒産(負債1,000万円以上)を対象に複数のテーマ別データインサイトを公表しています。今回(2026年9月8日発表)は以下の3本が公表されました。
- 「ゼロゼロ融資」利用後の倒産:2026年8月24件(前年同月比▲20.0%)、1-8月累計214件(同▲23.5%)
- 「税金滞納」倒産:2026年8月26件(前年同月比+73.3%)、1-8月累計181件(同+58.7%)
- 「物価高」倒産:2026年8月50件(前年同月比▲9.0%)、1-8月累計583件(同+22.4%)
今回の重要ポイント
ポイント1:ゼロゼロ融資後倒産は8カ月連続減少も、ピーク比ほぼ半減で下げ止まり感
2026年1月から8カ月連続で前年同月を下回っており、1-8月累計214件は2023年同期(445件)のほぼ半分の水準です。ただしTSRは、金融機関が元本の一部返済を求める動きを見せ始めていることに触れ、倒産が今後増加に転じる可能性を指摘しています。制度開始(2020年7月)からの累計は2,440件に達しました。
ポイント2:税金滞納倒産は前年の年間件数を8月時点で突破
2026年1-8月の税金滞納倒産は181件で、すでに前年通年(160件)を上回りました。8月単月は26件(前年同月比+73.3%)で、4月から5カ月連続で前年同月を上回っています。形態別では破産が177件(構成比97.7%)を占め、資本金1,000万円未満の企業が58.0%を占めるなど、小規模企業に集中しています。一方で1-8月の負債総額は340億1,000万円(前年同期比▲12.9%)と2年連続で減少しており、大型倒産ではなく件数の積み上がりが特徴です。
ポイント3:物価高倒産は9カ月ぶりに減少も、1-8月累計は前年超え
2026年8月の物価高倒産は50件(前年同月比▲9.0%)と9カ月ぶりに減少しましたが、1-8月累計は583件(前年同期比+22.4%)で、通年では前年(769件)を上回るペースが続いています。業種別では小売業が12件(前年同月比+140.0%)と急増しており、資本金1,000万円未満の企業が構成比72.0%を占めています。
背景
物価高・人件費上昇(最低賃金引き上げ、賃上げの広がり)が続く中、価格転嫁力の弱い小・零細企業を中心に収益が圧迫されています。加えて社会保険料負担の増加が重なり、TSRは「新たな資金調達も難しい企業が、納税を後回しにして運転資金に充てている状況」がうかがえるとしています。ゼロゼロ融資についても、返済に窮した企業がリスケ(返済猶予)で延命するケースが少なくない一方、金融機関側の姿勢にも変化が見られ始めています。
中小企業への影響
- 借入面:ゼロゼロ融資・コロナ借換保証等を利用しリスケ中の企業は、金融機関の姿勢変化(元本一部返済要請)や金利上昇の影響を受けやすい状況にあります。
- 税務・社会保険面:資金繰りが厳しい企業ほど納税・社会保険料の支払いが後回しになりやすく、滞納の長期化は取引先への信用照会等を通じたレピュテーションリスクにもつながり得ます。
- 販売・仕入面:物価高倒産は資本金1,000万円未満の企業に集中しており、価格転嫁力の差が生存率を左右する構図が続いています。
注意点・落とし穴
倒産件数(ゼロゼロ融資後・物価高)が前年を下回ったことだけを見て「状況が改善した」と判断するのは早計です。税金滞納倒産の急増は、資金繰りの厳しさが形を変えて表面化している可能性を示しています。また、TSRの記事内で言及されている9月17-18日の日銀会合における追加利上げは、あくまで報道時点の観測であり、決定事項ではない点にも注意が必要です。
経営者が取るべき対応
- 自社の借入(特にコロナ関連融資)の金利タイプ・返済スケジュールを再確認する。
- 納税・社会保険料に滞納がないか点検し、ある場合は早めに税務署・年金事務所等へ相談する。
- 主要な仕入コストの上昇分が販売価格にどこまで転嫁できているかを確認する。
- 向こう半年程度の資金繰り見通しを作成し、資金ショートのリスクを早期に把握する。
今後の見通し
9月17-18日に開催される日銀の金融政策決定会合での動向、および為替相場の動きが、今後のゼロゼロ融資後倒産・物価高倒産の推移に影響を与える可能性があります。税金滞納倒産についても、通年で前年を大きく上回るペースが続くかどうかが注目点となります。
まとめ
- ゼロゼロ融資後倒産・物価高倒産は件数ベースで落ち着きを見せているが、累計・小規模企業への集中という厳しさは継続。
- 税金滞納倒産は前年同月比+73.3%、1-8月累計+58.7%と急増し、すでに前年通年を上回った。
- 金利動向次第で、落ち着いていた倒産動向が再び悪化に転じるリスクがある。
- 早期の資金繰り点検と、金融機関・税務当局への早めの相談が重要。
出典
- 東京商工リサーチ「TSRデータインサイト」(2026年9月8日発表)
- 8月の「ゼロゼロ融資」利用後の倒産 24件 8カ月連続で前年同月を下回り、小康状態
- 2026年1-8月の「税金滞納」倒産181件、前年超える
- 8月の「物価高」倒産 50件で一服、9カ月ぶり減少